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エンタメで見る五輪 ロス五輪のテロ対策だった凄いヘリ『ブルーサンダー』

2018年12月5日 19:27配信

©1982 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

文・平辻哲也

ロサンゼルス上空でジェット・ヘリがチェイスを繰り広げる娯楽作『ブルーサンダー』(1983)。一見、オリンピックとは何の関係もない娯楽作だが、このヘリは1984年ロサンゼルス五輪のテロ対策として作られた設定なのだ。監督は大ヒット映画『サタデー・ナイト・フィーバー』(1977)のジョン・バダム。脚本はあの『エイリアン』を生み出した脚本家ダン・オバノン。ストーリーはやや荒っぽいながらも、エンターテイメントとして楽しめる。

オリンピック開催を間近に控えたロサンゼルス。政府やロス市警は迫りくるテロを心配していた。劇中にも「(1972年、イスラエル人アスリート11人が殺害された)ミュンヘンの二の舞はごめんだ」といったセリフが出てくる。その対策との名目でロス市警は特殊ヘリを配備。機体の厚さ2.5cm、時速320kmという猛スピードで飛行可能なジェット・ヘリには「ブルーサンダー」というニックネームがあった。

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3000万カンデラのサーチライト、拡声器のほか、赤外線暗視装置、室内の人物をカーテン越しに撮影可能なサーモグラフカメラ、コクピット上部に高感度パイレート・マイクロフォンを装備し、映像と音声はコンピューターに記録できる優れもの。また、ローター音を消すことができる「ウィスパーモード」も兼ね備えていて、隠密行動も可能だ。

実現可能なテクノロジーを搭載したジェット・ヘリ

そのテストパイロットに選ばれたのは、ロス市警航空課の凄腕フランク・マーフィー(ロイ・シュナイダー)。マーフィーはそのテスト飛行中、州政府幹部が集まる密談を盗撮する。それは、ブルーサンダーの能力の高さを認めさせるために、わざとヒスパニック地区で暴動を起こし、ブルーサンダーによって、首謀者を暗殺するという陰謀だった。マーフィーはその陰謀を暴くためにブルーサンダーを奪取するが、警察の上層部が手を回す。やがて、ベトナム戦争時の同僚コクレーン大佐(マルコム・マクダウェル)が別の高性能ヘリ「OH-6」で追いかけ、ロス市街での空中バトルが展開される……。

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主演は『フレンチ・コネクション』(1971)の刑事役、『ジョーズ』(1975)の署長役で知られるロイ・シャイダー。ほかに、『時計じかけのオレンジ』(1973)のマルコム・マクダウェル、『デリンジャー』や『ワイルド・バンチ』などサム・ペキンパー監督作品でおなじみのオーレン・ウォーツが脇を固める。しかし、主役はなんといってもジェット・ヘリだ。

架空の存在だが、当時、ほぼ実現可能なテクノロジーが採用されている。母体となったのは、592馬力の仏アエロスパシアル社製のガゼル(5人乗り)で、1971年には世界最高スピードを樹立したという代物。それを、ハリウッドのエフェクトマンが改造した。映画の製作費は2200万ドルと言われているが、その3分の1が複数のヘリの購入費、改造費に費やされたそうだから、出演者のギャラより高いのは間違いない。

日本人撮影監督も参加したヘリ・バトル

最大の見どころは、前代未聞のロス上空での迫力満点のヘリ・バトルだ。よくも、こんな低空飛行を認めたものだ。撮影は81年11月から実際のロスで市警の立ち会いのもと、日曜日ごとに行われた。そのカメラを回した1人が、三谷幸喜監督の『ラヂオの時間』(1997)や金子修介監督の『デスノート the Last name』(2006)の撮影監督の高間賢治氏。当時、文化庁の芸術家在外研修員としてロスに滞在中だった。ハリウッドのバーバンク・スタジオに見学に行くと、本作の撮影監督ジョン・A・アロンゾ氏からいきなり大役を任されたという。高間氏は当時の映画雑誌に「(ヘリは)道路の上を高度15メートルぐらいで飛び、交差点で鋭角に曲がり…(中略)とにかく最高にエキサイティング」と書いている。

このほかにも、この映画は日本との関わりが少なくない。アメリカ最大の日本人街「リトル・トウキョー」でもロケしているし、主人公が身につけているデジタル腕時計はカシオ製。ラストの方に流れるニュース映像では、東北新幹線の話題が取り上げられている。東北新幹線の開業(大宮〜盛岡間)は1982年6月23日だから、タイミングがよかったかもしれない。

実際のロサンゼルス五輪は、カール・ルイスが陸上競技男子100m、男子200m、男子4×100mリレー、男子走幅跳の4つで金メダルの大活躍。アメリカは83個の金メダルを始め計174個のメダルを獲得した。ブルーサンダーのようなヘリは配備されなかったが、大きなテロ事件も起きなかった。2028年にはロサンゼルスで3度目の夏季オリンピックが開催予定。ブルーサンダーも復活してくれないものか。

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『ブルーサンダー』

発売中

Blu-ray 2,381円(税別)/DVD 1,410円(税別)

発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

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