コラム
【GPファイナル】見どころ ~羽生4連覇への分岐点は?女子銀河系大戦で宮原復調へ~
2016-2017シーズンISUグランプリファイナルが、日本時間9日(金)早朝からフランス・マルセイユで開催される。
GPシリーズのポイントランキング上位6選手が出場する。日本からは、男女シングル初の4連覇がかかる羽生結弦、同期で共に2年連続出場の18歳宇野昌磨・宮原知子が、世界のトップ6として戦う。
GPファイナルは、フィギュアスケートシーズン最終盤にして最重要大会である世界選手権以外で唯一、欧州勢と四大陸(北米・アジア)勢のトップが相まみえる試合となる。GPシリーズはシーズン前半に行われる調整試合の側面もあるが、ピョンチャン五輪までには、全世界のトップが集う直接対決は今大会を含めて3試合しかない。気が早いと思いきや、もう残り3試合。世界トップ6の五輪への情熱がぶつかり合い、ファンのピョンチャンヘの期待が高まるGPファイナルになるだろう。
男子は、羽生結弦と宇野昌磨の日本勢、世界選手権2連覇中のハビエル・フェルナンデス(スペイン)、世界選手権過去3連覇のパトリック・チャン(カナダ)、共に初出場のアメリカ勢、新星ネイサン・チェンと全米王者アダム・リッポンが覇権を争う。
羽生の4連覇に絡む勝負の分かれ目は2つ。上位陣のピーキングと、ジャンプの回転数だ。
羽生とフェルナンデスを指導するブライアン・オーサーコーチは、「世界選手権の3月末にピークを持っていくのが理想」と先のNHK杯で語り、ソチ五輪銅メダリストのデニス・テン(カザフスタン)など、「ピョンチャン五輪開催月の2月に心技体を合わせる」と一昨季からコンディショニングしている選手もいる。対して、羽生は今季男子初の総合300点台をマークしたNHK杯で「ピークではなくアベレージを上げたい」と異能の発想を明らかにし、「どんな状態でも」勝利や好演技を目指し楽しみたい、と唱えた。
このGPファイナルを、フリーで200点台の今季男子最高得点を出しているフェルナンデスやレジェンド格のチャンがどう捉えているかで、アベレージが上がっている状態の羽生との点差がついてくる。フェルナンデスが例年通り世界選手権にピーキングし、チャンが今季から構成する4サルコウに失敗のリスクを負いながら挑んでくれば、羽生がNHK杯のように4回転に失敗したとしても、大勝を収めることもあるだろう。
一方、ハイパー4回転世代の若手も黙っていない。宇野は羽生より、4回転の数はショートとフリーで計1本少なく、演技構成点もショートとフリーの合計で3.39点低い(GP2戦目の比較)が、自身の構成するジャンプを全て成功すれば、まだ不確実なジャンプもある羽生ら上位陣をしのぐ可能性も大きい。上位陣を猛追する演技構成点の効果が出始めている。
チェンは羽生より4回転が計1本多い、男子シングル最高難度のジャンプ構成を誇るが、演技構成点では羽生と14.61点の開きがあり(NHK杯)、その4回転1本分の点差は吸収されてしまう。しかし羽生ら上位陣がジャンプで「パンク(英語ではpop)」=回転が抜ける場合は、逆転の目も出て来る。例えば羽生が今季から構成する基礎点12点の4ループが1回転になれば、それだけで11.5点が失われてしまう。フィギュアスケートでは、ジャンプの回転数が得点を高くする。チェンが今季計7本の4回転を全て確実に回転させてきていることは、上位陣の脅威になるだろう。
構成する4回転はチェンが計7本、羽生が6本、フェルナンデスと宇野が5本、チャンが4本、そしてリッポンは1本となる。従ってリッポンのシーズンベストはトップ6の中で最も低いが、ダンスでは最も攻めている。
ショートは、ヒップホップのジャンルのひとつでLGBTのクラブから創生した「ワック」ダンス(「パンキング」とも言われている)。振付師ジェフリー・バトル同様、ゲイであることを公表しているリッポンが勇ましく麗しく“レペゼン”している。フリーは、アメリカの著名ダンサーのベンジー・シュウィマーとリッポンによる、固定化したフィギュアスケートの踊りの限界を打破するような振付となった。シュウィマーのスタジオで「傷ついた鳥が舞い上がるまで」というイメージを生み出し最新鋭のコンテンポラリーダンスを振り付け、自身でも他トップスケーターの競技プログラムを振り付けるリッポンが、フットワークや技を含めてフィギュアスケート作品へと変換した。リッポンのダンスも、GPファイナル男子のハイライトになる。
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