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東京五輪2020

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本格的に練習を再開した池江璃花子に東京五輪出場の可能性はないのか?

2020年7月28日 11:05配信

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日本競泳界のエースとして君臨していた池江璃花子は、2019年2月に白血病を公表して療養に入った。それから1年半ほどの時を経て、回復した彼女が本格的に練習を再開し再始動することを宣言。4年後のパリ大会を目指すと語っていたが、延期になった東京オリンピックには間に合わないのだろうか――

(文=佐藤俊)

(C)Getty Images

かつての日本のエースは精神的市中に成り得る存在

 池江璃花子が本格的に動き始めた。

 6月、新たに西崎勇をコーチとする新体制でのスタートを発表したが、来年の東京オリンピックではなく、2024年に開催のパリ大会で表彰台を目指すことにしたという。

 池江は2019年2月に白血病を発表して長い療養生活に入り、同年12月に退院を報告した。2020年3月には久しぶりにプールへ入り、今では週4回のプール練習と週1回のウエイトレーニングをこなし、徐々に自分の体をスイマーに戻している最中だ。彼女は2018年のアジア大会ではバタフライなどで6冠、同年のパンパシフィック選手権では100mバタフライで金メダルを獲得しており、これから4年をかけてそのとき以上の自分を取り戻すことになる。

 だが、本当に東京オリンピックには間に合わないのだろうか――

 池江は普通の選手ではない。病気前は東京オリンピックのメダル候補であり、日本競泳陣のエースだった。言ってみれば、全盛期の北島康介のような存在だ。水泳は個人種目だが、全体を見れば団体戦のようなムードが流れている。池江がとんでもない泳ぎでメダルを獲得すれば、その勢いが伝播して他の選手が良いムードで戦える。

 自国開催でのメダル獲得というプレッシャーに押しつぶされ、力を発揮できない選手が出てくるかもしれない。そうして状況が悪くなったときに、流れを変えられる選手には大きな地力が必要になる。そして、池江は暗く垂れこめた闇を切り払う力を持っている。それには競技力だけではなく、パーソナルな魅力も必要になるが、池江は19歳と若いながらも落ち着いて他選手の信頼も厚い。精神的な支柱にも成り得る存在なのである。

東京五輪をあきらめるのはまだ早い

 これまで東京オリンピックで「池江不在やむなし」としたのは、病気療養のためで今年開催予定だった本番に間に合わないという判断だったからだ。だが、オリンピックは1年後に延期になった。その間に池江はすでに始動しており、練習時間が増えている。もちろん全盛期に比べるとまだまだ先は遠いと言わざるを得ないが、現在は感覚的に中1、2ぐらいの自分のレベルまで来ているという。

 今は10月の日本学生選手権への出場を目標している。この1年間で池江がどのくらいまで戻してくるのかわからないが、中学のときにはすでに日本選手権に出場して50mバタフライで優勝するなど、日本のトップスイマーに仲間入りしていた怪物である。そのことから考えると、日本学生選手権で結果を出す可能性は十分にある。

 池江がそのレベルまで復活すれば、日本の競泳陣には大きな風が吹く。当然だが東京オリンピック代表選手の競争が激化する。現在、日本の水泳陣で東京オリンピック出場内定を得たのは、男子200m個人メドレー、男子400m個人メドレーで瀬戸大也のみ。池江が日本学生選手権でどの種目にエントリーするのかは決まっていないが、細かく動きが複雑なバタフライではなく日本記録を保持している50m自由形、100m自由形、200m自由形に専念すれば、ある程度は戦えるところまで上げてくるかもしれない。結果を出せば、東京オリンピックの代表選考会となる日本選手権へとつながり、あきらめていた自国大会への道が開けるかもしれない。

 もっとも、池江が療養中だった昨年の世界水泳200m自由形で8位入賞した白井璃緒ら、他の選手たちは練習を重ねて力を上げている。いくら怪物と言われた池江でも1年以上のブランクを簡単には埋められないだろうし、勝つのは非常に難しいだろう。だが、レースは何が起こるかわからない。日本中から注目されるレースになり、他選手は池江に負けるわけにはいかないとプレッシャーを感じて力を発揮できなくなるかもしれない。池江の復活が他選手に与える心理的な影響は、決して小さくはない。だが、戻ってくれば、日本競泳陣にとってこれほど大きな力になる選手はいないのだ。

 完全復活に向けてプールで泳ぐことを楽しんでいる池江が、日本学生選手権でどういうレースを見せるのか――

 池江ならファンや日本競泳陣の度肝を抜くレースで、復活をアピールしても何ら不思議はない。東京オリンピックに向けて、多くが彼女の復活を期待している。一時は、「池江のために」という言葉が日本競泳陣から多く聞こえてきた。だが、延期になった東京オリンピックに向けて、もしかすると「池江とともに」になる可能性も出てくる。

 池江自身はパリ大会を目指すと宣言した。しかし、東京オリンピックをあきらめるのはまだ早い。

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