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東京五輪2020

アスリートインタビュー

「東京開催が決まり、大きな目標になった」 テニスで2大会連続出場を目指す土居美咲

2020年5月15日 12:07配信

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<取材・文=川原宏樹、写真=本人提供>

1900年のパリ大会で初めてオリンピックに登場した女子テニス。選手のプロ化により1928年のアムステルダム大会から除外されるが、1988年ソウル大会で復活した。女子シングルスで日本勢の最高成績は伊達公子(1996年アトランタ大会)、杉山愛(2004年アテネ大会)のベスト8。2016年のリオデジャネイロ大会に出場した土居美咲が、当時の記憶とテニス選手にとってのオリンピックを語る。

好調ななかで大会延期が決定 現在は「家でできる範囲のトレーニング」

――オリンピックが1年後に延期と決まったとき、どのような気持ちでしたか? 

最初の頃は、“オリンピックが延期になることはない”と思っていました。そこから徐々に状況が悪化して、“オリンピックは開催できないでしょ?”と少しずつ中止になる心の準備もできたので、延期が決まったときは“当然だよね”と言う感じでした。特に、テニスはまだ内定が出ていなかったので、他の競技よりも位置づけ的にもそうですし、私は“来年になったか”くらいの受け止め方です。

――現在の土居選手の状況を教えてもらえますか? 

アメリカ・インディアンウェルズの大会が中止になって帰国したのが3月。その後、多少練習できていたけど、練習拠点にしていたNTC(ナショナルトレーニングセンター)が使えなくなってから、ジムも行けていない状態です。

――大変ですね。

大変ですけど、首都圏にいる選手はみんな同じ状況だと思います。家でできる範囲のトレーニングをし、ジョギングをしたり、公園で動いたりもしています。

――コートでプレーできていない状況ですか?

そうですね

――体調はずっと問題ない?

はい、元気です!

――ツアーが中断される直前に、インディアンウェルズでのチャレンジャー大会で準優勝。調子はかなり良さそうでした。

その大会は苦しい試合もあったけど、勝ち上がれていました。自分も調子が上がってきて、ここからというタイミング。その次に、同じインディアンウェルズの大きい方の大会(※グランドスラムの次にグレードが高い大会)が始まるところだったので、ショックは大きかったです。

――無観客試合で開催されるという情報も流れ、開催されるものだと思っていました。

中止が決まったのが本当に直前(※3月11日開幕で8日に中止が発表)だったので、選手たちは全く予想していなかったです。あのときは日本も今のような状況ではなく、スポーツのイベントも開催されていました。世界的に大きなイベントが中止になったのが、インディアンウェルズの頃が最初だったのではないかと思います。

――中止はどの選手も同じですが、調子が良かっただけに残念ですね。

これから大きい大会で結果を出していこうと、手ごたえも感じていたので、そうですね。

1年以上の不調を乗り越えた要因 「純粋に楽しみながらできるようになってきた」

――4月29日で29歳になりました。体の変化は何か感じますか?

若いときよりはメンテナンスに気を使わないと大変だなと思いながら、以前よりもケアに時間をかけています。

――昨年の終わりに肩を痛めていましたが、今は問題ないですか?

10月、11月に肩を痛めていました。今も、完璧ではないですけど、大丈夫という感じです。ただ、まだ全快ではないです。

――具体的にケアする時間が増えたのはどんな内容ですか?

今年は肩のことがあるので、全大会でトレーナーさんに帯同してもらっています。動き出しからアップまで1時間半くらい準備がかかります。以前は45分から長くても1時間でした。伸びた30分を肩のリハビリなどに充てています。

――衰えは感じませんか?

衰えは感じてないです。怪我はあるけど、それ以外のところは元気で調子が良いです。

――昨年9月の花キューピッドオープンで準優勝、東レPPOでも調子が上がり、1年以上続いた悪い時期を抜け出して吹っ切れた感じがしました。乗り越えられた要因は何だったのでしょうか?

悪い時期は自分で勝手にプレッシャーを感じて、“勝たなきゃいけない”、“負けるのが怖い”などと、良くない考えにいってしまっていました。良くなってくる段階で、純粋にテニスを楽しみながらできるようになってきたのが一番大きいポイントだと思います。

――苦しいときに辞めようとは思わなかったですか?

頭をよぎったことはありました。テニスを楽しむというよりは、極端な話、負けるためにコートに行っている時期がありました。勝ち方もイメージできない状況でした。一時期はコートに入るのが怖い感じでしたね。

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テニス選手における五輪の位置付けと東京大会に懸ける思い

――ここからオリンピックについて聞きます。自分がテレビで見て印象に残っている場面などありますか?

競泳の北島康介選手は印象が強いです。テニスはあまり見たことがありませんが、テレビに映っている選手たちが印象的で北島選手は鮮明に覚えています。

――テニスは毎年ツアーでグランドスラムがあって、オリンピックの“4年に一度”という感覚ではないと思いますが、オリンピックの位置づけはどのようなものですか?

