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【GPスケートアメリカ】男子レビュー/チェン、連勝でGPファイナルへ 無良は全日本が正念場

 2017年11月27日 09:01配信

優勝したチェン(中央)、2位リッポン(左)、3位ヴォロノフ(右)(写真:Getty Images)

ISU・GPシリーズ第6戦スケートアメリカ(レイクプラシッド)男子は、同門の地元アメリカ勢がワンツーフィニッシュを飾った。優勝(SP1位・FS2位)のネイサン・チェンはSPで自己ベストを出して逃げ切り、2年連続のGPファイナル進出を決めた(総合:275.88|SP:104.12|FS:171.76)。自己ベストのSP2位から、FS1位で追い上げたアダム・リッポンも、2年連続のファイナリストとなった(総合:266.45|SP:89.04|FS:177.41)。

NHK杯で30歳にしてGP初の金メダルに輝いたセルゲイ・ヴォロノフ(ロシア)が3位(SP3位・FS3位)で、2度目のファイナル出場(総合:257.49|SP:87.51|FS:169.98)。キスアンドクライでは、ヴォロノフの振付師でもあるフランス杯男子3位のミーシャ・ジー(ウズベキスタン)が並んで座り、共によろこんでいた。今季前半戦にかけてジャンプの不調が続く無良崇人は7位(総合:212.77|SP:75.05|FS:137.72)。

再来週に名古屋で開催されるGPファイナル(12月7-10日、日本ガイシホール)の出場者は、シリーズ最終ランキング順で、チェン、宇野昌磨、ミハイル・コリヤダ(ロシア)、ヴォロノフ、リッポン、今大会4位のボーヤン・ジン(中国)に決まった。

チェンはキスアンドクライでも優勝後の会場インタビューでも、不甲斐なさそうにFSでの失速を詫びていたが、SPとFSで、4回転は計6本回り切り、ジャズダンス・コンテンポラリーダンス・クラシックバレエまでシブく巧みに魅せた。ファイナルでは、宇野との4回転×滑り×踊りの頂上決戦が待っている。

リッポンはFS冒頭4ルッツの着氷で肩を痛めるも、「ドラマが好き」と燃え上がり、闘志で戦い抜いた。今季も最少となる4回転1本のジャンプ構成でファイナルに臨むが、今大会のように「milk it(とことん絞り出す)」な演技で健闘するだろう。一昨季にゲイであることを公表し、LGBTのカルチャーが生んだダンススタイルや生き様までレペゼンするSP、アメリカ人著名ダンサーと自身が完成させた“フィギュアスケートダンス”とも言うべきFSと、ステージパフォーマンスで群を抜いた。

無良は今季出場選手中12位かつ現役日本男子3番手の総合自己ベスト「268.43」を持っているが、今季は、五輪代表レースのライバルである田中刑事の自己ベスト、250点付近にも届かない得点しか出せてない。代表「3」枠の選出に関わる世界ランクとシーズンベストも、羽生結弦や宇野に次ぐ3人目は田中となった。無良が悲願の五輪出場を果たすには、年末の全日本選手権で田中を上回って表彰台に乗る以外に道はなくなった。年明け2月には27歳を迎え、競技人生の集大成を懸ける全日本が無良の正念場になっている。

競技人生の正念場を迎えている無良(写真:Getty Images)

フィギュアスケートでは、ジャンプの回転数が得点を大きく左右する。4回転が3回転になれば6~7.6点、今大会FSのように3アクセルが1回転になれば7.4点を基礎点から引かれる。FSで度重なる回転の抜けを、熟練ジャンパーの無良が残り1ヶ月でいかに立て直すか。昨季全日本では田中に敗れたが、長きに渡り日本男子を支えてきた無良の大一番に注目が集まる。

スケートアメリカ男子では、4回転がもたらすスポーツのダイナミズムも、勝負も演舞も、そしてクラシカルな文化もハイプな文化も内包する、“ダイバーシティ(多様性)”というフィギュアスケートならではの新感覚にやられた。

試合前の会場には「ブラックフライデーや感謝祭(全米が大セールとなる)の折にこちらにお集まりの皆さんには、デパートでは買えない、素晴らしいものをお見せ出来るでしょう」とオモシロアナウンスが流れ、練習や採点待ちの間には、新旧ヒット曲やブラックミュージック、The White Stripes等のインディーロックまで、ダイバーシティを耳でも味わえるようなプレイリストがかかる。観客は弾けるように応援し、一方で、演技中の怪我による棄権があっても冷静にイベントの進行を盛り立てた。

氷上では、クラシック音楽からラテン音楽、ジャズ、ブルース、ソウル、ロック、ハウス、ミュージカル音楽、映画のテーマ、人類のあらゆる音楽がトップアスリート達それぞれの世界を創った。4回転が舞い飛び、チェンやリッポンのような、陸上の本格的なダンスを氷上でも魅せるパフォーマンスもあった。このスポーツ×エンタテイメントが、五輪シーズン後半戦ではさらに盛り上がっていくだろう。

文:Pigeon Post 島津愛子

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