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世界王者117人輩出国のボクシングは五輪メダリストが5人 東京五輪でその差は埋まるのか?

2019年9月25日 13:00配信

 日本はプロボクシングにおいて戦後から多くの世界王者を輩出してきたボクシング先進国といえる。しかし、オリンピックでのボクシング競技においては、2012年のロンドン五輪で44年ぶりにメダルを獲得。プロボクシングとの差は歴然でオリンピックボクシングにおいて、日本は後進国となっている。その差とは何だろう––過去の実績からその原因をひも解く。

(C)Getty Images

(文=善理俊哉)

日本のオリンピックボクシングとプロボクシングの実績の違い

 日本の茶の間にテレビが登場する以前から、プロボクシングは観戦スポーツとして長きにわたり多くの人々を魅了してきた。古い話でいえば、白井義男が1952年に「日本人世界王者第1号」となって以降、ファイティング原田が世界の殿堂に入る名選手として称えられ、具志堅用高は13度の日本史上最多防衛記録を達成した。「カエル跳びアッパー」や「あっち向いてホイパンチ」といった奇抜な作戦も特徴だった輪島功一の不屈の精神も、高度経済成長期の日本に大きな活力を与えたという。

 一方で、オリンピックにおける日本のボクシングは1928年のアムステルダム五輪に初参加以降、限られたごくわずかのメダリストしか輩出していないのが現実で、男子の金メダリスト2人と銅メダリスト3人で、女子にはまだ出場実績すらない。それに対して、プロボクシングの日本人世界王者は2019年7月末日現在で過去に男子92人、女子25人となっていて、そこには歴然とした大きな差がある。

 プロボクシングとオリンピックボクシング(旧称アマチュアボクシング)にはルールに異なる点も多く、問われる能力は必ずしも一致していない。極端な例で言えば、プロボクシングで近年までWBC世界バンタム級王座を12度防衛した山中慎介の大学時代は、勝ったり負けたりの成績でその才能を持て余していて国際大会とは無縁の選手だった。山中に限らず日本のオリンピック・ボクシング界の当時は、史上最も低迷していた。それが顕著だったのが2004年のアテネ五輪だった。その予選に出場した全選手が敗退。前代未聞の空振りに終った大会となった(後にライトフライ級の五十嵐俊幸が繰り上げで出場した)。

 当時はインターネットなどの普及率も高くはなく、そういったツールを使って手短に国際大会を研究する機会はなかった。当時の日本には国際大会で戦うためのルール適応力が欠けていたのだった。しかし、当時の選手たちが必ずしも資質が低かったわけではない。代表候補としてアジア予選3大会に出場した内山高志は、プロ転向後にWBA世界スーパーフェザー級王座を11度防衛する名王者になった。

オリンピックボクシング挑戦後からのプロでの実績

 こうした日本人選手たちにおける「潜在力の持て余し」は、2012年のロンドン五輪で劇的に払拭されることになった。男子バンタム級の清水聡が、日本人として44年ぶりに表彰台入りを決めて銅メダル。男子ミドル級の村田諒太が、日本史上48年ぶりにボクシング競技で金メダルを獲得した。村田は現在もプロでWBA世界ミドル級王座に就いていて、清水はプロ初黒星を喫したが世界王座獲得を狙って邁進している。

 現在のプロボクサーで「日本史上過去に例を見ない怪物」と称されるWBA世界バンタム級王者の井上尚弥も、ロンドン五輪の予選通過まであと1勝と迫ったことがあった。強豪国カザフスタンのベテラン選手に敗れたが高校卒業後間もない18歳の選手による善戦で、そのこと自体が当時の日本ボクシング界にとっては衝撃的だった。

 今年6月、日本男子史上初世界王座4階級制覇を果たした井岡一翔も、2008年の北京五輪出場を目指し、全日本選手権に挑んだひとりだった。決勝戦で大久保賢児に僅差で敗れてしまったが、これも非凡といえる快進撃と言われた。

 日本以外でも、後に一流のプロボクサーとして名を馳せた選手は多い。往年のモハメド・アリ、中量級で一時代を築いたシュガー・レイ・レナード、オスカー・デラホーヤも五輪で金メダルを獲得した実績がある。アリは「黒人差別への抗議」として、メダルをミシシッピ川に投げ捨てたというエピソードも、今では伝説のひとつとなっている。

 五輪の銀メダリストや銅メダリストにも、その後にプロで世界王座を獲得した選手は多い。オリンピックボクシングはプロボクシングのファンにとっても、将来の有望選手をいち早く知るために世界中で重宝されている。 さらに、2016年のリオデジャネイロ五輪以降は、プロボクサーがオリンピックに参加することも認められた。日本では元世界王者の高山勝成らが、それを目指して活動している。

 ボクシング競技は今までよりプロとアマの交流が盛んとなる。そういった交流から新たに生まれ変わろうとしているオリンピック・ボクシングは、これまでのボクシングファン、そしてスポーツファンがより一層楽しめることになるだろう。その元年が、来年開催される東京五輪といっても過言ではないだろう。

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