コラム
【全日本選手権】女子FSレビュー/坂本花織が有言実行で五輪出場決定!樋口は2位で初五輪へ前進、3位は17歳の河辺
有言実行で、坂本花織は2度目の五輪出場を手にした。
12月25日、全日本選手権女子フリー。1位になれば自動的に五輪代表に内定する規定のもと、「優勝して代表を決めたいです」の言葉の通り、優勝を果たした。
今シーズンの安定感のままショートプログラム(SP)1位、最終滑走で迎えた。
その演技は非の打ちどころがなかった。冒頭のダブルアクセルはGOE(できばえ点)で最高となる+5の評価を9人中5人のジャッジがつける会心の出来。その後のジャンプやスピン、ステップも加点を得る。さらに演技構成点も全選手中唯一の5項目すべて9点台と高い評価を得る。総合得点は、非公認ながら自己ベストを大幅に超える234・06点。2位以下に大きな差をつけての勝利だった。
「一発内定という目標が達成できたのですごくうれしい気持ちでいっぱいです」
2度目の五輪出場を決めたことについてはこう語る。
「4年前は、シニアのグランプリとか世界選手権を経験している人の中に、ジュニア上がりとして戦いました。(代表選考では)最後の最後まで誰が呼ばれるんだろうってどきどきしながら待っていました。今年は演技が終わって順位が出て、その時点でオリンピックが決まったのは、だいぶ成長したなと自分でも感じました」
その表情もまた、キャリアを重ねたたくましさを感じさせた。
2位になったのは樋口新葉だった。SPではリスクを減らすためにトリプルアクセルを回避し2位と好位置につけて迎えたフリー。冒頭のトリプルアクセルは着氷に乱れがあった。それでもしっかりした滑りを見せ、回転不足をとられるジャンプなどはあったが大きなミスのない演技を披露する。フリーも2位で総合得点は221・78点で総合2位となった。
「強い気持ちで滑り切ることができました」
樋口には忘れられない苦い思い出がある。4年前、グランプリシリーズで好成績をあげグランプリファイナルにも進出。十分、五輪代表(当時の日本女子代表は2枠)を狙える位置にいたが、緊張からか、全日本選手権では4位に終わり、五輪代表を逃がしたことだ。そのとき2位となって代表をつかんだのが坂本だった。
樋口は「緊張で足が震えていて、演技前も演技中も足の力が入らないような感覚でした」と振り返る。
それでも「気持ちで乗り切って、落ち着いた演技で最後まで行けました」。もう繰り返さないという強い思いが支えになった。
3位には今シーズンからシニアになった17歳の河辺愛菜が入った。SP、フリーともにトリプルアクセルを成功させるなど高い技術点が躍進の原動力だ。完璧ではなかったが、転倒など大きなミスはしなかった。伸び盛りならではの思いきりのいい滑りが好成績につながった。
ミスの許されない展開の中、表彰台に上がることができなかったのは4位の三原舞依と5位の宮原知子だった。河辺と三原の得点差は2・79点、河辺と宮原は3・14点。少しの得点の差を生んだのはジャンプでの数少ない失敗。それが順位に響くことになった。ただ、緊張を強いられる舞台にあって、それぞれに磨いてきた表現はしっかりと伝わる演技だった。
どの選手も五輪代表選考大会ならではの緊張がのしかかる中、それにどう対処するかが問われた女子の試合は終わり、先に記したようにまず坂本が五輪代表に内定した。2位の樋口も有力と言っていいだろう。
3人目の代表の候補としては、河辺と三原があげられる。
NHK杯で2位となり全日本選手権でも3位となった成長著しい新鋭の河辺。
選考基準の中で定められた複数の項目に該当するのが1つの河辺に対し、3つにあてはまる三原。
12月26日、選考会議を経て、日本代表が発表される。
text by 松原孝臣
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