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五輪で生まれたドラマを題材にした映画3選 スプリンターが主人公の名作ぞろい

2020年6月10日 13:00配信

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オリンピックでは、これまでに数多くのドラマが生まれている。そういったオリンピックでのドラマを題材にした映画も、これまでに数多く制作されている。今回は、そのオリンピックをテーマにした映画を厳選して紹介。映画と共にオリンピックの名シーンを振り返ってみよう。

(文=福島成人)

(C)Getty Images

予備知識なしに楽しめる 五輪に出場したスプリンターを主人公にした3作品

 ほんのわずかな瞬間の勝負のために青春を捧げる若者たち。これほどドラマティックなことはあるだろうか?

 古今東西スポーツをテーマにした作品が作られてきた。そのなかでも4年に1度開催されるオリンピックは、選手の人生と社会に与える影響の大きさから格好の題材として取り上げられてきた。今回は最も古いオリンピック競技のひとつ陸上、それも短距離走の選手たちが主役となった映画を紹介。陸上は比較的にシンプルな競技なので、作品も予備知識なしで盛り上がれる。

なお、以下に紹介する3作品とも、実在するスプリンターの人生がモデルになっている。

美しい映像と共に当時の階級社会が描かれた名作

『炎のランナー』(1924年パリ大会)

 アメリカとイギリス両方のアカデミー賞を受賞した本作は、オリンピックを描いた映画では最も有名と言える。

 「テン テテテテーテン テン テテテテー」という印象的なメロディをバックに、白い運動着の若者たちが海岸を疾走する姿は映画史上に残る名シーンに挙げられる。2012年のロンドンオリンピックでは、開幕式でローワン・アトキンソン演じるMr.ビーンが、パロディにしたのを覚えている人も多いだろう。その様子はオリンピックの公式チャンネルで今でも見ることができる。

 海岸で走る若者たちは1924年のパリ大会でメダルを目指す陸上短距離のイギリス代表メンバーで、ケンブリッジなどの名門大学の学生。そのような大英帝国が誇るエリートが主流となっている時代において、映画の主人公となった2人は少し事情が異なった。そのひとりエーブラムスもケンブリッジ大学の学生なのだが、ユダヤ系という出自のため周囲から冷たく扱われ将来の展望も暗いという背景があった。そういった状況のなかエーブラムスはオリンピックでの活躍を目指すことになり、イタリア系のプロコーチを雇うがアマチュアリズムに反すると大学当局から非難されることになった。オリンピックで結果を出すことが、イギリス人として認めてもらうための唯一の方法と信じるエーブラムスは譲るわけにはいかなかった。

 もうひとりの主人公リデルはスコットランド出身の牧師で、陸上で結果を残すことが神の御力を証明する術と信じていた。しかし、予選レースが日曜日におこなわれることを知り動揺。休息日である日曜日に出場することは神の意志に逆らうことになるからだった。

 悩みと信念を併せ持つ2人が駆け抜けた栄光のストーリーが描かれている。

 貴族階級の意識が色濃く残ったイギリスにおいて、非主流派の2人を通じて当時の価値観が伝わる名作となっている。

五輪史上初の4冠選手を主人公に人種差別問題を訴求

『栄光のランナー 1936 ベルリン』(1936年ベルリン大会)

 タイトルのとおり『炎のランナー』の舞台となったパリ大会から12年後のベルリン大会を題材にした作品。オリンピック史上初の4つの金メダルを獲得したジェシー・オーエンスが主人公として描かれている。

 アフリカ系アメリカ人オーエンスは、陸上の才能を買われてオハイオ大学に入学してオリンピックを目指していた。だが、家計や女性関係の問題や差別される日々に何度もくじけそうになる。そこに現れたコーチのラリー・シュナイダーによる挫折を糧にしたアドバイスを受け、アメリカ代表の座をつかみ取った。しかし、「ユダヤ人を迫害するナチスドイツの宣伝に加担することは許されない」と大会ボイコットを求める。そういった声から逃げるように、オーエンスはベルリンへ渡った。

 ライバルであるドイツ人選手のスポーツマンシップもあり、オーエンスは100メートル、200メートル、走り幅跳び、4×100メートルリレーで4冠を達成。アーリア人の優位を訴えたいナチスドイツの目論見を挫くことになり、オリンピックはオーエンスに救われることになった。

 英雄として帰国したオーエンスだが、待っていたのは差別。新たな現実に対峙することになってしまった。ここが本作の凄みで、今もなお根強く残るアメリカでの人種差別に向けたアンチテーゼと言える。

武井壮も出演! 五輪選手に起こった謎を追うマサラムービー

『ミルカ』(1956年メルボルン大会、1960年ローマ大会)

 前記2作品ではオリンピックの試合がクライマックスを盛り上げるのに対して、本作はキャリアのピークを迎えた主人公がレース終盤で突然の失速によりメダルを逃すシーンから物語が始まる。本作の観客は、インド人スプリンターであるミルカ・シンの人生をたどりながら、失速の謎を探る旅に出ることになる。

 シーク教徒の家族に見守られ健やかに過ごしていたミルカ少年だったが、ある日その生活が一変。村がインドからパキスタンに編入され、シーク教徒は追い出されることになった。家族と離れ離れになったミルカは盗みなどに手を染めて生計を立てていたが、職を求めて入隊した陸軍で陸上競技と出合う。

 紆余曲折しながらもメルボルンオリンピックに出場したミルカは、調整の失敗によって実力を出せないまま帰国する。その後、1958年に東京で開催されたアジア大会をはじめ多くの大会で優勝を果たし、好調のままパリオリンピックを迎えた。 400メートルの決勝では、誰もがミルカの金メダルを確信していたのだが……。

 過酷な生い立ちを乗り越えてインドを代表するアスリートとなったミルカを描いた作品は、出演する俳優が美男美女のうえ演出はけれん味たっぷり。歌と踊りも充実しており、これぞマサラムービーといった内容。多くの人におすすめできる作品に仕上がっている。武井壮が日本人選手として出演しているほか、駒沢陸上競技場が登場するので日本人にも馴染み深い。

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