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「オリンピックがゴールでない」 バドミントンを楽しむ山口茜のスタイル

2020年5月14日 13:00配信

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 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって、東京オリンピックは1年後に延期となった。各競技の代表選考も止まっている状態だが、バドミントン女子シングルスにおいては代表選手が確実視されている。その一人である山口茜の東京オリンピックに対する想いをひもとく。(文=佐藤俊)

(C)Getty Images

順位よりも大事なこと 「楽しくやると結果がついてくる」 

 女子バドミントンでは世界トップ10に3組が入り、オリンピック代表のしのぎを削っているダブルスが注目を集めている。

 一方、女子シングルスも世界ランキング3位の山口茜と4位の奥原希望が、激しく競り合っている状態だ。東京オリンピックの女子シングルス代表権は2枠あるので、その2人が獲得するのはほぼ確実。この両者はいろいろな意味で対照的で、奥原はオリンピックのメダル獲得に執念を燃やしているのに対して、山口は「オリンピックがゴールでない」と通過点に考えている。

 山口は、2018年4月に初めて世界ランキング1位になった。

仲間からは「おめでとう」と祝されたが、本人はランキングが変わっても何も起きないと淡々としており、逆に1位になったことで単に順位よりも大事なことに気がついたという。

「もう1位とか順位にこだわらなくてもいい。楽しくプレーし、選手として成長し、もっと強くなりたい」

 山口が、そういう考えに至ったのは2017年の経験が大きい。

 このシーズンの8月に開催された世界選手権、ライバルの奥原が優勝し、山口は3回戦で敗退した。山口は、このときに代表選手として勝たないといけないというプレッシャーから、結果を意識しすぎてプレーしてしまった。その結果、ミスが増えて自分のプレーができないまま終わってしまった。

 だが、11月の全日本総合選手権の女子シングルスでは、気持ちを切り替えた。「バドミントンを楽しみたい」という気持ちで試合に出ると、自分のプレーが格段に良くなり、動きもついてきた。トリッキーな自分のプレーにキレが戻り、決勝で大堀彩を2-1で破って優勝した。

「楽しくバドミントンをやると結果がついてくる」

 2017年は、それを確認できた大事なシーズンになった。

 そうして力を発揮し、2018年4月に世界ランキング1位に上り詰めたのだ。

トリッキーなプレースタイルは本能と頭を使い分ける

「バトミントンを楽しむ」

 それは、今も山口のベースになっている。

 もちろん楽しいだけでは世界で勝てない。山口も、まだ世界とは若干の距離があること、ランキング以上に世界で勝つことは難しいと自覚している。ただ、型にハメて強化するというのは、山口にはあまりプラスにはならない。

 山口のプレーは、トリッキーで読めないと言われることが多い。それは本能的なものから生み出されたものだからだ。その上で、「人が想像もつかないようなコース、相手をあざむくようなショットを打ち出すこと」を常に考えてプレーしている。何か強力な武器を持って相手を制するというよりは、本能と頭をうまく使い分けて相手を翻弄し、ポイントを重ねて勝っていく。実際、スマッシュが豪快だとか、ネット際のプレーがすごいとか、山口には「これだ」というものがあまり見当たらない。

 課題があるとすれば、本能で戦うので試合によって波があることぐらいだろう。

「東京は笑って終れるように」 「自分のスタイルを持つ強い選手」へ

 2018年4月に世界ランキング1位になって以降、国内外の大会で優勝から遠ざかっている。連覇を目指した昨年の全日本総合選手権では準決勝で大堀彩に敗れ、今年3月に開催された全英オープンでは準々決勝でリオデジャネイロオリンピック金メダルのカロリナ・マリン(スペイン)にストレートで敗れた。とはいえ、世界ランキング上位にいる山口は、ここで東京オリンピックの代表内定が確実になった。しかし、コロナ禍の影響で選考レースは延期になった。

 だが、山口に焦りはまったくない。

「オリンピックを特別に意識しているわけではないですし、このまま(国際ランキングで)5位内をキープできれば、出られるかなという感じです。オリンピックも大事ですが、私のゴールは世界のどこで試合をしても、あの人のプレーが好きとか、応援したくなると言ってもらえる選手になること。そういう自分のスタイルを持つ強い選手になることなので」

 延期になった東京オリンピックの新たな選考方法は今後改めて発表されるだろうが、選考レースに関わる国際ランキングでトップ5に入っていればケガでもしない限り、山口は東京オリンピックでプレーするだろう。

「リオデジャネイロオリンピックは泣いて終わったので、東京は笑って終れるように」

 山口は、そう言う。

東京オリンピックで、「これが山口のスタイルだ」というものを本大会で打ち出せれば、アスリートとして大きな分岐点になるだろう。もちろん、そこで「楽しむ」ことができれば、内容も結果も伴った大きなギフトが得られるはずだ。

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