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二刀流なるか、アルペンスキーのメダリスト森井大輝

2019年4月17日 13:00配信

取材・平辻哲也

 アルペンスキーで冬季パラリンピックに5大会連続出場し、4大会連続でメダルを獲得したトヨタ自動車所属の森井大輝選手。チェアスキーを「マシン」と呼び、メカニックと調整を続け、頂点を目指す姿は「完全にF1レーサーのイメージ」と、WOWOWのパラリンピック・ドキュメンタリーシリーズ「WHO I AM」の太田慎也チーフプロデューサーは言う。森井選手はパラ・パワーリフティングでの東京大会出場も目指しており、注目だ。

 森井大輝は1980年、東京都あきる野市生まれの38歳。4歳からスキーを始め、インターハイ出場を目指していた97年、交通事故で脊髄を損傷し車いす生活に。長野パラリンピックを病室のテレビで見たことがきっかけでチェアスキーを始める。02年ソルトレイク大会でパラリンピック初出場。06年トリノ大会では大回転で銀、10年バンクーバー大会では滑降で銀、スーパー大回転で銅メダル。14年ソチ大会、18年の平昌大会では滑降で銀に輝く。トヨタ自動車所属。

ーー番組ではシーズン2(2018)で、平昌大会で悲願の金メダルを狙う姿を追いました。トヨタ自動車に所属する森井選手はトヨタをはじめとした多くのエンジニアがサポートしていましたね。

「森井選手は完全にF1レーサーのイメージですね。自分のスキーのことをマシンと呼んでいました。彼自身がトヨタ自動車に入社後、『僕に最高のマシンで滑走させてください。ぜひトヨタのクルマづくりの技術を活かして支援していただきたいです』と、22ページにわたるレポートを書いたのだそうです。それに社内の方々が心を動かされて、日頃、クルマづくりをしている40人以上のエンジニアたちが社内公募で集まったのです。僕らは何人かの方を取材させていただきましたが、普段はトヨタの車のシャーシ設計だったり空力抵抗などを担当されているような方々でした」

ーー40人以上の社員が支えているというのはすごいですね。

「それぞれの部署のスペシャリストたちが現業はそのままに、時間を捻出し、森井選手をサポートしているんです。これも業務のうちですが、担務が増えながらも、現業に影響を出さないようにしながら、部署を越えて協力しながら効率的に作業されていました。社内プロジェクトのような感じだと思います。

 エンジニアの皆さんも『最高の経験をさせてもらっている』とおっしゃっていました。『森井選手を通じて、世界の頂点を目指すということは、こういうことなんだということを、一エンジニアとして感じられ、誇りに思うし、クルマ作りにも活きる経験をいっぱいさせてもらっている』と。そういう言葉を伺い、素敵なエネルギーが生まれているなと思いました」

ーースキー場でチェアスキーの細かい調整を続ける様子は興味深いものがありました。

「森井さんはキャリアが長いので、滑走中に座面から得る情報から、今のセッティングがどうだった、あの部分を2ミリ後ろにすべきだったとか、他の場所をもう少しこうすべきだったっていうことを全部、感覚として持っているんです。でも、それは数値化されてない。エンジニアの皆さんはそれらを数値化することでさらに精度が上げられるため、そのすり合わせ作業を何度もやるわけです。アスリートとエンジニアが、互いにデータを蓄積し、共通言語を探していくイメージです」

ーー森井選手はパワーリフティングでの東京大会出場を目指すとも伝えられています。

「平昌パラリンピックまでの過程を取材させていただいている際、より滑走性を高めるためのフィジカルトレーニングとしてパワーリフティング(ベンチプレス)を取り入れられていました。その際に、パラ・パワーリフティングの日本記録に相当する重量をあげられているのを見て、とても驚いたのを覚えています。東京パラリンピックを目指されるかどうかはご本人が決められることですが、TOKYOの舞台で戦うことができるのでは?と、わくわくしました」

ーーシーズン1では車いすテニスの国枝慎吾選手、シーズン2では森井選手、シーズン3では水泳の木村敬一選手を取り上げました。番組ではあと2シーズン続くわけですが、日本人選手は1シーズンに一人は取り上げていくのですか?

「私としてはそう思っています。もちろん取材を受けてくださらないと話になりませんが……。ありがたいことに、今や日本選手の多くが「WHO I AM」シリーズのことを知ってくださるまでになりました。去年、木村選手に取材のご相談をした時は『選んでいただいて光栄なのですが、これって、金メダリスト以外は出ちゃいけないやつですよね?』と言われ、『そんなことないですよ!(笑)』と、そんな会話もありました。今では、何人かの日本の選手たちから、『番組に出られるように頑張ります』と言っていただけるようになり、恐れ多い反面、本当に嬉しいです」

木村敬一

1990年、滋賀県栗東市生まれの28歳。2歳の時に病気で視力を失う。小学4年の時から水泳を始め、筑波大附属盲学校(現・筑波大学附属視覚特別支援学校)で水泳部に所属し、頭角を現す。12年のロンドンパラリンピックでは銀・銅1つずつのメダルを取り、前回のリオパラリンピックでは日本人最多の銀2つ銅2つのメダルを獲得した日本のエース。東京ガス株式会社に在籍。

(続く)

「WHO I AM」の特設サイト

シーズン1、2の本編(全16番組)はここから無料で観ることができる。

「WHO I AM」とは?

WOWOWと国際パラリンピック協会(IPC)が、2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでの5年間にわたって、世界最高峰のパラアスリートたちに迫るパラリンピック・ドキュメンタリーシリーズ。現在、シーズン3まで放送されており、24人のパラアスリートを取り上げている。勝負の世界だけでなく、人生においても自信に満ちあふれる彼らが放つ「これが自分だ!=This is WHO I AM.」という輝きを描く本シリーズは2018年、世界最高峰のテレビ賞「国際エミー賞」にノミネートされるなど国内外で高く評価されている。

太田慎也(おおた・しんや)大阪府吹田市出身。2001年WOWOW入社。編成部でスポーツ担当やドキュメンタリー企画統括を経てドキュメンタリー番組のプロデューサーに。日本放送文化大賞グランプリやギャラクシー賞選奨を受賞。「WHO I AM」では国際エミー賞ノミネート、アジア・テレビジョン・アワードノミネートの他、ABU(アジア太平洋放送連合)賞最優秀スポーツ番組、日本民間放送連盟賞 特別表彰部門 青少年向け番組優秀(2年連続)などを受賞。

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