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お坊さんアスリート・矢澤一輝はなぜ4度目のオリンピックに挑むのか 「お経で競技が強くなるわけじゃない、でも…」

2019年3月27日 17:45配信

 カヌーは、アウトドアレジャーの定番。しかし「小舟で水面をゆったりクルーズ」というイメージからかけ離れた競技が、オリンピック種目「カヌー・スラローム」だ。川の中、全長250m〜400mのコース上に設置された18〜25個のゲートを、決められた順序で通過し、そのタイムとポイントを争う。このハードな競技で過去3回のオリンピック出場を果たしている矢澤一輝選手は、実は僧籍を持つ「お坊さん」。元陸上競技日本代表の為末大さんとの対談から、矢澤さんが向き合う仏教とカヌー競技の不思議な共通点が見えて来た。

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「計算できない」自然との向き合い方

為末:陸上競技は「走るだけで何が楽しいの」と聞かれることがありますが、「カヌーって何が楽しいの」と聞かれたら、どう答えますか。

矢澤:カヌーは自然をとても身近に感じられるスポーツです。水上から桜を見たり、雪を見たり。暑い時期は寝そべって空を眺める、とか。現実からちょっと離れられるところが魅力ですね。

為末:矢澤さんは子どもの頃からカヌーをやっているんですよね。

矢澤:はい。父親の影響で小学1年から。父のカヌー姿がとてもカッコよかったんですよ。妹の亜季もカヌー選手で、リオ五輪には一緒に出場しました。

為末:カヌー一家なんですね。お父さんも高いレベルで競技を…。

矢澤:いえ、趣味の範疇でしたね。でも、自分が競技志向になったことにも、父が関係しています。一緒にカヌーをするようになった頃に、「オリンピックって、限られた人しか出られない大会があるんだよ」と言われて。出てみたいと思ったのがきっかけですね。

 実際に競技カヌーを始めてみると、イメージ通りにゲートへ入れたときの気持ちよさにハマって、自然と競技に熱中するようになりました。

為末:カヌーだと、どれくらいイメージ通りに行くものなのですか。

矢澤:競技が行われているコースには、コンクリなどで造設した人工のコースと、自然のままのコースがあります。いずれにせよ100パーセント思い通りということはまずないですね。カヌーは流れに乗るスポーツですが、一口に「流れ」と言っても、川底や水量、風などさまざまな要因が複雑に絡み合っています。

 一般的には自然のコースの方が難しいです。同じ傾斜でも、砂利の上を流れる水とコンクリの上を流れる水では、感覚が変わって来る。その意味では、人工のコースの方がまだコントロールしやすいです。

為末:陸上もタータン(ゴム)の上を走るのと土の上を走るのでは、まったく違います。

矢澤:たとえば自然のコースだと、勢いを抑えようとしても力が逃げてしまうというか、抜けてしまうというか。要因がより複雑で、計算しようとしてもできないんです。そうすると、60〜70パーセントでも思い通りに行けばいいほう…になります。

 世界選手権やオリンピックは人工のコースなので、コントロールはしやすい。それでもゲートを前に予想しないほうに引っ張られて「あっ」と思う瞬間というのはあります。そのときに、立て直すための判断をとっさにしなければならない。

為末:ベストではないがベターな判断を、常に積み重ねて行かなければいけないんですね。

矢澤:はい。そういう時のために、自然のコースでの練習が必要です。自然のコースでは、想定していない状況が次々に訪れるので、応用力が身につく。逆に人工のコースだけで練習していると、いざという時の応用が効かなくなるんですよね。

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