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東京五輪2020

アスリートインタビュー

常にある壁と危機感。あくなき向上心の先にある金メダルを目指すレスリング・乙黒拓斗

2020年2月5日 11:31配信

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©高木遊

これまで数多くのメダルを獲得してきた日本レスリング界に、また新星が現れた。それがレスリング男子フリースタイル65kg級で東京五輪代表に内定した乙黒拓斗(おとぐろ・たくと/山梨学院大)だ。

レスリングをしていた父・正也さんの影響で、兄の圭祐(※)とともに自宅の一室の八畳間から競技人生が始まると、中学1年に上京してJOCエリートアカデミーに入学。レスリングはもちろん各競技のトップレベルの選手たちと同じ場所で6年間腕を磨いた。そして現在は地元・山梨を拠点とし、2018年にはついに世界選手権を制した。東京五輪での金メダル獲得も期待される21歳だ。

※兄の乙黒圭祐(自衛隊)は男子フリースタイル74kg級で3月8日に東京五輪代表決定プレーオフを戦う。

(取材・文・写真=高木遊)

大きな刺激を受けた6年間

――レスリングを始めたきっかけは何だったんですか?

「父がレスリングをしていたこともありますし、兄もやっていたので、物心ついた頃にはもう始めていました。生活の一部でしたね。幼い頃はずっと家でやっていて、チームに入ったのは小学生の頃です」

――小学生の頃で練習はどれくらいしていたんですか?

「学校から帰ってご飯を食べたら、そこからすぐ練習を始めて夜遅くまでずっと練習していましたね」

――レスリングを辞めたいと思ったことはありますか?

「無いですね。全然。1回もありません。やっぱりレスリングが好きだし楽しいからですね」

――小学校卒業と同時に山梨の親元を離れ、東京のJOCエリートアカデミーに入りますが、どのように決心されたのですか?

「兄も入っていましたし、五輪に出るにはトップレベルの環境に身を置かないと難しいと思ったからです。練習だけでなく、トップレベルの生活もできることに惹かれて入寮しました」

――実際に入ってみて、どのようなことがトップレベルに感じたのでしょうか。

「本当に食事も宿泊施設も日本のトップレベルの選手と一緒ですし、練習場所も一緒。若い頃から、世界で活躍する選手が身近にいて、そうした選手がどのような生活をしているのか?例えば食事内容で他の選手を見て吸収したこともあります。特定の誰かではなく、あらゆる選手から影響を受けました」

――あらためて、その6年間を振り返ってみて、いかがですか?

「必死でしたね。一日中レスリングだったり、トレーニングだったり、英会話もしていました。常にレスリングのための時間で、強くなるために必死でした。その経験があるので、今もレスリングに対して真摯に取り組めているのだと思いますね」

――仲の良い選手はいました?

「卓球の(平野)美宇ちゃんは、同じ山梨県育ちでエリートアカデミーでも一緒だったので会ったら話します。切磋琢磨というか良い刺激をもらっています」

“危機感”と高いモチベーション

――山梨学院大に行かれたきっかけは何だったのですか?

「兄もいましたし、やっぱり地元で家族もいますし、日本で一番強い大学なので、そこに惹かれて進みました」

――大学に入ってからの成長はどのように感じていますか?

「高校までは練習時間、内容、寝る時間が決められていましたが、大学は自由で任されています。強くなるために自分の時間を大切にして、自分の足りないものを考えて、そこを強化する。何時に寝ると翌日に自分がベストのコンディションでいられるのかも考えるようになりました。そうしたことは大学に入ってから学んで、身についてきました。時間が自由にあるということは(どう使うかで)伸びる・伸びないがハッキリと分かれます。だからこそ、常に危機感を持って取り組んでいます」

――体づくりで気をつけているところはありますか?

「3食バランスの取れた食事を母が考えてくれていますし、トレーニングでも現時点で足りないところを常に考えて強化をしています」

――すごくストイックな生活をされているように思うのですが、趣味や息抜きはありますか?

「息抜きはYoutubeを観たり、のんびりすることですね。特に乃木坂46さんは応援しているので元気もらっています」

――ちなみに睡眠はどのくらい取っているのでしょう。

「だいたい23時から朝の7時半まで寝て、最低でも8時間は寝るようにしていますね。もちろん忙しくてそれだけの時間を取れない時もありますが、リカバリーのためになるべく多く取るようにしています」

――高校時代インターハイ3連覇など国内では無敵のような状態でしたし、国際大会でも活躍をされています。その中でモチベーションを高く持ち続けることができる理由は、どのようなものでしょうか?

「自分の一番の目標は、ずっと変わらずオリンピックで金メダルを獲得することです。だから日本で何連覇しようと国際大会で優勝しようと、そこはゴールじゃないんです。そういう気持ちだからモチベーションは高いままですね」

©高木遊

金メダルへ“貫く”

――壁を感じた瞬間はありましたか?

「壁…うーん、壁を感じることはしょっちゅうですよ。上手く行かないことも全然ありますし、逆に上手く行き過ぎてしまうこともあるし…。壁は常にあります」

――良い意味で“満足しない”というか、先ほど仰ったように常に危機感を持ち続けているんですね。

「そうですね。他の人には絶対負けたくないですから、そのために常日頃から危機感を持って生活しています」

――2018年に世界王者となりましたが、昨年の世界選手権では5位。やはり各国の強豪選手に研究されているような感触はありますか?

「研究されているなとやっぱり感じました。自分の攻撃を防ぐというか発揮させないようなレスリングをされてしまいました」

――やはりご自身のレスリングの武器は攻撃の部分でしょうか?

「そうですね。やっぱり攻撃です。持ち味は思いきりの良さや躊躇しないところです。それを踏まえ、相手は必死に僕のパターンやペースに持ち込ませないようにレスリングするようになってきています」

――好きな言葉や信念はありますか?

「うーん、“自分を貫く”ということですかね。ブレないようにということは常に大切しています。レスリングにおいて、それは攻撃のスタイル。攻めの姿勢ですね」

――東京五輪では競技の魅力など、どんな部分を見て欲しいですか?

「一瞬で逆転したりすることもあるし、細かな駆け引きが6分間ずっと行われています。スピード感や体ひとつで戦うところは、やはりレスリングの魅力だと思います。自分がメディアに出てレスリングに興味を持って、始めてくれる人がいたら嬉しいですし、そうした思いは活力になります。日本のレスリングは女子だけでなくて男子も強いんだということを見せたいです」

――東京五輪まで残り半年。目標のために、どのようなことを強化していきたいかをお聞かせいただきたいです。

「一日一日を大切にして、常に東京五輪のことを考えて意識していきたいです。五輪で勝つために今自分には何が必要なのか、何をするべきか考えて練習をして、私生活を含めて充実した毎日をしっかり過ごすことでベストパフォーマンスを出せるようにしていきたいです」

©高木遊

[PROFILE]

乙黒拓斗(おとぐろ・たくと)

1998年12月13日生まれ、山梨県出身。山梨学院大所属。中学1年から高校3年まではJOCエリートアカデミーで過ごす。高校は帝京高に通いプロ野球の郡拓也(日本ハム捕手)とは同期で親交もある。2018年には世界選手権を制覇。東京五輪では金メダル獲得を目指す。好きな芸能人は白石麻衣。173cm65kg。

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