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障碍者と健常者の協力するブラインドサッカー その目を見張る驚愕の技術と能力

2020年2月7日 17:15配信

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パラリンピックで行われる競技に「5人制サッカー」がある。通称「ブラインドサッカー(ブラサカ)」と呼ばれる視覚障害のある選手によって行われる。そのブラサカでは、見張る驚くべき技術や能力を見ることができる。その技術や能力とはどういったものなのだろうか――

(C)Getty Images

(文=後藤健生)

障碍者と健常者が協力して成立するパラリンピックの5人制サッカー

 ブラインドサッカーのルールやピッチなどはフットサルに似ており、フィールドプレーヤー(FP)4人とGKの5人が1チームで交代は自由。FPは障害の程度の差をなくすために全員がアイマスクを着用。GKは視覚障害のない晴眼者が務める。ボールは転がると音が出るようになっており、選手たちはこの音によってボールの位置を知ることができる。

 ブラサカでは音声によるコミュニケーションがきわめて大切だ。晴眼者であるGKが味方選手に指示を送り、相手ゴール裏に陣取る「ガイド」がゴールの位置や距離などを伝え、選手たちはその指示を頼りにシュートを放つ。つまり、障碍者と健常者の協力がなければ成立しないのがブラサカなのだ。そのため観客も試合中は静粛にしなければならない。もちろん、試合前やゴールが決まった瞬間には通常のサッカーのように盛大な歓声が上がる。

ブラインドサッカーのすごさ ボールだけでなく相手の一人ひとりの選手の動きまで把握

 ちなみに全盲の選手によるブラサカとは別に弱視の選手たちによる「ロービジョンフットサル」もあるが、パラリンピックの正式種目はブラサカだけ。また、女子は世界的に普及度が低いので実施されるのは男子だけだ。

 ブラサカは2004年アテネ大会からパラリンピック種目となったが、以来ブラジルが4大会連続で金メダルを獲得。東京大会でも優勝候補の筆頭だ。ライバルは同じ南米のサッカー大国アルゼンチン。また、前大会準優勝のイランや躍進中の中国などのアジア勢も虎視眈々と優勝を狙っている。

 世界最強のブラジルの攻撃を背負って立つのが、31歳を迎えるリカルジーニョ(リカルド・アウヴェス)。前回リオ大会の決勝でも決勝ゴールを決めたスーパースターで、東京大会に出場すれば4大会連続の出場となる。

 筆者は2年ほど前に日本代表と絶対王者ブラジルの親善試合を取材したことがあるが、ある日本人記者が「日本チームの印象は?」という質問をした。すると、ブラジルの選手たちは「日本の10番のこういう動きがよかった」などと、非常に具体的なコメントをしたのだ。つまり、彼らはボールの動きだけではなく、相手の一人ひとりの選手の動きまできちんと把握できているのだ。

 実際、彼らはピッチ全体の情況を把握しており、逆サイドのスペースを使うようなパスも多用する。音などの情報をもとに、彼らは頭の中にピッチ全体の“映像”をしっかりと描いてプレーしているのだろう。

 ブラジル選手たちのボール扱いにも目を見張らされた。

 健常者のサッカーでは、強いボールを蹴るためにはボールの横に立ち足を大きく踏み込んで蹴り足を力強く振りきる。しかし、ボールの位置を目で確認できないブラサカではこういうキックは使えない。つまり、立ち足を踏み込むことなく、蹴り足の力だけで強いキックができるのだ。こうしたテクニックは、通常のサッカーでもゴール前の混戦の中でのシュートなどで応用可能だろう。

 前回リオ・パラリンピックでは出場権を逃した日本代表だが、自国開催の今回はメダル獲得を目標に高田敏志監督の下、合宿を繰り返して強化を続けている。最近ではブラジル、アルゼンチンといった強豪とも接戦を演じられるようになった。

 得点源の川村怜は、リカルジーニョと同じく間もなく31歳。そして、同じく得点力のある41歳のレジェンド黒田智成は、2002年に初めて代表が結成されたとき以来のメンバーで日本代表の精神的主柱。聖火ランナーにも選出されたという。

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