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【世界選手権】男子FSレビュー/異次元の争いを制したチェンが大会連覇!復活の舞で魅了 羽生は2位

 2019年3月24日 10:01配信

羽生の持つ世界最高得点を塗り替えてV2を果たしたチェン(中央)。2位に羽生(左)、3位ジョウという結果で幕を閉じた(写真:Getty Images)

3月23日、埼玉世界選手権の男子フリーは、大会の最終戦に相応しい歴史に残る素晴らしい戦いとなった。ハイライトは、やはり羽生結弦とネイサン・チェンの戦いだった。

SPでサルコウが2回転になり、3位という位置に立った羽生は、公式練習から何度も4ループを繰り返し、練習してきた。チェンに逆転優勝をするチャンスがあるとすれば、現在彼ができる最大限の難易度の構成でいくしかない、と思ったのだろう。

最終グループ4番目の滑走だった羽生は、怖いほど集中しきった表情で氷の上に立った。エフゲニー・プルシェンコのトレビューである今季のフリー、「Origin」のメロディがはじまり、冒頭の4ループがきまった。続いた4サルコウは、少し着氷が乱れて回転不足に。だがその先の3ループ、4トウループ、そして4トウループと3アクセルのシークエンスも成功。最後の3アクセル+1オイラー+3サルコウが決まった瞬間、観客席は怒涛のような歓声に包まれた。羽生が最後のポーズと取ると、客席は総立ちになり、文字通り日の丸で埋め尽くされた。そして氷の上に投げ込まれたクマのプーさんのぬいぐるみが、リンクの半分に盛り上がった。今季の最高スコアである206.10、総合300.97の数字が出た瞬間、多くの観客は羽生の逆転優勝を疑わなかったのではないだろうか。

観客が総立ちするほどの圧巻の演技を見せた羽生。進化し続ける彼が、4回転アクセルを跳ぶ日もそう遠い未来ではないだろう(写真:Getty Images)

リンク半分を覆ったクマのプーさんをフラワーガールたちが必死で拾い集めている最中、次の滑走だったネイサン・チェンが氷の上に登場。空いている半分を使ってウォームアップをしながら、チェンもまた怖いほど集中した表情を崩さない。かなりの時間がかかって氷がようやくクリアされたのち、チェンの名前がアナウンスされて彼がリンクの中央に立った。

「Land of All」のメロディにのって、冒頭の4ルッツ、そして2つ目の4フリップも軽々と降りた。4トウループ、3アクセルと驚くほど安定したジャンプを着々とこなしていく。後半の4トウループに3トウループをつけ、3ルッツ+3トウループ、最後の3フリップ+1オイラー+3サルコウまで、すべてミスなく決めた。フリー216.02で総合323.42。いずれも、今季からリセットされた歴代最高スコアの更新で、昨年に続いて2度目の世界選手権優勝。羽生はあれだけの演技をしながら、2位に終わった。

怪我を回復したばかりの復帰戦でここまでの演技を見せた羽生、その羽生の演技の直後に気後れすることなく完璧な演技を見せたチェン。できることなら、二人に金メダルを渡したいほど圧巻の素晴らしい戦いだった。

3位に入ったのは、アメリカのヴィンセント・ジョーだった。4ルッツ+3トウループ、4サルコウなどを成功させて、186.99を獲得。総合281.16で初の世界選手権メダルを手にした。

優勝の会見で、チェンは「この二人とこうして並んでここに座っていられるのは、とても名誉なこと。SP、フリーとも良い演技ができたことを誇りに思います」羽生のすぐ次に滑ったことの感想を聞かれて「前にもユヅルの後に滑った経験があるので、(プーさんの嵐は)予想していた。彼はいつでもすごいことをやってのけるので、彼と同じ試合に出ることも、その後に滑ることもとても光栄なことだと思っています。実際のところ、観客があれほど選手を熱狂的に応援しているエネルギーを感じるのは、すごくすてきなこと」と余裕を見せた。

プレッシャーをものともしない演技で、全ての4回転を着氷したチェン。今大会は、フィギュア史上に残るハイレベルな争いだったことはいうまでもない(写真:Getty Images)

羽生は、「結果としては2位で悔しい気持ちはあるけど、この二人と闘えたことに感謝をして

います。これからも彼らに近づいて進化していけるようなスケーターになりたいです」と謙虚な言葉を口にし、北京オリンピックについての感想を聞かれると、「来シーズンのプランはまだたっていない。(怪我が回復しきっていない)足首の状態を見て考えていきたい」などと述べた。

ジョーは、「この結果が、いまだに実感がわきません。自分が望んでいた以上の結果となりました。ネイサン・チェンとユヅル・ハニュウと同じ表彰台に上がることができたなんて、信じられません」と喜びを表現した。

メダルを期待されていた宇野昌磨は、冒頭の4サルコウ、そして次の4フリップとも着氷でステップアウトして手をつき、いずれも回転不足の判定だった。残りは大きなミスなく滑り切り、フリー178.92、総合270.32で2年続けて上がっていた表彰台を逃し、4位に終わった。

「自分は本当に弱いんだなと気づかされた。自分がトップで争える実力はないと言い聞かせて、一から成長して帰ってこなければいけない」そう決意を口にした宇野昌磨。ここでの体験を生かして、さらに大きく成長してくるだろう。

田中刑事は今季苦しんできた4サルコウを、「ウィリアムテル」のプログラムの冒頭できれいに着氷し、2トウループをつけた。2度目の4サルコウは3サルコウにしたものの、3アクセル2回など、残りを大きなミスなく滑り切ってフリー159.64、総合238.40でSP19位から総合14位まで挽回した。ボーヤン・ジンが総合5位、ミハイル・コリアダが総合6位だった。

text by 田村明子
著書『挑戦者たち―男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて―』がミズノ スポーツライター賞 優秀賞を受賞!

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