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卓球女子シングルス代表権の苛烈な争い 敗れた平野美宇に残されたチャンス

2020年1月6日 10:40配信

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 メダルが期待される卓球女子シングルスの代表権争いに決着がついた。伊藤美誠、石川佳純、平野美宇らによって争われた2つの枠を勝ち取ったのは

 また、敗れた選手に東京五輪へ向けて残された道はあるのだろうか

(C)Getty Images

(文=佐藤俊)

石川佳純を上回れなかった平野美宇 東京五輪代表選手2名が決定

みるみるうちに涙があふれてくる。

嗚咽が漏れ、涙腺が決壊したように涙が止まらない。

平野美宇にとって、12月12日は最も残酷で哀しい日になった。

 卓球女子シングルスの代表争いは、苛烈だった。2020年1月の世界ランキング上位2名が、東京オリンピックの代表権を獲得することになったからだ。その選考レースのなか、まずは伊藤美誠が11月のオーストリアオープンで優勝して世界ランキングで日本人トップを確定させ、東京五輪出場の内定を得た。残りは1枠、12月9日の時点で石川佳純が世界ランキング10位、11位の平野美宇をわずかながら上回っていた。平野にとって残されたチャンスは12日から始まるワールドツアーグランドファイナルで石川の成績を上回ることだった。

「五輪での金」 平野美宇が目標に向けた4年間の軌跡

 平野にとって「五輪での金」は、7歳のときに掲げた目標だった。

 だが、前回のリオデジャネイロオリンピックはバックアップメンバーで戦うことができず、伊藤たちをサポートする側に回った。悔しさをかみしめて、仲間たちが銅メダルに輝く姿を焼きつけた。

「次は、自分が五輪のシングルスに出て、メダルを取りたい」

 その思いから、従来の練習にフィジカルとスピードアップのためのトレーニングを取り入れた。2017年はその練習の成果が出て、全日本選手権女子シングルスで石川を破って16歳9カ月の史上最年少で優勝を果たした。つづくアジア選手権の女子シングルスでは当時世界ランキング1位の丁寧(中国)をフルゲームの末に破り、準決勝では同2位の朱雨玲(中国)を下した。そして、決勝では5位の陳夢(中国)にストレートで勝利し、最年少でアジア制覇を果たした。ジャパニーズハリケーンと言われた平野は「高速卓球」でアジア最強となったのである。中国では平野の模倣選手を立てて対策を取られるほどの選手になり、このシーズンの世界ランキングは5位と日本女子のトップに立って東京オリンピックに向けて順調に成長していた。

 しかし、2018年になると一転、不調に悩んだ。

 中国は平野対策で高速卓球を封じるようになり、前年に信頼するコーチが中国に戻ったことも追い打ちをかけ、自分の卓球を見失った。Tリーグが開幕しても調子が戻らず、今年に入っても所属チーム日本生命の村上泰和監督は「まだ、良いところがなかなかない状態です」と、低迷する平野の状態を心配していた。平野自身も「速く強く打つのが自分だと思っていた。全部を強く打ってミスが増え、卓球がグチャグチャになった」と語り、ドン底にあえいでいた。

 転機になったのは3月のカタールオープンだった。コーチの助言で、速いだけではなく緩急をつけて左右の厳しいところを狙ってポイントを取る卓球ができるようになった。香港オープンでは4強、ジャパンオープン荻村杯でも日本女子で唯一4強に入り、「自信を取り戻すことができました」とようやく明るい表情が戻ってきたのだ。

 この時点での世界ランキングは伊藤に次いで2位で、石川を上回っていた。このままいけば東京オリンピックの女子シングル代表権をつかめた。ところが12月9日、ノースアメリカンオープン決勝で石川と対戦し、平野は敗れてしまう。その結果、世界ランキングで石川が10位、平野が11位となったのである。

 平野が石川を逆転するチャンスは、ワールドツアーグランドファイルのみになった。その大会で、平野は石川をひとつでも上の順位になれれば逆転できる。だが、石川と同じ結果であれば石川が女子シングルスの代表権をつかむことになる。世界のベスト16が集う難しい大会、石川は初戦で世界選手権女王の劉詩雯(中国)に敗れた。つづく平野が1回戦を勝てば石川を越えられたが、世界ランキング18位の王芸迪(中国)に1-4で敗れた。その結果、平野は東京五輪女子シングルスの椅子を失ってしまったのである。

 リオデジャネイロオリンピックから3年間、「次(東京オリンピック)は自分が出る」と心に決めて努力を重ねてきただけに、その無念さは絶望に近いものだっただろう。試合後、あふれ出る涙と震える言葉は、失ったものの大きさを表していた。

平野美宇が掲げた目標達成に残された道とは

 これで平野の東京オリンピック出場への夢が断たれたわけではない。

 団体戦出場のための選手が1月6日に決定することになっている。これは協会推薦となっており、世界ランキング上位者が必ずしも選ばれるわけではない。

 団体戦をどう戦うかで、推薦される選手が異なってくる。

東京五輪の団体戦は、ダブルスが第1試合で、第2試合から第5試合までがシングルスとなる。3勝先勝方式なので、ダブルスに勝てば優位に展開できる。そのために初戦のダブルスが重要になる。

 現在、3人の団体選手枠として候補に挙がっているのが平野、早田ひな、佐藤瞳だ。今回は伊藤がエースで2戦目のシングルスからの出場が想定される。そのためダブルスは石川と相性が良い選手が選ばれる可能性が高い。過去の実績では石川は平野と組むことが多く、左利きの石川と右利きの平野は相性も良い。早田は左利きなので同じ左利きの石川と組むというのは現実的には難しいだろう。

 ただ、伊藤と組む場合はグランドファイナル2018でダブルス優勝を果たした早田が断然有利になる。その場合、5戦までもつれれば早田もシングルスに出場することになる。シングルスの世界ランキングでは平野が11位、早田の24位を上回っている。シングルスでは実力的に平野が上なのは間違いない。石川とのコンビ、さらにシングルスを考えると平野が選出される可能性が高い。

「団体戦の代表には誰が選ばれても仕方がないし、(発表を)待つだけですが、代表に選んでいただけたらしっかり結果を残せるように頑張りたい」

 今の平野は吉報を待つだけだが、仮に3人目の選手として選出されれば、次はギリギリの戦いをした仲間とタッグを組み、世界最強の中国に挑むことになる。シングルスではなくとも五輪の舞台に立ち、仲間とともに金メダルを獲得すればリオでの悔しさはこの時のためにあったと笑えるはずだ。

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