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東京五輪2020

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東京五輪の会場となる新国立競技場が完成 巨大スタジアムの“後利用”を考える

2020年1月27日 13:00配信

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(C)Getty Images

(文=後藤健生)

威圧感がない透明感のある居心地の良いスタジアム

 オリンピック・イヤーを迎える2020年の元日に、東京大会のために建設された新国立競技場の“こけら落とし”として、天皇杯全日本サッカー選手権大会の決勝が行われた。

 建築家の隈研吾氏が設計した新スタジアムは巨大ではあっても威圧感がなく、透明感のある居心地の良いスタジアムだった。最初に国際コンペで採択され、建設費が3000億円を超えるということで白紙撤回となったあのザハ・ハディド案の超巨大構造物よりも、ずっと落ち着いたデザインとなった。それでも建設費は1500億円を超え、過去のどのオリンピックよりも高額なメインスタジアムとなったのだが……。

 オリンピックでは開会式や閉会式、陸上競技、女子サッカーの決勝に使用されるが、きっとこの新スタジアムでいくつものドラマが生まれることだろう。

新スタジアムの課題は“後利用” Jリーグの試合を中心とした興行で利用する道

 大きな課題は「東京オリンピック終了後、この巨大スタジアムをどのように活用するのか」が、いまだに決まっていないことだ。

 複雑で巨大な構造の新スタジアムは維持費が年間20億円を超えるため、黒字化はきわめて難しい。ほとんど使用されることもないまま毎年数十億円が維持費として消えていくとすれば、これはまさに「税金の無駄使い」、「負の遺産」と言うべきだ。

 新国立競技場は陸上競技と球技の兼用で、コンサート等にも使用できるように計画された。

 だが、残念ながら陸上競技で、5万人を超える観客を集めることは難しい。つまり、陸上競技場としては大きすぎるのだ。しかも、選手たちがアップをするサブトラックがないので(東京オリンピック時は仮設)、世界陸上のような集客力がある大会は開けない。

 コンサートに使用するためは雨天でも使用できるように開閉式の屋根がほしいところだが、その設置には多額の費用がかかる。また、頻繁にコンサートを開催すれば天然芝の育成が難しくなるから、サッカーやラグビーには使用できなくなってしまう。

 そうしたことを考慮すると、オリンピック終了後はやはりサッカーをメインに、ラグビーやコンサートにも使用していくしかないだろう。もし、Jリーグクラブの本拠地になれば、定期的に年20〜30回ほど試合が開催できる。都心にありアクセスの良いスタジアムなので、Jリーグの試合でも平均5万人近くの観客動員は可能だろう。

“後利用”の中心となるサッカー競技 その専用スタジアムに生まれ変えるには……

 そうなったときの問題は、陸上競技場兼用なのでサッカーの試合が見やすくないことだ。

 兼用スタジアムでは陸上競技のトラックがあるので、スタンドからピッチまでの距離が遠くなってしまう。サッカーの試合はピッチ面より高いところから俯瞰的に見ると全体の動きがよく分かるのだが、ピッチとの距離が遠いと俯瞰的に見ることが難しい。

 ただ、新スタジアムは陸上競技場にしては、かなり試合が見やすい設計になっている。

 スタンドはトラックのすぐ外側まで迫っており、しかもメインスタンドやバックスタンドもカーブしているので、たとえば横浜の日産スタジアムなどと比べると、スタンドからピッチまではかなり近い。また、スタンドがかなりの急勾配で1層目の傾斜角度が20度、3層目は34度もあり、上層スタンドからは試合を俯瞰的に見ることができる。

 1層目の席をうまく改装できれば、サッカー場としてもなんとか使えそうなのだ。もちろん、設計前から「後利用」を考えておけば、サッカー場にでも、野球場にでも改装できたのだが、完成後に本格改装することは難しい。

 イタリアではあまり費用を掛けずに改装して、陸上競技場をサッカー場に転用した例を見かける。1層目のスタンドを覆うようにして、陸上トラックの上に仮設スタンドを造ってしまうという方法だ。新国立競技場も、そうした方法でサッカー専用スタジアムに改装することが可能なのではないだろうか。

 せっかく、高いお金をかけて素晴らしいスタジアムを造ったのだから、知恵を出し合って後利用を考えていくべきだろう。

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