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東京五輪2020

アスリートインタビュー

リオでの悔しさをバネに、合谷和弘のメダルを賭けた東京への思い

2019年8月15日 13:00配信

©竹中玲央奈

2016年のリオオリンピックから正式種目となった7人制ラグビー(セブンズ)。前後半7分という短い時間で行われるが、ピッチの広さは15人制と変わらないため、スピードと豊富な運動量が求められる競技だ。

世界ランキング15位の日本は、リオでの開幕戦で優勝候補のニュージーランドを破り、4位入賞という結果を残した。多くのラグビーファンがその結果に歓喜したが、日本代表として出場した合谷和弘選手は、メダルを逃した悔しさでいっぱいだったという。

リオオリンピックでの悔しさをバネに、東京オリンピックでのメダル獲得を目指す合谷選手にリオでの経験、セブンズという競技について話を聞いた。

(取材・文=島田佳代子、写真=竹中玲央奈)

15人制とセブンズは別のスポーツ?!

――合谷選手は小学生の時にラグビーを始め、高校2年生のときに、高校日本代表に選ばれていますが、そのときのことを覚えていますか?

「高校日本代表をひとつの目標にやっていたので嬉しいという気持ちと、またここから頑張って、いつかフル代表に入りたいと思いました」

――そのフル代表という夢は、セブンズ日本代表という形で叶うことになりましたが、セブンズとの出会いを教えてください。

「実はラグビーにセブンズというものがあることを知りませんでした。大学生になりセブンズの大会“Y.C.&A.C.SEVENS”に出場するようになってその存在を知りました。その大会で所属していた流通経済大学が大会3連覇をしたのですが、そこにセブンズ日本代表ヘッドコーチ(HC)の瀬川智広さんが観に来て下さっていて。声をかけられて、2013年に『セブンズシニアアカデミー』(日本代表選手やリオオリンピックへ繋がる将来有望な選手の発掘や育成、強化を目的とする)へ参加することになりました」

――15人制とセブンズは「テニスと卓球ぐらい違う」と聞いたことがありますが、大袈裟でしょうか?

「その通り、それくらい違うと思います。別のスポーツですね。中でも一番違うのはスピード。ピッチの広さは15人制と同じなので、スペースが広くなります。15人制だとパワープレーもありますが、セブンズはスピードが命です。相手もとにかく速いので、タックルも15人制と同じ感覚で行くと間に合いません。気持ち早めに飛びついています。タックルに行ってもすぐに立ち上がらなければいけないので、常に走っているような感じです。試合自体は短くて、前半と後半で7分ずつしかないのですが、やっているとすごく長く感じます」

©竹中玲央奈

――セブンズは2016年のリオオリンピックから正式種目に採用されましたが、いつ頃からオリンピックを意識しましたか?

「初めて日本代表の候補合宿に呼んでもらったときは、周りに全く付いていくことができずレベルの差を感じました最初の頃はオリンピックに出てやるという気持ちはなかったです。瀬川さんは選手をランク付けします。同じポジションの中で“今はこの位置にいるよ”と。最初の頃は“このままじゃ、もう選ばないぞ”と言われたこともありました。その順位がどんどん上がっていくにつれて自信も持てて、ワールドシリーズ(※世界を回るサーキット方式で開催され、各大会のポイントの総計でシリーズチャンピオンを決定)で何大会か回って慣れてきたときに、『リオオリンピックに出たいな』と思うようになりました」

初のオリンピック。開幕戦で強豪ニュージーランドに大金星

――日本代表としてリオオリンピックに出場されました。それまでもワールドシリーズなど世界の舞台で戦っていましたが、オリンピックは違いましたか?

「いつも緊張はしますがオリンピックはそれまでとは違う緊張感でした。開幕戦のニュージーランド(NZ)戦では、心臓がバクバクしている状態で試合に入ってしまったので、内心、これでミスをしてしまったらどうしようと思っていました。僕以外の選手たちがファーストプレーで活躍してくれて、そこで自分のプレーも取り戻すことができましたね」

――日本はその開幕戦で優勝候補のNZを14-12で破り、世界のラグビーファンを驚かせましたが、NZ戦後のチーム内の雰囲気はどういったものでしたか?

「試合後のロッカールームではみんなすごく喜んでいて、『このまま行くぞ!』といった感じでしたが、喜びすぎて瀬川さんにも、『次もあるから集中しろ、目標はメダルだから』と注意されました。実際に次のイギリス戦は最初に続けてトライを決められて気が緩んでしまって。後半はガラっと自分たちのペースになったのですが、負けてしまいました。前半から同じようにプレーできたらと思いましたね」

――15人制だと次の試合まで数日は空きますが、1日に2,3試合行うセブンズでは、数時間しかありません。気持ちの切替えは難しいですか?

「セブンズを始めた頃はできませんでしたが、年間に大会がいくつもあるワールドシリーズを回っているうちに、気持ちの切り替えができるようになりました。セブンズは試合が終わった後は、リカバリーが優先でミーティングは次の試合前に行います。イギリス戦は負けてしまいましたが、みんな初戦のNZ戦で手応えを感じたので、絶対にできるという気持ちでミーティングを行い、2日目に臨みました」

――大会2日目、ケニアとフランスに勝ちましたが、準決勝では世界1位のフィジーに敗れ、3位決定戦でも南アフリカに勝つことはできず、残念ながらメダルには届きませんでした。でも、NZを破り、4位入賞という結果に、多くのラグビーファンが感動し、成田空港でも多くのファンが出迎えましたが、その光景をどう感じましたか?

