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日本水泳界期待の大橋悠依 試練を乗り越え「自分が一番輝ける場所」東京五輪へ

2020年3月6日 18:00配信

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 大橋悠依にとって東京オリンピックを懸けた大会が近づきつつある。日本水泳選手権である。この大会にエントリーしている大橋は、200メートル女子個人メドレーで2分10秒49、400メートル個人メドレーで4分38秒53(国際水連五輪参加標準記録)の派遣標準記録を破って優勝(2位内も含む)すれば東京オリンピック出場内定になる。

 本来では、昨年7月の世界水泳選手権で内定を決めているはずだった。

その大会で大橋悠衣は200メートル個人メドレー、400メートル個人メドレーにエントリーした。個人種目に限っては、レースで金メダルを獲得すれば東京五輪出場が内定する。大橋は、この日のために厳しい練習に耐えてきたが、「調子がもうひとつ」と万全ではなかった。それでも「自己ベストを出す」という覚悟の下、レースに臨んだ。しかし、大会最初の200メートル個人メドレー決勝で大橋は、まさかの宣告を受けることになる――

(C)Getty Images

(文=佐藤俊)

20歳で頭角を現した大橋悠依 五輪メダル候補選手へ成長

 大橋悠依は、遅咲きのスイマーだ。

 岩崎恭子が14歳のときにバルセロナ五輪女子200メートル平泳ぎで世界のてっぺんに立ったように、水泳は10代の若い選手が活躍する傾向にある。しかし、大橋が水泳界で本当に頭角を現してきたのは、東洋大学3年生(20歳)で迎えた2016年4月、日本水泳選手権とリオデジャネイロオリンピック選考会の400メートル個人メドレーだった。3位入賞となりリオデジャネイロオリンピック出場こそ逃したが、その力強い泳ぎは多くの水泳関係者とファンの胸を打ち、今後に期待を膨らませた。次は大橋の時代がやってくると。

 翌2017年の日本水泳選手権400メートル個人メドレーで4分31秒42の日本新記録で優勝。世界選手権出場も決めた。それはリオデジャネイロオリンピックの銅メダルに相当する記録だった。そして、世界水泳選手権では200メートル個人メドレーで銀メダルを獲得。池江璃花子と共に日本の女子水泳界をリードする存在になった。

 実のところ大橋は東洋大学入学時に、4年間で選手生活を全うしようと考えていたという。だが、3年になってブレークし、卒業後には東京オリンピックでメダルを獲得できるような選手に成長。競技を続けることを決意した。

遅咲きゆえの悪癖を乗り越える 「今までのなかでも思い出に残る試合」

 そうしたなか、昨年7月に世界水泳選手権を迎えた。個人種目で金メダルを獲得すれば、東京オリンピックへの出場が内定する。200メートル個人メドレーに出場した大橋は順調に勝ち進み、決勝進出を果たした。ここで勝てば男子の瀬戸大也に続いて、東京オリンピックの舞台に立てる。

 しかし、大橋は泳法違反で失格になってしまった。

 失意の底に堕ちた大橋は、400メートル個人メドレー試合当日の会場に来るまで毎日泣いていたという。

「ずっと前向きになれないところが変わらなきゃって思っていたけどなかなかできなくて、またできないからダメだなっていうものの繰り返しで、自分のことをすごく卑下していたというか、自分に対しての尊敬が全然なくて。朝に(関係者が)私の顔を見て声をかけてくださって、『別に泣いていても良いんじゃない? 自分の頑張りに対して失礼のないように、頑張りを無駄にしないようなレースをしないともったいない』という話をしてくださった。それが自分の心にストンと落ちた。そこから結果が悪くても、自分のために頑張ろうと思ってやった」

 大橋は遅咲きゆえに、積み重ねて来た国際経験が他の選手より少ない。

世界で初めて結果を出したのは2017年。性格もあるのだろうが、過去の良かったときの自分と現在の自分を比較し、良かったときの自分よりも落ちている状態だと自信が持てなくなってしまう。今の自分は過去のどのときよりも練習を積んできているのにもかかわらず、だ。また、ライバルたちの速さを見せつられると「私もやってやる」ではなく、そこに到達できていない自分に落ち込み勝てるのだろうかと悩む。

「頭が迷うと、身体も迷うんです」

 大橋は、そう言う。

この失格時は、まさにそうだった。結果について割り切ることができず、なかなか前に進めなかった。だが、関係者の「そのままでいい」という言葉で気持ちがラクになった。頑張ろうと思うばかりメンタルに無理が生じ、頭と体のバランスを失っていたのだ。

 自然体に戻れた大橋が、再びプールに向かった。

 大会最終日、身体がきついなかで400メートル個人メドレーに挑んだ。世界チャンピオンのカティンカ・ホッス―(ハンガリー)、葉詩文(中国)に敗れて3位だったが、前回大会に続いて2大会連続でメダルを獲得した。東京オリンピック内定のチケットは得られなかったが、200メートル個人メドレーの悔しさを晴らした。

「最終日のきつい400メートル個人メドレーでしっかり粘って取れたのは、来年に向けてもすごく意味のあるものになる。今までのなかでも結構思い出に残る試合になると思う」

 大橋は、東京オリンピックにつながる手応えを得たのだ。

 その後、スペイン、オーストラリアでの合宿を経て、2020年東京オリンピックが開催されるシーズンを迎え、いよいよ日本水泳選手権に臨むことになる。

 前回のリオデジャネイロオリンピックには出場できなかったが、東京は自身初となるオリンピックとなりそうだ。しかも、メダル候補だ。

「(東京オリンピックの舞台は)自分が一番輝ける場所にしたい」

 大橋は、そう語る。

日本水泳選手権では気持ち良く泳いで優勝して東京オリンピック出場の内定を勝ち取り、夏の本舞台は今までで最高の思い出になる試合にしてほしいと思う。

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