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【GPロシア杯】男子レビュー/羽生、優勝逃すも最強『SEIMEI』で4ルッツ初成功

 2017年10月22日 22:25配信

『SEIMEI』で五輪シーズンに挑む羽生(写真:Getty Images)

ISU・GPシリーズ第1戦ロシア杯(モスクワ)男子は、SP1位ネイサン・チェン(アメリカ)がFS2位でGPシリーズ初優勝(総合:293.79|SP:100.54|FS:193.25)。2位の羽生結弦は、シーズン初戦に怪我のため大事をとって回避したSPの4ループに挑み、FSでは4ルッツに初成功し、自身最高のジャンプ構成でFS1位となった(総合:290.77|SP:94.85|FS:195.92)。

羽生の羽生らしさはシリーズ初戦から燃え盛った。4回転の本数は昨季もシーズン終盤にかけて計6本から7本に増強させていたが、今季は序盤で新技4ルッツを含む7本の構成を打ち出した。今大会で完成はしなかったが、この時期に例年より「前進している」と手応えを口にした。

SP・FS共に、自身が世界最高得点を2度ずつ出した演目。2シーズン前に世界の頂点を2度極めた自らに対峙するという、フィギュアスケート史上羽生しか経験したことのない難しさはあるだろう。ジャンプに一つでも失敗すれば、世界一の己の幻影が遠のいていく。しかし羽生の心は折れなかった。SPの4ループと4トゥループ+3トゥループで失敗する中、FSでは初成功を狙う4ルッツを、体勢を崩しながらもフィジカルの力で着氷した。その後も安倍晴明に扮し、4回転5本と最終盤の3アクセル2本の構成に挑み、戦乱を鎮めるような迫力で演技を締めた。演技後の四方への挨拶でも陰陽道で魅せた。『SEIMEI』は五輪の場で日本の美を世界にアピールするだろう。

試合後は「前進している」と手応えを口にした羽生(写真:Getty Images)

優勝したチェンは、今季の新技である4サルコウ(基礎点10.5点)と4ループ(12.0)は温存し、昨季の4トゥループ(10.3)と4フリップ(12.3)と4ルッツ(13.6)で、SPとFS合わせて計6本の4回転を決めた。SPでは、ジュニア時代からバレエ同様に得意としていたジャズの演目をシニアのGPで初披露した。チェンが肉体で描いて魅せる、アングルやタイミングまで計算し尽くしたラインが、「カルマ(因果応報)」を言霊で突きつける、メッセージ性の強いUKソウルを彩った。コンテンポラリーダンス+バレエの演目のFSでは、4本の4回転を決めながら、両方のダンスの特色を映してみせた。シーズン序盤で、SP・FS共にジャンプは仕上がっていなかったが、踊りのうまさシルエットの綺麗さをシリーズ初戦から印象付けた。

優勝はネイサン・チェン、3位は地元ロシアのコリヤダ(写真:Getty Images)

3位にはロシア王者ミハイル・コリヤダが入り、母国で自身初のGPシリーズ表彰台に立った。4ルッツや新技4サルコウの成功はならなかったが、計5本の4回転を回り切り、FSでは3転倒ながら自己ベストを更新。演技構成点でも、随一の運動量を光らせ、音楽を滑りと踊りで紡ぎ出し、SP・FS共に羽生に次ぐ評価を受けた。

また、ファンや周囲の期待を受け競技引退の予定を覆し五輪シーズンに臨むミーシャ・ジー(ウズベキスタン)が、26歳でSPとFSの自己ベストを更新して4位に入った。4回転はないものの全ての技術の精度を高め、クラシック音楽を用い、自身振付の詩情あふれるダンスを堪能させた。五輪シーズンのはじまりに、4回転とパフォーマンスが咲き誇る、男子シングル戦国時代の真髄を改めて感じさせる両者の演技となった。

シリーズ第2戦スケートカナダには、日本勢は宇野昌磨、無良崇人が、海外勢はパトリック・チャン(カナダ)、ジェイソン・ブラウン(アメリカ)らが出場する。シリーズ各2戦の合計ポイント上位6選手(組)が12月のGPファイナル(名古屋)に進出し、日本人選手には「GPファイナル上位(2名)」「世界ランクとシーズンベストの上位(3名)」の五輪代表条件がかかった2ヶ月間の戦いとなる。

文:Pigeon Post 島津愛子

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