dmenuスポーツ

東京五輪2020

コラム

BMX界を背負う中村輪夢 「1番になりたい」と金メダルを狙う

2020年7月8日 14:10配信

記事提供:

日本自転車競技連盟は6月9日に会見を開き、東京オリンピックで新種目に採用されたBMXの代表選手を発表した。2019年のUCIワールドカップで年間総合1位に輝いた中村輪夢も選出され、来年開催のオリンピックでメダルを獲得することが期待される。メダル獲得の可能性が高いBMX とは、どのような競技なのだろうか。そして、金メダルが期待される中村輪夢とは、どんな人物なのだろうか――

(C)Getty Images

(文=佐藤俊)

中村輪夢が代表となったBMXフリースタイルとは、どんな競技?

 東京オリンピックを戦うBMXフリースタイル「パーク」の日本代表に中村輪夢が正式に決定した。まだ弱冠18歳だが、すでに2019年のワールドカップで総合優勝を果たすなど、その実力は日本ではもちろん世界でも高く評価されている。まさに選ばれるべくして選ばれた選手だ。

 BMXフリースタイル「パーク」は、東京オリンピックで新種目として採用された。BMXという競技をよく知らない人は不整地などでのレースを想像するかもしれない。だが、フリースタイルはスピードよりもスタイルを競い合うスポーツ。アメリカではスケートボードとともに、「Xゲームズ」として若い世代に圧倒的な人気を誇っている。

 競技は自転車の「フィギュア」というとわかりやすいだろう。幅15メートル、奥行き25メートルを最小限に、どちらも60メートルを超えないフィールドの中で20インチの車輪の自転車に乗り、1分間に決められたコースでジャンプや回転などのトリックを行って競い合う。5人の審判が技の難易度や完成度、構成や独創性、ジャンプの高さなどを99点満点で採点して順位が決まる。難易度の高い技を披露しても着地時に転んでしまうと20点が減点されるなど、フィギュア同様に細かく規定されている。そのため、全体の完成度の高さが求められるのはもちろん、難易度の高い技をミスなくどれだけ多くメイクできるかが、勝敗を左右することになる。

 東京オリンピックでは男女各9名ずつの選手が決勝での滑走順番を決めるために、まず1分間のトリックを2ラウンド行う。スコアが高い選手ほど最後にスタートとなり、前の選手や一番高いスコアを出した選手の構成を見極め、修正して演技ができるので非常に有利になる。ファイナルでは1分間の演技を2ラウンドこなし、どちらかのベストスコアで順位が決定する。東京オリンピックの競技会場は有明アーバンスポーツパーク。BMXが初めて多くの人の目に触れることになり、注目度を高め競技普及を行う最大のチャンスになるだろう。

BMXの申し子中村輪夢 金メダル最右翼の彼が五輪後の未来を描く

 BMX初の金メダリスト、そして日本のBMX界を背負って東京オリンピックの代表に選出された中村は、父親も元BMXの選手だ。3歳からBMXを始めた中村にも、その血はしっかりと受け継がれている。5歳で国内大会に出場するようになってからは、その世代では敵なし。昨年はワールドカップで総合優勝を果たし、金メダルの最右翼と言われている。

 そのために環境も整えられてきた。1月には京都府宇治市内に中村専用の練習場「ウイングパーク1st」が完成。所属先であるウイングアーク1stが海外での施設と同サイズにこだわり、約4億円をかけて建設した。ジャンプ台などの18のセクションを配置しており、9台のカメラで動きを撮影する。ヘルメットに装着されたセンサーでスピードやジャンプの高さなどを計測し動作をデータ化することで、パフォーマンスの強化につなげられるようになっている。「動きが数値化されるのでわかりやすい。ジャンプの高さやスピードを磨き、技をプラスしていきたい。世界一になれる可能性が広がった」と中村が語るとおり世界でも屈指の練習場になり、新型コロナウイルス感染拡大によって緊急事態宣言が発動された時もここで練習に励んでいた。

 中村の得意技は、「360ダブルバースピン・タックノーハンド・トゥ・バースピン」。自転車ごと大きく1回転しながら、空中でハンドルを2回転する。そこからハンドルを引き付けて両手を離し、着地の寸前にさらにハンドルを1回転する大技だ。イメージが難しいが、これは世界でも数人しかできない高難度の大技になる。また、「高いジャンプ」も中村の持ち味だ。ひざをうまく生かして跳ぶ瞬間にかがみ、跳ぶと同時にひざと体を伸ばす。そして、ピークに行ってバンクへ戻ったときに、またかがむことでスピードがつき次への高いジャンプが可能になる。中村のジャンプは高さだけではなく、ダイナミックで大きく見えるが、それは一連の動作が非常にスムーズだからだ。隙のない高い精度を伴うトリックの連続が、中村を世界のトップに押し上げている。

 ただ、東京オリンピックから新たに加わるBMXフリースタイルでは、初代の金メダリストとなるべく世界のトップライダーたちの鼻息も荒い。BMXフリースタイル・パークの2019年世界選手権チャンピオンであるブランドン・ルーポズ(オーストラリア)は、中村同様に高さのある空中トリックが持ち味。現在、UCIのフリースタイルのランキングで1位のローガン・マーティン(オーストラリア)、同2位のジャスティン・ドゥーウェル(アメリカ)も20歳と若く、多彩なトリックを持つも強敵だ。

 ただ本番は1年先になったので、中村が高さとトリックの精度に磨きをかけてさらなる成長を遂げれば、大声援をバックに戦えるホームの利がある東京オリンピックでの金メダルは十分に獲得可能だ。

 輪夢の名前は自転車のホイールのリムがベースとなり、五輪の「輪」に「夢」を繋げて生まれた。その名前の由来どおり、輪夢は自転車の申し子であり、五輪で夢をかなえるために生まれてきたとも言える。その運命を背負った中村の東京オリンピックでの目標は、「1番になりたい」と自ら宣言した金メダルだ。そして、「まだまだBMXは知られていないスポーツなので、東京オリンピックをきっかけに知ってもらえたらうれしい」と語るようにBMXの競技普及、知名度のアップも大きな仕事になる。

 2021年、中村輪夢がそのすべてのミッションを果たすことだろう。

 

コラム一覧に戻る

トピックス

競技一覧
トップへ戻る