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阿部一二三と丸山城志郎の代表権争いは12月に決着 柔道の残された1枠を勝ち取るのは?

2020年7月15日 16:45配信

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柔道の代表選手は男子66キロ級のみが決まっていない。本来であれば4月に決まる予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大が影響して未定のまま時は流れていた。全日本柔道連盟は7月2日にその選考についての方針を発表。12月に開催予定の大会結果をもって、阿部一二三と丸山城志郎のどちらかに代表権が与えられることになった。果たして、どちらが東京オリンピックに出場することになるのだろうか――

(文=佐藤俊)

(C)Getty Images

対戦成績は丸山の4勝3敗 直近の大会では阿部が久々に勝利

 東京オリンピックの柔道において、男女14階級の内で唯一代表選手に決まっていなかった男子66キロ級が、12月11~13日に開催されるグランドスラム東京で決定することがほぼ決まった。これまでラスト1席を懸けてマッチレースを続けてきた阿部一二三(日体大)と丸山城志郎(ミキハウス)が、東京オリンピック出場権を争って激突することになる。

 阿部か丸山か、どちらが東京オリンピックの最後のイスを獲得するのか。

 両者の直接的な対戦成績は、丸山の4勝3敗である。丸山は2018年秋のグランドスラム大阪大会から阿部に3連勝中だった。昨年11月のグランドスラム大阪大会に優勝すれば、オリンピック代表内定となる可能性が高かった。だが、阿部と対峙した決勝で丸山は得意の内股に仕掛けたが、相手に支え釣り込み足で合わされ技ありを奪われて敗れた。丸山は「まだまだ、弱い」と、あと一歩のところで東京オリンピックの内定を決めることができなかった悔しさをかみ締めた。

 一方、阿部にとっては絶対に負けられない試合だった。もし丸山に敗れた場合、東京オリンピック出場への道が断たれることになる。ギリギリの土壇場に追い込まれたが、冷静に、かつ気迫を前面に出して戦った。その結果、丸山との試合は延長戦にまでもつれる大接戦になったが、「一本を取りにいく柔道」に原点回帰して見事に結果を出した。東京オリンピックに向けてのサバイバルレースになんとか踏みとどまり、なんとか次に可能性をつなげたのだ。そして、今年の2月グランドスラム・デュッセルドルフ大会の男子66キロ級は丸山がひざの故障で欠場。阿部は「優勝が必須条件」と言われるなか、決勝に進出。大内刈りからつなぎ気合の声を挙げながらの大腰で一本勝ちし、阿部らしい豪快な柔道で締めくくった。

「優勝できたことが素直にうれしい。意味のある優勝だと思うが、ここからがスタート。すべて勝って自分の夢を達成したい」

 阿部は、そう言って表情を引き締めた。

万全な阿部がやや優位 負傷していた丸山は試合勘が不安

 12月の最終決戦に向け、流れで言えば阿部がやや優位かもしれない。昨年11月、丸山に勝ってから自信を回復し、2月のデュッセルドルフ大会で勝利を義務づけられながらもしっかりと勝った。精神的にはかなりタフになっているし、気持ち的にも乗っている。2月のデュッセルドルフで左親指を脱臼するケガをしたが、すでに完治している。

 本来であれば、予定どおり4月の全日本選抜体重別選手権で決めたかったろうが、十分に調整できる時間的な猶予をもらった。阿部一二三の妹である阿部詩は、すでに女子52キロ級の代表内定を勝ち取った。兄については、「信じて待つだけですね。お兄ちゃんなら決めてくれると思います」と、兄弟での東京オリンピック出場を実現するためにエールを送っている。今後、故障さえしなければ心技体ともに万全の状態で丸山との決戦に臨めるだろう。

 丸山は、4月の代表選考が予定どおりに行われていた場合、かなり追い込まれたなかでの戦いになっていた。昨年11月の時点で東京五輪出場の権利を自分の手でつかむチャンスを逃し、阿部との対戦で久しぶりに敗れた精神的なショックがあった。また、2月上旬には左膝内側側副靱帯(じんたい)を損傷し、同月下旬のGSデュッセルドルフ大会を欠場した。昨年11月以来、5カ月近く実戦から離れ試合勘がなかった状態で代表決定の試合に挑まなければならなかったからだ。それゆえコロナ禍の影響による最終選考の延期は、丸山個人にとっては吉に転んだように見える。

 すでに気持ち的にも立ち直り、ケガはほぼ完治した。ただ、もちろん不安もある。10月31日の講道杯に出場するならこの試合が実戦復帰になるだが、丸1年間も試合を戦っていないなかでの参戦になる。果たして、試合勘をどこまで取り戻せるか。グランドスラム東京に向けて、まずこの大会が最初の関門になる。

 二人の戦いに限って言えば、力が拮抗している。初対戦以外はすべて延長戦までもつれており、展開が読みづらい。ふたりとも海外勢には強く、東京グランドスラムで勝ち進めばどこかで対戦することは間違いない。男子代表の井上康生監督は、「直接対決となれば、他の選手と対戦するとき以上の気持ちを持って戦うと思う。はっきり言って、(勝負は)わからない」と、大一番の接戦を予想している。両者が激突する前に敗れる可能性はゼロではないが、阿部、丸山ともに自分の柔道人生を懸けた大会で直接対決にたどり着けずに終わるというのはさすがに想像しにくい。

 阿部か丸山か――

 どちらにせよ、一本で勝者が決まる柔道の魅力を存分に見せた最終決着を期待したい。

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