東京2020

アスリートインタビュー

<インタビュー>柳田将洋が語るバレー全日本男子の現在地 目指す「速いバレー」の完成度は?

2018年8月22日 16:27配信

©松永光希

オリンピック過去2大会の出場を逃しているバレーボール全日本男子。東京2020オリンピックに向けて、かつて全日本でもエースとして活躍した中垣内祐一監督が就任したチームには、世界でも通用する選手が名を連ねています。そのチームでキャプテンを務めるのが、柳田将洋選手。2013年から全日本に名を連ね、海外でプロとして活躍するキャプテンに、全日本男子バレーボールチームの現在を聞いた。(取材・文=中西美雁)

日本が目指す「速いバレー」

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――中垣内監督・ブランコーチ体制2年目を迎えました。柳田選手も全日本の主将となって4カ月あまりが経ちます。先日の練習でも、積極的に声をかけている場面が見られました。4月に合流したときと比べて、ご自分はどう立ち位置が変わりましたか?

「大きく変わったところはありません。もっと言うと、キャプテンになったからといって去年から大きく変えたところはないです。でも、やはりキャプテンになったことで自分から積極的にコミュニケーションをとろうというのは心がけていますね」

――ネーションズリーグを経験されて、エースの石川祐希選手抜きでAチーム、Bチームとほぼ交代で戦って、競争意識といったものはありましたか?

「そうですね。Aチーム、Bチームというよりは、3連戦という過酷なスケジュールの中で、同じ選手で3連戦を戦い抜くことは僕らも『ないな』と考えていました。そういう意味では全員が『どの試合に出るのかな』ということを、かなり気にしていたのかなと思います。僕自身もやはり3連戦の初戦に出る選手が、チームとしては主体になってくるんじゃないかなと考えていたので、なるべく1戦目から力を出せるように準備していました」

――そういう中で主将としてどのようにチームをまとめようとしましたか?

「3連戦という中で勝ったり負けたりしますから、そのモチベーションの維持は心がけています。スタッフの方もすごくサポートしてくれるところは昨年と変わらないのですが、今年はなるべく自分から周りをサポートしたいという気持ちでいるようにしました。それが結果としてどういう効果が表れたかは、まだ探り探りなのでわからないところなんですけどね。ハードスケジュールは世界選手権でも予想できると思うので、そういう時になるべくチームが同じ方向を向いてやっていけるように心がけています」

――今年は「速いバレー」に取り組んでいるとのことでしたが、ネーションズリーグ、日韓戦、どれくらいできていたのでしょうか。

「達成度という意味ではまだまだ課題があります。速いバレーでしっかりとブロックを見て打ち分けられるかというと、まだそこまでは高いレベルにはない。世界バレーまで残り少ない期間ですけど、速いバレーに関しては、しっかりもっと技術的に高めていければと思っています」

――速いバレーというのはブランコーチが提唱しているのですか?

「スタッフの方々が話し合って、世界でもう一つ上に行くために決めた方針ですね。速いバレーを展開しているチームは多いですし、それによって有効な数字を出してくるチームもあります。僕ら日本も、高さとパワーのチームではないことは確かなので、それ以外のところで勝負するための一つの武器として持つ必要があると思っています」

――一般的な議論として、「十分に助走をとってしっかり高さを出して打ったほうがいい」という意見もありますね。一方、「ブロックが完成する前に早く打ってしまうのがいい」という考え方もある。柳田選手はどちらに手応えを感じていますか。

「僕は『ケースバイケース』と考えています。もちろん良いパスのときは、ある程度速い展開をして向こうの大きなブロックが揃ってくる前に打っていくのが有効だと思います。逆にトスが割れたりした時に無理に速いバレーを展開するのではなくて、少し山のあるトスを呼んで、しっかりブロックを見て打つ状況もあるでしょう。それはチームの中で少しずつ、どの状況でどういうトスをもらうかというのを話している最中でもあります。僕自身も、浮いているトスをしっかり叩くほうが良いときもあると思うので、そこはセッターとチームと話し合いながら決めているのが今の状況です」

