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東京五輪2020

アスリートインタビュー

ゴールボール女子の3大会ぶり金メダルへ、欠端瑛子は回転投げを武器に飛躍を誓う

2019年8月20日 12:00配信

目隠しをしたまま鈴の入ったボールを相手ゴールに投げ入れ、得点を競うゴールボール。1チーム3人で行われる視覚障がい者のスポーツで、守備側は音を頼りに全身を使ってゴールを守る。

この競技において、日本は2012年のロンドンパラリンピックで初の金メダルを獲得した。次のリオパラリンピックでは5位に終わったものの、強豪国として世界に名を馳せている。

そして2020年、2大会ぶりの金メダル獲得に向けてキーマンとなるのが、欠端瑛子だ。彼女の武器である回転投げは、世界屈指の技術レベルを誇っている。そんな欠端選手に、ゴールボールとの出会いや過去2大会のエピソード、そして2020年への想いを伺った。

(取材・構成=竹中玲央奈、写真=市川亮)

©市川亮

スポーツ嫌いだった彼女が、ゴールボールと出会った経緯

――先天性白皮症による弱視とのことですが、障がい者スポーツとはいつ出会ったのですか?

「私はもともとスポーツが嫌いでした。走るのは嫌だし、球技はボールが見えないし。小学校の授業でサッカーをしていた時は、向かってくるボールを避けられなくて、顔面に当たったことがあります。小・中学校では体育の授業でそういう怖い思いをしていましたが、中学卒業後に進学した盲学校の授業で、パラスポーツの存在を知りました」

――パラスポーツを知った時に、やってみようとは思わなかったのですか?

「また痛い思いをしそうなので、やりたくなかったです。ただ、学校では(※)フロアバレーボールをやっている人が多くて、部活に勧誘されてしまったので、流れに身を任せて入部してしまいました(笑)」

(※)フロアバレーボール・・・全盲や弱視の視覚障がい者と健常者が一緒にプレイできるように考案された球技で、6人制バレーボールの競技規則を参考にしている。

――ゴールボールとの出会いは?

「高校1年の時に、体育の授業でゴールボールがあったんですけど、ボールが当たったら痛そうなのでずっと休んでいました。ただ、2年の時に『大会に出る人が足りない』と友達に言われて、しかたなく大会に出てみました。いざやってみたら、意外と楽しかったんです。自分は球技が苦手だと思い込んでいたんですけど、目隠しすれば条件は誰でも同じですし、ボールを止めたり、ゴールを決めたりした時は嬉しくて」

――大会に助っ人で出た後も、ゴールボールは続けていたのですか?

「遊び感覚でやることはありました。それから2011年に19歳以下の選手が出場するワールドユースがあって、また友達に誘われて日本代表として出場することになりました。今の女子の競技人口は約40人と言われていますし、当時はもっと少なかったと思うので、すぐに日本代表になれてしまったんです」

©市川亮

ロンドンで初の金メダルを獲得も、リオでは自身のミスで悔しさを味わう

――ワールドユースでの結果は?

「残念ながら1回も勝てず、最下位で終わりました。ゴールボールは寝転んでゴールを守るので、身体が大きい海外の選手は有利なんです。投げる時の威力も違いましたし、世界との差を感じました。悔しくて号泣してしまったんですけど、2012年にロンドンパラリンピックがあると聞いて、そこを目指すことに決めました。私は当時、センターというポジションをやっていたので、徹底してセンターで守ることを練習していきました」

――各ポジションの役割について簡単に教えてください。

「1チーム3人で、ライト・センター・レフトのポジションに分かれます。センターは司令塔のようなポジションで、攻守の要です。ライト・レフトは同じウイングですが、守備の時に寝転がる方向が違うので、やりやすいほうのポジションを選びます」

――ロンドンでは、決勝で中国を1-0の僅差で破り、初の金メダルを手にしました。

「やはりワールドユースでの悔しさはバネになったと思います。決勝はレギュラーの3人の先輩が24分間、フルタイムで戦っているのをベンチから見ていました。もちろん決勝の舞台に立ちたいという気持ちはあったので、また悔しさが残りました」

――金メダルを獲得しながらも悔しさを味わったと。ただ頂点に立ったわけですよね。そこから目標はどう変化したのでしょうか?

「当時は大学3年で、卒業もしないといけないので、2013年は勉強に専念していました。ゴールボールを続けるかどうかは、卒業してからゆっくり考えようと。ただ、その年にパラリンピック東京大会の開催が発表されたので、そこを目指すことに決めました。まずは代表監督に東京を目指すことを伝えたら、『その前に2016年のリオがある。自分の力で出場権を取ってみないか』と言われたんです。ロンドンの時は先輩方が出場権を取っていたのですが、監督の言葉を受けて、自分の力でリオを目指しました」

――ちなみにですが、パラリンピックに出場するには、どのように予選を勝ち進むのですか?

