注目選手コラム

高梨沙羅(スキージャンプ)
挑戦者として悲願のメダル獲得へ

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「スリリングな試合をして、女子ジャンプの面白さを多くの人に伝えたい」と語る高梨(Photo by Getty Images)

4年前のソチ五輪では絶対的な優勝候補とみられながら、4位に終わった高梨沙羅。ソチ後のW杯ではその期待を膨らませるように2015-16シーズン、16-17シーズンと圧倒的な強さを見せて総合優勝を果たし、平昌五輪ではその雪辱を果たすことができるか注目される。

だが、迎えた今季は上位選手の勢力図が一変。パワーに加えて踏み切りの精度を上げてきたマレン・ルンビ(ノルウェー)やカタリナ・アルトハウス(ドイツ)を相手に苦戦を続け、W杯では勝利をあげられずにいる。これまでのW杯10戦では、7勝のルンビ、2勝のアルトハウスに対して2位1回、3位5回で総合3位に甘んじているのだ。

その要因は、高梨自身の助走の滑りが安定しきらないこと。冬シーズンへ向けてのフィンランド合宿では気温上昇でジャンプ台を使えない日もあり、十分な準備が出来ずにシーズンインしてしまった影響が大きい。さらにこれまでなら多少のズレはあっても勝てていたが、ライバルの技術向上でそれができなくなっている。そんな状況は精神面にも少なからず影響を与えて微妙な狂いを生み出す。そのため大会の度に変わるジャンプ台への対応にも遅れをとっているのだ。

勝利を期待された国内4連戦では2位が最高だった高梨は、第13戦と14戦が中止になったことで五輪前最後の大会となる1月27日からのスロベニア・リュブノ大会でも苦戦した。第1戦では2強に及ばない3位に終わり、第2戦はこの大会から復帰してきたベテランのダニエラ・イラシュコ(オーストリア)に優勝をさらわれて表彰台を逃す4位に止まったのだ。

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(Photo by Getty Images)

だが収穫もあった。1戦目は今季序盤で目立っていた上体が先に動いてしまう踏み切りも出ていたが、2戦目はそれを修正し、優勝したイラシュコには5.8点差、3位のアルトハウスには2.7点差という僅差の勝負をしていたことだ。さらに昨季までは課題になっていた着地での足を前後に開くテレマーク姿勢も、札幌大会第2戦の2本目で「頭を前に突っ込んで体を前傾させるイメージでやったら上手くいった」と話していたが、今回は1本目はトップタイの55.5点を獲得し、2本目は全体トップの56.0点を獲得と克服できている。またこれまで大きな差をつけられていた助走速度も、ルンビーには2本とも時速0.6㎞差に止めた。上位3人に比べて風の条件は少し不利があったが、同じ条件なら飛距離でもほぼ負けていなかったといえる結果だった。

なかなか勝てない状況も高梨は「どんなに飛んでも着地でテレマークを入れなくてはいけない接戦になると思うし、ワクワクしている」と歓迎している。これまでのような勝って当然の状態から、競り合う状況になったからだ。さらにルンビが強さを見せつけてくればくるほど、それに挑戦したいという思いも強くなる。これまで長年勝ち負けを競い合ってきたイラシュコの復帰も、高梨のモチベーションをさらにあげるものになるはずだ。絶対的な優勝候補としてではなくメダル争いをするひとりの選手として臨める今大会は、彼女が一競技者に戻って挑戦できる大会でもある。

「スリリングな試合をして、女子ジャンプの面白さを多くの人に伝えたい」という彼女の強い思いが、現実になる大会。そこでメダルを手にすれば、それが何色であろうと、高梨にとってはこれまでにない大きな勲章になる。

(文=折山淑美)

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