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あの頃の思い出とともに振り返る、NHK五輪テーマソングの歴史

2017年12月20日 12:50配信

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オリンピックは数々の名場面を生んできた。ハイライト映像と一緒にテレビで流れされるのがテーマソングだ。その曲を聴いただけで、蘇ってくる感動のシーンがスポーツファンにはあるのではないか。今回はNHKのテーマソングとともに、過去のオリンピックを振り返る。(文=池田敏明)

リオ大会を彩った安室奈美恵の『Hero』

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2016年に行われたリオデジャネイロ大会で、日本は金12個、銀8個、銅21個、合計41個のメダルを獲得した。これは日本のオリンピック史上最多の数字で、地球の裏側から届けられる日本人選手たちの活躍に、我々も連日、感動と興奮、歓喜に沸いた。柔道では12個、水泳(競泳・シンクロナイズドスイミング)でも9個ものメダルを獲得し、レスリングでは“霊長類最強女子”こと吉田沙保里がまさかの銀メダルとなったものの、伊調馨がオリンピック4連覇を達成した。体操では内村航平が個人総合で連覇を達成し、団体でも金メダルを獲得した。

卓球やバドミントン、競歩、カヌーといった、普段あまり露出度の高くない競技でもメダリストが誕生し、日本中が大いに盛り上がった大会における最大のハイライトは、陸上男子4×100メートル走での銀メダル獲得ではないだろうか。陸上のスプリント競技で大国アメリカを上回り(アメリカは失格)、ジャマイカにあと一歩まで追いすがるなど、一昔前には想像すらできなかったことだ。

そういった競技の様子はNHKで多く生中継され、またハイライト映像も頻繁に流された。その際、映像のBGMとして流されていたのは、NHKの同大会テーマソングである安室奈美恵の『Hero』という曲だ。

アスリートがヒーローになる歓喜の瞬間に安室奈美恵の力強い歌声と歌詞の内容がマッチし、またNHKがオリジナル版のミュージックビデオを制作して五輪中継の前後に放送していたこともあって、リオオリンピックと聞いてこの曲をイメージする人も多いのではないだろうか。

そもそもNHKが最初にオリンピック中継にテーマソングを使用したのは、1988年のソウル大会の時だった。この時は女性シンガーソングライター、浜田麻里の『HEART & SOUL』という曲がテーマソングに採用された。現スポーツ庁長官である鈴木大地が競泳男子100メートル背泳ぎで金メダルを獲得したり、陸上男子100メートルでカール・ルイス(アメリカ)とベン・ジョンソン(カナダ)のライバル対決が行われ、後者が9秒79の世界新記録で優勝しながら、ドーピング違反で金メダルがはく奪されたりと、さまざまな出来事があったソウル大会。曲名や歌詞に「ソウル」という単語が入っているのは恐らく偶然だろうが(「SOUL」は「魂」の意味で、五輪開催都市は「SEOUL」)、“ヘヴィメタル・クイーン”と呼ばれた浜田麻里のハイトーンボイスは、闘志あふれるパフォーマンスを見せるアスリートたちの姿ともマッチしていた。

1980年代から90年代にかけては女性ロックシンガーの楽曲がテーマソングに多く採用されており、1992年バルセロナ大会は元SHOW-YAの寺田恵子が歌う『PARADISE WIND』、そして1996年アトランタ大会では、大黒摩季の『熱くなれ』がテーマソングとなった。

ミリオンヒットを飛ばしていた人気アーティストの楽曲だけに、この『熱くなれ』も83万枚以上を売り上げる大ヒットとなった。アトランタ大会のハイライトといえば、何と言っても男子サッカー日本代表がブラジル代表を破った“マイアミの奇跡”だろう。GK川口能活(現SC相模原)が鬼神のごとく立ちはだかってスーパーセーブを連発し、相手守備陣の連係ミスを突いて伊東輝悦(現アスルクラロ沼津)が奪った1点を守り切り、強豪ブラジルから大金星を挙げたこの一戦には、歌詞のとおり日本中が“熱く”なった。