――ネーションズリーグの試合でサーブを打つ時に、同じフォームなのに、打つ瞬間に横に回転をかけたり、いろいろ変化をつけているように見えました。

「僕自身がレセプションする立場で、同じフォームで違うサーブが飛んでくるのが一番怖いな、いやだなと感じます。それは自分のサーブを受けるレシーバーも同じことだと思うので、できるだけそういうことを考えて打つようにしています。あとは、前に打つのか後ろに打つのかというところも、同じフォームで打てるように心がけています。そういうときはビデオを見返したり、相手の反応を見て、今のフォームがどれくらい警戒されていたのかを練習中に観察して、できるだけフォームに差が出ないようにしています」

ネーションズリーグで感じたギャップ

©松永光希

――イタリアや、一軍のイランなどに久しぶりに勝てたことについてはいかがですか。

「ああいう接戦の状況で自分たちがアグレッシブにいけたのは、やはりしっかりサイドアウトを切って、自信を持ってサーブで攻めていけたからだと思います。日本のストロングポイントは、そこから始まるのかなと思います。逆にそういったところが展開できていないと、最後の3連戦のように、厳しい状況になってしまうのではないかと思います。先程おっしゃられた2戦に関しては、その2点がしっかりできていました。そこは自信を持って出していかなければならない部分ですね」

――アメリカや中国、セルビアなどに勝てず、結局ネーションズリーグは12位に終わりましたが、絶対勝てないという感触はなかったと思うのですが。

「自分たちが展開したいバレーと実際にやっていたバレーにギャップがありました。サイドアウトがなかなか切れなくなってしまって、相手のトランジション(スパイクレシーブからの攻撃)の決定率が高くなってしまった。相手にプレッシャーを感じさせないバレーをしてしまったことが、僕たちが相手を上回れなかった要因だったと思います。12位という結果に関しても、まだまだ自分たちが伸びなきゃいけないという意味では、これからだなという数字ですし、先程の2戦の勝利はよかったけれども、課題が多い結果になりました」

――ネーションズリーグを戦って注目した選手はいますか。以前はジバ選手(ブラジル)とクビアク選手(ポーランド)を尊敬しているとおっしゃっていましたね。

「その二人に対する尊敬は変わりませんが、ネーションズリーグを通して、ポーランドの若い選手がどんどん出てきたなというイメージがあります。クビアク選手を見て育ってきたんだなという印象を受けました。それがすごいとかではなく、日本もそういうステップをつくっていかないといけないと感じました。僕がA代表でプレーしている限りは、自分もそう見られないといけないのですが、まだそのレベルには自分が達していません」

――石川祐希選手が長らく不在の中で、福澤達哉選手の存在が大きくなってきました。柳田選手の全日本デビュー年は、福澤選手は怪我をして外れて、翌年は登録もされず、OQT(オリンピックの世界最終予選)では出番の少ない控えでした。同じポジションに福澤選手が存在感を出してきたことについてはどう感じていますか。

「一緒にコートに立っている時にはすごく助けてもらっています。本来は僕がキャプテンとしてやらないといけないことを、いろいろなところで福澤さんにカバーしてもらっていることに感謝しています。福澤さんもいろいろな経験をされているし、そこから学ぶことはたくさんあります。長い時間一緒にプレーしているのは、とても貴重な機会ですね」

――日韓戦では、久しぶりに石川選手が入りました。チームはどう変わりましたか?

「彼が合流して新しい要素としてチームに入ってくれたんですけど、もともと彼のポテンシャルはすごいものがあるので、あらためてそれを見ました。石川選手のカラーがチームに新しい役割をもたらしている。そこはすごくキャプテンとして助かっています」

<プロフィール>

やなぎだ まさひろ

1992年7月6日生まれ。186センチ79キロ。東京都江戸川区出身。東洋高で全国高等学校バレーボール選抜優勝大会を制覇。慶応大に進学し、在学中の2013年に全日本に初選出される。大学卒業後、Vプレミアリーグのサントリーサンバーズに入団。2015/16シーズンには全試合に出場し、最優秀新人賞を受賞。2017/18シーズンにはドイツ・ブンデスリーガ1部のTVインガーソル・ビュールへ移籍。18年4月に全日本のキャプテンに就任。2018/19シーズンに向けて、ポーランドのCuprum Lubinと契約を結んだ。

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