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【GPスケートカナダ】男子レビュー/宇野、表現面に集中し300点超え 五輪代表レースは?

 2017年10月30日 11:45配信

抜群の表現力で圧勝した宇野(写真:Getty Images)

ISU・GPシリーズ第2戦スケートカナダ(レジャイナ)男子は、宇野昌磨が抑えたジャンプ構成でSP100点超えの1位、FSも伸びしろを残して200点に迫り、総合300点超えの優勝(総合:301.10|SP:103.62|FS:197.48)。SP3位・FS2位のジェイソン・ブラウン(アメリカ)が2位で、5シーズン連続となるGPシリーズ表彰台に上った(総合:261.14|SP:90.71|FS:170.43)。3位アレクサンドル・サマリン(ロシア)は、GPシリーズデビュー戦でSPとFSの自己ベストを更新した(総合:183.94|SP:61.57|FS:122.37)。無良崇人は最下位となり、苦闘の五輪シーズン序盤戦となった(総合:186.66|SP:74.82|FS:111.84)。

宇野のシリーズ初戦はアーティスト性が際立った。今季すでにSPとFSの自己ベストを出しており、今大会では表現面やスケーティングに注力していたという。4フリップや4ループを決めながらもMAXのジャンプ構成ではなかったが、SP・FS共に演技構成点でレジェンド格のパトリック・チャン(カナダ)をしのいだ。そのダンスはあまりにも繊細だった。シルエットにとどまらず、動作の強弱にもこだわりを感じさせ、指の開き方ひとつでさえ音を奏でていた。FSオペラ『トゥーランドット』のフィナーレを彩るクリムキンイーグルの前には、これまで見せたことのないような、優しく力強い笑顔でも魅せていた。

2位はブラウン(左)、3位はサマリン(右)(写真:Getty Images)

チャンはSP2位からFSで失速し総合4位に終わったが、地元でのプログラム初披露は心を動かすものだった。集大成をかける3度目の五輪シーズンは、SP・FS共に歌を選んだ。SPはクラシックロック、Kansasの名曲『Dust in the Wind』。リリックは、平家物語の一節「猛き者もついには滅びぬ、ひとえに風の前の塵に同じ(as dust before the wind)」も基になっている。この世界観に続くようなFSは、カナダの国家的アーティスト、レオナルド・コーエン作の『Hallelujah』。オルタナロックの夭折の吟遊詩人、Jeff Buckleyが哀しみや愛、望みを歌う。

チャンは競技と人生を両立させてきた。ビジョンを持ち、この競技の質を高めながら、アクティビティー系の多趣味を持ち、アイスワインの事業も起こした、“おもしろい”26歳の青年でもある。ソチ五輪後の休養を経て、「歓喜させる演技に懸けたい」、その「戦う理由」を持って競技の世界に帰って来た。今季の2作品は、技術の粋のみならず、このチャンの人間力がリリックによって形になって見えるような演目になっている。

独特の世界観でファンを魅了したチャン(写真:Getty Images)

無良はジャンプが振るわず、五輪代表レースに関わる世界ランクのポイント(GPシリーズでは各試合8位以内に加算)も獲得出来なかった。世界トップを争う羽生結弦と宇野を擁する日本男子は、五輪出場選手枠「3」の内実質1枠の代表レースとなっている。五輪代表選出には厳密な条件があり、年末の全日本選手権で表彰台に上ることに加え、全日本までに「GPファイナル上位2名」と「世界ランクとシーズンベスト上位3名」を目指す戦いとなる。

無良と残り1枠の一騎打ちが見込まれる田中刑事は、右腸腰筋を痛め第1戦ロシア杯を欠場したが、回復し次戦の中国杯に臨む。両者共にGPファイナル進出はなく、現時点の世界ランクは田中が一歩リードしており、シーズンベストは各試合で一進一退の勝負になるだろう。

シリーズ第3戦中国杯には、海外勢は地元中国のボーヤン・ジンとハン・ヤン、ハビエル・フェルナンデス(スペイン)、第1戦ロシア杯3位のミハイル・コリヤダ(ロシア)らが出場。シリーズ各2戦の合計ポイント上位6選手(組)が12月のGPファイナル(名古屋)に進出する。

文:Pigeon Post 島津愛子

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