テニス選手としてはグランドスラムのほうが、位置づけは高いです。ただ一人のスポーツ選手として、また日本人としてオリンピックは大きい存在です。前回のリオデジャネイロオリンピックに出たことで、次が東京大会と決まっていたので、自分の目標としてすごく大きくなりました。

――リオデジャネイロオリンピックではシングルス、ダブルスともに出場しましたが、特に印象に残ったのはどんなことですか?

シングルスの初戦でかなり緊張しました。他のツアー大会よりも緊張しましたね。ツアーのひとつの大会として挑むよりは、“オリンピックという特別なものだ”という認識でコートに入ったのが、そのときは良いようには作用しませんでした。

――あまりお客さんが入っていなかった記憶があります。

信じられないくらいお客さんが入ってなくて、ビックリしました(笑)。日本のITFチャレンジャー大会より入ってなかったです。ボールボーイのやり方をわかっていない子たちが務めてくれて……。

――こっちが気を使ってしまう?

そのような状況でした

――グランドスラムやツアー大会に比べると、オリンピックの選手村は環境が整っていないと思います。リオ大会ではどうでしたか?

選手村のなかで日本チームの棟に入りました。断水、シャワーの水が止まらず室内が水浸しになったり、トイレが流れなかったり、いろいろなトラブルがあって大変でした。

――土居選手も?

はい、日本の棟全体なのでみんなに影響がありました。

他競技の見どころとテニスの魅力 「駆け引きを意識して見てもらえたら」

――他の日本の選手と交流する機会はあったのですか?

多くはないですけど、同じミキハウス所属でカヌーの羽根田卓也選手が「頑張ろうね」と話し掛けてくれたんです。まだメダルを取られる前でした。いろいろな競技の選手がいて、テニス以外の選手の熱量を感じました。オリンピックはものすごいものなんだという熱が高まりましたね。

――有名な他競技のスター選手に会うことはなかったのですか? 

ウサイン・ボルト選手はメチャメチャ探したんですけど、出会えず。黒人選手が前を歩いていたら、“え、ボルトじゃない?”って回り込んで顔を見に行ったんですけど、残念ながら違う選手でした。

――他の競技のプレーを見て、テニスに生かせる部分はありますか? 

どうですかね?

――トレーニングの仕方など気になる競技などありますか?

レスリングは“どれだけきついんだろう?”と思いながら、見ています。

――見るのが好きな競技はありますか?

やはりラケット競技のほうが楽しいかもしれない。バドミントンや卓球。卓球はテニスにないスピードがあるので、面白いなと思います。戦術もちょっと似ているところがあるので面白いです。

――戦術が似ている部分とは?

全然わからないのですが、バドミントンだとおそらくポジショニング、予測が重要なのかなと、勝手に見ながら考えています。

――卓球もそういう部分はありますか?

反応と準備が本当に速い! フィジカルではないですし、テニスに生かせないですけど、反射神経が皆さんすごい。

――テニスもダブルスはすごくスピーディで魅力があると思います。ダブルスの魅力はどうでしょうか? 

ダブルスは、私はいつも楽しんでやっています。シングルスにはないスピード、ゲーム展開があり、特にダブルス専門のプレーヤーとの対戦は楽しいです。

――シングルスに生かせるプレーはありますか?

ボレーなどネットでのスキルはダブルスを経験すると上がります。サービスリターンも、ですね。ダブルスは短いポイントで終わることもあり、リターンがすごく大事です。少しでも浮いたらたたかれるので、サービスリターンはシングルスと違ったタイミングですが、ヒントになることがあります。

――普段テニスを見ない人もオリンピックでは見ると思います。その魅力を教えてください。

テニスは試合の流れが頻繁に変わるので、そこの駆け引きです。対人スポーツなので相手の調子の良し悪し、今どこがうまくいっている、うまくいっていないなど、試合の流れが必ずあります。例えば、相手に勢いがあるときは、その得意なパターンになるべく持ち込ませないように私は意識します。連続ポイントを与えないようにして、なるべく早く流れを断ち切るのです。簡単にポイントを取らせないことも重要になります。そのような選手同士の駆け引きを意識して見てもらえたら、より楽しく見られると思います。

[PROFILE]

土居美咲(どい・みさき)

1991年4月29日生まれ、千葉県大網白里町出身。ミキハウス所属。左利き、バックハンド:両手打ち。最高世界ランキング:30位(2016年10月10日)。現コーチ:クリスチャン・ザハルカ。6歳でテニスを始めた。駿台甲英高卒業前の2008年12月に17歳でプロ転向。2010年に全日本選手権優勝。翌11年にウインブルドンの予選を勝ち上がり、本戦3回戦進出(ベスト32)。2015年10月のルクセンブルクオープンでWTAツアー初優勝。2011年よりフェドカップ日本代表。身長159㎝

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