コラム
【世界選手権】女子レビュー/サプライズの樋口銀、宮原銅で2007年以来のダブル表彰台
フィギュアスケートでは何が起きるかわからない、と言われている。だがミラノ世界選手権の女子の結果ほど、近年でそのことを実感させる大会はなかったかもしれない。
初のタイトルを手にしたのは、昨年の銀メダリストで平昌オリンピック銅メダリスト、カナダのケイトリン・オズモンドである。
SPでは2アクセルで転倒して4位スタートだったが、フリーではミスを最小限に抑えて223.23と高いスコアを手にした。
優勝会見で、前日にあなたが優勝すると言われていたら、どう答えていたかと聞かれると、「信じなかったと思います。カロリーナ(コストナー)も(アリーナ)ザギトワも、とても強くて安定したスケーター。残念ながら今日はうまくいかなかったけれど、いつも彼女たちの演技を見るのを楽しみにしているんです。でも今日は、自分のやるべきことができて本当に良かった」と笑顔を見せた。カナダの女子として、1973年のカレン・マグヌッセン以来、実に45年ぶりの優勝となった。
2位は、SPで8位と出遅れながらもフリーで最初から最後までノーミスで滑り切り、総合210.90を手にした樋口新葉が射止めた。「007スカイフォール」のプログラムで、出だしから大きな動作でダイナミックに演技を開始した。合計7本の3回転ジャンプをミスなく降りきって、最後は思わず「やったーっ!」という叫び声が出た。たくさんの日の丸が並んだ観客席では、ファンたちがスタンディングオベーションで嬉し涙にむせぶ樋口を讃えた。
「ショートでミスをして少しあせったんですけれど、フリーではしっかり自分の練習してきたことをすべて出し切るという意識を強く持って滑れた。今日はそれが本当に全部出し切れたと思うので、本当に嬉しかったです」
フリー後の会見で、そう嬉しさを表現した。
3位には、SP、フリーともに質の高い演技を見せた宮原知子が入った。「蝶々夫人」のフリーでは、3ループから演技を開始。丁寧にスピンなどをこなしていき、3ルッツで前のめりになったが耐えて3連続ジャンプを跳んだ。唯一の大きなミスは、サルコウが2回転になり転倒してしまったことだった。回転不足がいくつか出たが、5コンポーネンツでは9点台から8点台後半という高い評価を得て総合210.08を獲得。2015年上海世界選手権以来、3年ぶり2度目の表彰台になった。
「良い演技で終わりたいという気持ちが強かったので、それがちょっと力みになってしまったかなと思います。体調的には特に痛いところもなく、オリンピックのようにワクワクしてちょっと力みすぎました」と反省の言葉を口に。会見では「フリー演技が終わったときは、銅メダルが取れると思っていなかったので、予想外でした。今日は体が硬く、ジャンプが小さくなってしまったのでもっと練習していかないと」と流ちょうな英語でコメント。海外の記者から、「あなたの英語はすばらしい」と賞賛された。
自国開催となったイタリアのカロリーナ・コストナーは、SPでは完璧な滑りを見せて、僅差でアリーナ・ザギトワ(ロシア)を抑えてトップに立った。だが最終滑走だったフリーでは、ミスが出て表彰台を逃した。フリー「牧神の午後」の最初のルッツが2回転に。だが持ち直して3フリップ+2トウループなどを成功させていったが、後半に入ってアクセルが1回転半になり、3サルコウで転倒。フリーは5位、総合4位に終わった。
「集中して滑っていたけれど、何かがかみ合わずにちょっとリズムがくるってしまった。4位は残念だけれど、ここのお客さんの助けのおかげで笑顔で家に戻ることができます」とコメントしたコストナー。31歳の彼女だが、競技を引退するかどうかは少し休みをとってから決めるという。
この大会の最大のサプライズは、平昌オリンピックチャンピオンのアリーナ・ザギトワが5位に終わったことだろう。SP「ブラックスワン」ではコンビネーションジャンプの着氷が不安定で、僅差でコストナーに次いで2位スタートだった。
それでも彼女のフリー「ドン・キホーテ」は、ノーミスで滑れば全女子の中でもっとも高いポイントを獲得できる構成になっている。おそらくザギトワが逆転優勝するだろう、と誰もが予想していた。
だが後半に始まったジャンプの一つ目、3ルッツで転倒すると会場内に大きな悲鳴が湧いた。続いた2アクセル+3トウループの最後でも転倒。このシーズンを通してほとんど失敗のなかったザギトワに、一体何が起きたのか。二度目の3ルッツの後に3ループをつけたが、ここでも転倒して3度の転倒という、信じられない演技になった。5コンポーネンツのスコアも5種類ともすべて8点台に抑えられて、フリー128.21、総合207.72に終わった。
泣き崩れたザギトワは、ノーコメントを貫いて奥に入ってしまった。アシスタントコーチで振付師でもあるダニル・グレケンガージは、このようなコメントを出した。
「アリーナをサポートしてくれたファンに謝りたい。彼女はまだ15歳で、世界選手権はこの大会が初挑戦だった。残念ながら、緊張に勝てなかったのでしょう。我々コーチたちにも、一体何が起きたのかわかりません。これほどひどい演技をしたことはなかった。しっかり分析して、これからも練習を続けていきます」
オリンピックの疲れなのか、あるいは精神的なものなのか。彼女がこのオフシーズンにどのように調整し、来季はどのようなスケーターに成長してくるのかまた楽しみである。
文:田村明子
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