谷富士雄アナの名台詞とリンクした『栄光の架橋』

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2000年のシドニー大会ではZARDの『Get U’re Dream』が採用された。同大会では柔道で野村忠宏の2大会連続を始め、田村亮子、井上康生らが金メダルを獲得。一方で、男子100キロ超級の篠原信一は、一本を見逃される“世紀の誤審”によって銀メダルとなったが、「すべて自分が弱いから負けた」という潔いコメントで話題となった。また、女子マラソンでは高橋尚子がオリンピック新記録となる2時間23分14秒で走り抜き、日本陸上女子で史上初となる金メダルを獲得した。完走後に「すごく楽しい42kmでした!」と語った“Qちゃん”の笑顔が印象的だった。

テーマソングの存在感が最も強かったのは、2004年のアテネ大会ではないだろうか。同大会では男性フォークデュオのゆずが歌う『栄光の架橋』が採用された。過去のテーマソングはアップテンポな曲が多かったものの、この曲はバラード。作詞・作曲を担当した北川悠仁は、X JAPANの『ENDLESS RAIN』にインスパイアされてこの曲を作ったという。

アテネ大会では、3連覇を達成した柔道の野村忠宏、競泳男子平泳ぎで100メートル、200メートルの二冠を達成した北島康介、陸上男子ハンマー投げを制した室伏広治、女子マラソンで優勝した野口みずきなど、合計16個もの金メダルを獲得した。これは1964年東京オリンピックに並ぶ史上最多タイ記録。そのハイライトと言えるのが、体操男子団体だろう。最後の競技である鉄棒が始まる時点でメダル獲得はほぼ確定しており、最後の競技者だった冨田洋之が8.962点を取れば金メダルという状況の中、冨田は試技の中でスーパーE難度の「コールマン」を成功させ、この時点で金メダルが確定させる。そして実況を担当したNHKの刈谷富士雄アナウンサーは、冨田の着地技に合わせてこのような実況を入れた。

「伸身の新月面が描く放物線は、栄光への架け橋だ!」

たとえ着地に失敗しても8.962を上回ることは間違いなかったが、冨田は見事に着地を成功させ、日本に28年ぶりの金メダルをもたらす。刈谷アナは実況をしながらこの言葉を紡ぎ出したそうで、『栄光の架橋』との類似性は偶然だったようだが、今でも「オリンピックのハイライトシーン」と聞いてこの場面と『栄光の架橋』をイメージする人は多いはずだ。

2008年の北京大会からは、オリンピックとパラリンピックのテーマソングが同じ曲になり、Mr.Childrenの『GIFT』が使用された。この大会では北島康介が競泳男子100メートル、200メートルの平泳ぎで連覇を達成し、この大会を最後に正式種目から除外されるソフトボール女子がアメリカを下して悲願の金メダルを獲得。一方でなかなか期待どおりにいかなかった競技もあるが、『GIFT』のAメロはそんな状況ともシンクロする歌詞だった。

作詞・作曲を担当したボーカルの桜井和寿は「勝った人にも負けた人にもある輝きを曲にしたかった」と語っている。金メダルを獲得したから評価されるのではなく、それぞれの競技に対する思いや真剣に取り組む姿勢、そして全力で戦う姿こそが美しいものであるということを表現しているのではないだろうか。

2012年のロンドン大会では、いきものがかりの「風が吹いている」が使用された。15分22秒という長尺や、ロンドンにちなんで610(ロンドン)円で販売されたことも話題になったが、制作に際してはゆずの『栄光の架橋』を意識したという。同大会ではボクシング男子ミドル75kg級で村田諒太が金メダルを獲得したが、柔道では金メダル1個、競泳ではゼロに終わるなど“お家芸”と言える競技での不調も目立った。2011年のサッカー女子ワールドカップで優勝したなでしこジャパンも、ロンドン大会では決勝でアメリカに惜敗し、ビッグトーナメント連覇はならなかった。

2020年には東京オリンピックが開催される。どのアーティストの、どんな楽曲がテーマソングになるかはまだわからないが、後世まで語り継がれる名曲の誕生を望むとともに、大会での選手たちの活躍にも期待したい。

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