「友達からメールもいっぱい来ましたし、帰国した成田では大勢のラグビーファンの姿に、こんなに大勢の人が応援してくれていたんだと実感して嬉しかったですね。ただその反面、あそこまで行ったら4位以下は一緒だなと思っていたので、メダルを持ち帰ることができなくて、悔しい部分もありました」

©竹中玲央奈

15人制とセブンズの両立に挑戦

――リオから帰国してすぐ大学卒業後に加入したクボタスピアーズの一員として、ラグビートップリーグ(TL)を初めて経験されました。手応えはどうでしたか?

「リオから帰国して2週間でTLが開幕しました。ずっとセブンズの方へ行っていたので、まさか開幕戦から出場できるなんて思っていませんでした。でも、フラン・ルディケHCから『試合に出すから』と言ってもらえました。セブンズをずっとやっていたので、80分間は走れるかなと。実際に試合に出てみて、全然通用しないと感じたのが体のぶつかり合いのところでした。セブンズはスペースがあるので、スピードで相手を抜くことができますが、15人制の場合は、かわしてもどんどん敵が出てくるじゃないですか。開幕戦の相手は東芝ブレイブルーパスでしたが、リーチマイケル選手のカバーがすごく速くて、一発で倒されてしまいました。そこから体をどうにかしなければと思い、ウエイトトレーニングをして、食事をたくさん摂るようにしましたね」

――海外の強豪国ではセブンズ専門の選手がいます。リオオリンピック後、日本でも7人制に専念する選手がいる中で合谷選手は両立を選びましたが、実際にやってみてどうですか?

「クボタでの試合もあるので、この2年間はTLがオフの期間にだけセブンズへ行っていました。ただ、セブンズに合流しても試合に出してもらうことはできた一方で、全然走ることもできないと。タックルの仕方に関してなど、15人制での経験が活かされる部分もありますが、体作りは両者で全く異なるので、そこの難しさも感じていました。体重も15人制の時は78~79Kgでキープしていますが、セブンズでは76Kgがベスト。そういうこともあって、オリンピックまではセブンズに専念させてもらうことになりました。この決断を支持して、応援してくれるチームには感謝です」

©竹中玲央奈

メダルを獲得して、セブンズのことを知ってもらいたい

――残念ながらワールドシリーズは下位グループへの降格が決定してしまいました。降格したことでオリンピックまでの1年間、世界の強豪と戦う機会が減ってしまうことを、どう感じていますか?

「リオオリンピックのときも状況は同じでした。でも、オリンピックを想定した合宿を行うなどの対策はできたので、今回もそういったことをしていけば大丈夫だと思います。(現HCの)岩渕健輔さん(リオ以前からセブンズに携わり、日本ラグビーフットボール協会専任理事と兼務)もすごく厳しいですが、本当に必要なことだけを短い時間でどれだけやれるか、何をやるか明確にしてから練習に入るので、選手にとっても分かりやすい。その点、問題は無いかなと思います」

――東京オリンピックまであと1年余りになりました。2度目のオリンピックということで、落ち着いて臨むことができると思いますか?

「日本開催ということで、余計に緊張してしまうかもしれないです(笑)日本でのオリンピックは一生に1回だと思うので、必ずメダルを獲ります。リオであれだけ戦うことができていたので、戦えるチームだし、メダルは獲れると思います。15人制はW杯もあって知名度は上がっていますが、オリンピックは色々な競技があるのでセブンズの知名度は高くないかなと。ただ、東京オリンピックでメダルを獲ることで、セブンズのことは広く知ってもらえると思います。ライバルとなる候補選手も大勢いるので、まずはそこで勝ち上がっていかなければいけませんが…」

――東京オリンピックで初めてセブンズを観る方へのアドバイスをお願いします。

「おそらく皆さん、今年はW杯を観るかと思うので15人制とのスピードの違いを観て欲しいです。セブンズは人数が少ない分、スペースが広くて、基本的にステップで相手をかわして抜いていくステッパーが多いので、ラグビーが分からない方でも観ていて楽しいと思います」

――ご自身のプレーはどこを見て欲しいですか?

「一番はステップですね。ディフェンスの間をピッチの真ん中からステップで抜いて、外側にチャンスを作るというのを常に心掛けています。ポジションにもよりますが、僕の場合はキックの精度や広いスペースの中でのディフェンス。それに、僕はラグビー選手としては大きくありませんが、こんなに小さくても大きな相手にタックルして倒すことができるんだよというところを見て欲しいです。内心怖いと思っていますけど(笑)チームプレーが好きなので、ひとつでも多くチームのためにプレーで貢献出来たらと思っています」

©竹中玲央奈

<了>

[PROFILE]

合谷和弘(ごうや・かずひろ)

1993年、福岡県出身。クボタスピアーズ所属。小学3年生のときにラグビーを始めた。高校、大学でもスピードと瞬発力を生かした切れ味鋭いプレーで活躍し、各年齢別日本代表(15人制)にも選出されている。2016年にはセブンズ日本代表としてリオオリンピックに出場し、初出場ながら、NZを破る大金星を挙げた。2020年東京オリンピックでもメダル獲得が期待されている。170cm 76kg

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