「世界選手権の上位3カ国と、各大陸予選の王者、そして世界最終予選を勝ち抜いた国が出場することができます。日本は世界選手権で上位3カ国に入れなくて、その次に行われた世界最終予選でも負けてしまいました。そして最後の枠の大陸予選で、世界ランキング1位の中国を下して、なんとか出場を決めることができました。前回のパラリンピック王者なので注目度は高かったと思いますし、プレッシャーは強かったですね」

――リオパラリンピックでは、その中国に準々決勝で対戦して、(※)エクストラスローの末、3-5で敗れて5位に終わりました。

(※)延長戦でも決着がつかない場合は、サッカーのPKのように、1対1で交互に投げ合うエクストラスローで勝敗を決める。

「エクストラスローでは1-3で敗れたのですが、1失点目は私の手が届かなかったんです。あの時に点を取られなければ、流れは来ていたはずなので、とにかく悔しい思いをしました。決勝トーナメントなので負けは許されなかったですし、そんなプレッシャーのかかる状況で、思ったより早く中国と当たってしまったなと」

©市川亮

回転投げを武器に3大会ぶりの金メダルへ

――リオでの敗戦を受けて、東京五輪への想いが余計に強くなったのでは?

「そうですね。国によってスタイルが違うので、今はそれに対応していくための練習をしています。例えば、強豪国のトルコはバウンドボール、ロシアはグラウンダーで投げるのが得意です。しかも、海外のチームには、だいたい1人は試合を決めるエースがいます。ただ、日本はあまり攻撃力がないので、3人で連携しながら相手を騙して、“穴をあける”戦い方をするんです」

――ゴールボールでは、攻撃側が投げる時に、守備側の不利になるような音を出した場合はノイズという反則を取られますよね。

「投球動作を始めてから、不用意な音を出したら反則になります。相手は耳で音を聞いて(サーチ)守備をしますが、3人で上手く息を合わせて、ノイズにならないタイミングで相手を上手く騙しています。それに対して、海外は個で攻守をすることが多いです」

――リオオリンピックの陸上男子400mリレー決勝で、日本はバトンパスの技術で個の力の差を埋めて、銀メダルを獲得しました。その時と戦い方が似ているように思います。

「日本の選手は身体が大きくないので、そうするしかないんですよね。私は投げる力が弱いので、回転投げという技術を取り入れています。体を一回転させることで遠心力が加わって、鈴の音を抑えられるんです。なので、相手からすればどこから投げてくるかを定めにくいと」

©市川亮

――回転投げは自分で取り入れようと考えたのですか?

「ある人に『回転投げをやってみないか』と言われました。回転投げは日本では取り入れている選手がいなかったのですが、『回転投げができれば瑛子は強くなる』と。それならばやってみようと思って、練習を始めたものの、最初は難しかったですね。目は回るし、どこに投げているか分からないし、投げた後も自分のポジションにすぐ戻らないといけないですから」

――ここまで鈴の音が鳴らない回転投げができるのは、世界でも欠端選手だけだとお伺いしました。東京五輪では、その回転投げを武器に、次こそ自分の力で金メダルを獲りたいという想いは強いですか?

「もちろん金メダルを獲りたいですし、まずは自国開催の大舞台に立ちたいです。日本開催なので、すごく良い環境で試合ができますし、純粋にプレーを楽しめると思います。海外の選手は本当に力があるので、それに負けないくらいの強さを手に入れて勝ちにいきます」

――ゴールボールを日本に普及する大きなチャンスにもなると思います。

「とにかく多くの人に見に来ていただきたいです。まだまだマイナーなスポーツですし、ロンドンで金メダルを獲っても、名前くらいしか分からないという人は多いと思います。もっと知ってもらいたいですし、障がい者スポーツには大きな魅力があります。健常者でも楽しめますし、ぜひ一度体験してみてほしいです」

©市川亮

<了>

[PROFILE]

欠端瑛子(かけはた・えいこ)

神奈川県横浜市金沢区出身。先天性白皮症による弱視を持っていた中、友人の誘いによりゴールボールを始め、2年で日本代表に選出される。2012年のロンドンパラリンピックで金メダルを獲得したメンバーの1人で、続く2016年のリオパラリンピックにも出場。自国開催のパラリンピックでは中心選手として頂点を狙う。

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