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スノーボードの王位継承なるか? 絶対王者ショーン・ホワイトに挑む平野歩夢

2018年1月24日 13:00配信

©Getty Images

弧を描くハープパイプの反り立つ壁を登り切って空高く舞い上がる。リップと呼ばれる壁のへりから勢いよく飛び出したその身体は、空に投げ出されたように高く飛ぶ。スノボードフリースタイルの種目の一つ、ハーフパイプは空中で繰り出される技の難易度や技術、完成度を競う競技です。この競技でメダルが期待される日本男子のエースが、前回ソチオリンピックの銀メダリスト、平野歩夢選手です。“エア”と呼ばれるジャンプが最大の魅力のハーフパイプですが、平野選手は現在世界最“高”のエアを決める選手として世界中に知られています。

小学生にして将来を約束されたスーパーエリート

平野選手がスノーボーダーとして最初に世界を驚かせたのは小学生の頃。世界的なスノボードブランド、Burton(バートン)と、小学4年生にして契約を結び、プロライダーとして活動することになったのです。バートン契約ライダーといえば、いつの時代もスノーボーダーの花形です。スノーボードやスケートボード、サーフィンなどのヨコ乗り系スポーツの「スーパーキッズ」がメディアなどに取り上げられることは珍しくありませんが、スノーボード界のトップベンダーが認めたプロライダーとなると話は別です。平野選手は、小学生にしてスーパースターを数多くサポートしてきたバートン社から「将来的に世界ナンバー1、オンリー1のライダーになる」と認められたのです。

こうした期待に応えるように、平野選手は順調にキャリアを積んでいきます。ジュニア大会を総なめにし、14歳にして世界最高峰の大会の一つ、X Gamesで準優勝。史上最年少銀メダルを獲得します。同じ年にヨーロッパオープンでシニア大会初制覇、ワールドカップ初優勝と、期待の新星は関係者が描いた「近い将来」をあっという間に現実に変えていきました。

世界でもっとも高く飛べるスノーボーダー

©Getty Images

平野選手の大きな武器が、エアの高さです。ハーフパイプでは、1回の滑走で5回から7回のエアが演技に組み込まれています。平野選手が他の選手を圧倒しているのはエアの高さです。パイプにドロップインして最初のジャンプであるファーストヒットのエアは7m以上といわれていて、スノーボード界に君臨する絶対王者、ショーン・ホワイト(アメリカ)よりも高いといわれているのです。

高さも点数に加味されるためこれだけでも大きな武器ですが、スピードを乗せるライディング、より高く飛ぶための踏み切りなどの技術は、平野選手が超一流の競技者であることの証明になり、演技の完成度、採点に大きく関与します。

若くして“ネクスト”ショーン・ホワイトの期待を背負った平野選手は、その名に恥じない活躍を続けます。

15歳74日で参加した2014年のソチオリンピックでは、大技を失敗しメダル圏外に沈んだショーン・ホワイトを尻目に銀メダルを獲得。これは冬季オリンピック日本人史上最年少でのメダルというだけでなく、スノーボードにおける最年少メダリストとしてギネス世界記録にも認定される記録づくしのメダルとなりました。

不運からの復活! 目指すは絶対王者越えと王位継承

まさに順風満帆。少年のときに描いた夢の通りに進んでいた平野選手のキャリアですが、ソチオリンピック後に苦難が待ち受けていました。

平野選手自身は無関係だったものの、スノーボード界の未成年飲酒騒動で思うように活動ができないという不運に見舞われてしまうのです。悪いことは続くもので、2017-18シーズンの最終戦では左膝のじん帯に加え、内臓にまでダメージを負う大けがをしてしまいます。

スノーボード界では、フィギュアスケートのような横回転のエアに縦回転を加えたエアが主流です。体操のひねり技のようにも見えますが、競技で披露されるトリックは年々進化の一途をたどっています。トリックが複雑さを増す中で、失敗した選手のケガのリスクも高まっていたなかでのケガでした。

トリックの複雑化の一例を挙げれば、平昌のメダル獲得には横に4回転、縦への2回転を組み合わせた大技「フロントサイドダブルコーク1440」の成功がマストだといわれています。しかも金メダルとなると、フロントサイドダブルコーク1440を一回の演技で2回組み込みつつ、成功させる必要があるのです。超絶難易度のフロントサイドダブルコーク1440は、奇しくも平野選手のケガの原因になったトリックでもあります。

平野選手の“越えるべき壁”であるショーン・ホワイトも昨年10月のトレーニング中に顔面を63針も縫う大ケガをしたばかり。

ショーン・ホワイトは数週間で復帰を果たし、100点満点をたたき出すなどオリンピックに向けて完全復活を遂げています。一方の平野選手も昨年12月のワールドカップで2013年以来の優勝。このとき3位に終わったショーン・ホワイトに完勝しての優勝は、オリンピックに向けて大きな弾みになる勝利でした。

金メダルで名実ともに最強の証明を 世代交代なるか?

©Getty Images

1998年から正式競技として採用されたスノーボードですが、オリンピック競技に名実ともにトップの選手が出るようになったのは、2006年、ショーン・ホワイトが優勝したトリノオリンピックからでした。ショーン・ホワイト以前のスノーボード界のカリスマ、テリエ・ハーコンセンは長野オリンピック出場を辞退し、メダルや競技性よりもスノーボードが持っている「自由な精神」を大切にすべきだと圧倒的な強さを保持したまま別の道を歩みました。

テリエを継ぐスターとして注目されたショーン・ホワイトはX Gamesなどに出場しながら、オリンピックでも見る者の度肝を抜くビッグエアでトリノ、バンクーバーを連覇。ソチではメダルを逃したもののいまだに世界ナンバーワンライダーの名をほしいままにしています。

2018年、平昌で平野選手に期待されるのは、金メダルという結果と絶対王者、ショーン・ホワイトからの王位継承。19歳になった平野歩夢がついに夢をつかむ瞬間が訪れるかもしれません。

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