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五輪と人権問題。大坂なおみ選手のボイコット活動にみる“タブー”解禁への道

2020年9月26日 13:00配信

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大坂なおみ選手が、BLM(=Black Lives Matter)と呼ばれる、黒人の人権問題のヒートアップの中で、大会の途中棄権を宣言し、世間に議論を巻き起こしたのは記憶に新しい。日本人にはあまり馴染みのない問題だが、現在特に北米のスポーツ界では切っても切れない問題である、人権問題について、五輪との関係性を探っていく。

(C)Getty Images

人権問題とスポーツ

まず、五輪だけにフォーカスせず、直近のスポーツと人権問題の関係について迫っていく。冒頭述べた、大坂なおみ選手の“途中棄権”という行為は、他のスポーツとも連携したものであった。現在、「バブル」と言われる、ディズニーワールド(フロリダ州オーランド)で、隔離生活を行いながらも、シーズン再開を果たしているNBAでも、大坂なおみ選手が棄権した同日に全チームのボイコットが生じた。シーズンの佳境でもあり、日程的にも来季を見越すと余裕がない状況の中で、一時期NBAのシーズン中断も噂されるほどの事態にまで発生した。結果的には大坂なおみ選手も大会主催者の計らいもあり、棄権を撤回。そしてNBAもボイコットは継続せず、シーズン再開が果たされた。しかし、こと北米では、人権問題はもはやスポーツと切っても切れない関係にあると言える。NBAでは黒人選手が大多数を占めており、非常に人権問題に対する意識は高い。コロナ禍でもBLMのボイコット活動に、NBAのトップ選手であり、年俸も約4000万ドルに達する、ラッセル・ウェストブルック(ヒューストン・ロケッツ)などが参加していた。

五輪と人権問題

このように、スポーツと人権問題の関係性が深くなっている一方で、スポーツの祭典である五輪では、人権問題は政治的パフォーマンスとみなされ、ある種の“禁忌”とされている部分がある。有名な例では「ブラックパワー・サリュート(黒人の力を示威する敬礼)」というものがある。1968年メキシコシティー大会、陸上男子200mの決勝で1位と3位に黒人選手(トミー・スミスとジョン・カーロス、ともにアメリカ)、2位に白人選手(ピーター・ノーマン、オーストラリア)が輝いた。大会直前に、キング牧師が暗殺されたこともあり、二人の黒人選手はボイコットも考えたそうだが、彼らは表彰台の上でパフォーマンスをすることで、世界に人権問題をアピールすることを決めた。そして間に挟まれた白人選手も黒人選手二人と同様に人権問題を訴えるワッペンを胸につけ、表彰台に登ることを決めた。その結果、オーストラリア初の陸上男子短距離のメダルを獲得した白人選手、ピーター・ノーマンは国民から迎え入れられるどころか、非難の対象になり、脅迫状まで自宅に届くようになったという。

五輪候補選手が「1年間の保護観察処分」に

直近でも、五輪と人権問題の部分で大きな話題になった出来事があった。陸上女子ハンマー投げで東京五輪を目指す米代表候補グウェン・ベリー選手がニューヨーク・タイムズ紙電子版にて、国際オリンピック委員会(IOC)に対し、五輪での人種的な宣伝活動などを禁じる憲章を「撤廃する必要がある」と述べ、人種差別への抗議を認めるよう訴える、ビデオメッセージを掲載した。そのベリー選手は、昨年8月にペルーで開かれたパンアメリカン大会にて、国歌演奏中に右拳を突き上げた。先ほどのブラックパワー・サリュート同様、黒人に対する人種差別に抗議する意味があるが、米オリンピック・パラリンピック委員会から注意を受け「12カ月間の保護観察処分」を通告された。しかし、大坂なおみ選手の活動や冒頭紹介したNBAのボイコット同様、五輪での人権問題の宣伝活動を全て禁忌とするのかどうかは、再度議論が必要だと考えられる。近代五輪が始まって120年が経ち、コロナの影響もあって、五輪のあり方が再度問われている今こそ、様々な改革が必要になってくるだろう。

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