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東京五輪2020

アスリートインタビュー

パラ卓球・松尾充浩 39歳から「日本一の練習量」でメダルを目指す

2020年8月28日 11:21配信

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障害の種類や程度によってクラス分けがあり、それぞれの選手が独自のスタイルで力強いラリーを繰り広げるのが、パラリンピックの卓球です。パワーのある相手に対して、相手が嫌なところに打ち返すなど、相手との駆け引きが見どころになっています。

松尾充浩(まつお・みつひろ)選手も、その魅力に引き込まれたうちの1人でした。「障害の差を感じずにプレーできる」パラ卓球の魅力や、松尾選手の今後の目標についてお聞きしました。

(取材・文=市川紀珠、写真提供=株式会社ベリサーブ)

©株式会社ベリサーブ

陸上から、39歳で卓球の道へ

――39歳でパラ卓球を始められたそうですが、競技を始めるには遅めの印象です。始めた経緯を教えてください。

実は、僕のパラスポーツの入り口は卓球ではありませんでした。2001年に高橋尚子選手が優勝したベルリン・マラソンをテレビで見ていた時に、たまたま車いす部門も見たんです。車いすの選手がものすごいスピードで駆け抜けていくのを見て、「かっこいいな」と思いました。調べると、車いす陸上という競技があることを知りました。もともと事故で障害を背負う前にはサッカー、野球、ボクシングをしていた経験もあって、スポーツは好きでした。そこから興味を持って、100m種目をメインに陸上競技を始めました。

――陸上から、卓球に。競技を変えたきっかけは何だったのでしょうか?

2016年に、陸上の練習の合間に卓球をする機会がありました。遊び半分でやったのですが、想像以上に面白くて。すぐにのめり込みましたね。車いすスポーツの同じ競技でも、参加者一人ひとり障害の程度にはかなりの差があります。障害によってクラス分けはされているものの、僕の場合は重度の障害なので、陸上ではなかなか勝つことが難しかったです。障害の差を感じることなく戦えることが、卓球に感じた魅力でした。

――そこから、本格的にのめり込んでいったと。

試しに試合にエントリーして出場してみると、少しずつ勝てるようにもなって、さらに楽しくなっていきました。

2016年の年末に、「国際クラス別パラ卓球選手権」という日本一を決める大会がありました。そこで、5位になることができたんです。もっと真剣にやれば、さらに上を目指せるのではないか、と。この辺りから、本格的に競技として卓球に取り組み始めました。

難しいのは、練習環境の確保

――パラスポーツは、健常者スポーツと比べて様々なハードルがあるかと思います。

パラスポーツで一番のハードルは、練習場と練習相手の確保です。車いすなので、どこへでも行けるわけではありません。例えば卓球場が2階にあっても、エレベーターが無ければ当然行けないわけです。健常者とは目線や打球の高さが違うので、練習相手も車いす選手同士の方が良いんです。僕の場合、大阪市舞洲障がい者スポーツセンターを主な練習拠点にしているので、練習会場の周りに他のパラ選手がいることも多いです。時には、健常者の方に椅子に座ってプレーしてもらうなど工夫をしています。

――松尾さんは、2017年5月に株式会社ベリサーブに入社されました。ベリサーブはパラアスリート支援にかなり力を入れているとお聞きしましたが、実際どのようなサポートを受けられているのでしょうか?

おかげさまで、競技に専念できるようになりました。「練習・大会に出場をすることが仕事」という位置付けで、全面的にサポートしていただいています。パラスポーツへの支援が手厚いことが、入社のきっかけでした。日本代表の海外遠征費用の援助など資金面でのサポートのほか、何か悩んでいる時に話を聞いてくれるドクターの方がいたりと、会社の福利厚生を利用できることもありがたいです。全国各地で試合が行われるのですが、その都度近くの支社の方々が応援に来てくださるのもとても嬉しいですね。これ以上の要望はないくらい、恵まれた環境で競技に集中することができています。

©株式会社ベリサーブ

練習量で勝負。陸上でパワーも強化

――昨今の新型コロナウイルスの影響で、トレーニングにも影響が出たのではないでしょうか?

今は、長時間室内で練習することができないので、代わりに陸上の練習を積極的に取り入れています。腕のパワーを強化することで、打球のスピードが上がると考えています。このパワーとテクニックを武器に、世界でも通用するようにしていきたいです。室内で6時間、さらに外で陸上のトレーニングを3時間。今は週に5日くらいですが、コロナ前は週に7日と毎日練習していましたね。競技を始めたのが遅いので、質より量で勝負しようと。練習時間に関しては、日本一だと思いますね(笑)。

――かなりの練習量ですね。モチベーションを保つ秘訣はあるのでしょうか?

月に1回程度のペースで小まめに試合を入れるようにしています。遠い目標だと気持ちが持たないので、健常者の大会にも出場したりして、緊張感を持って取り組んでいます。

誰もが“対等に”戦える卓球の魅力

――改めて、パラ卓球の魅力や見どころについて教えてください。

始めの方でも少しお話しましたが、パラ卓球の見どころは、単なるパワースポーツではないところです。障害の程度の差や力の差を、テクニックでカバーできるんです。いかに相手が届かないところに打ち込むか。そういった細かい技術次第で、障害の重い人でも障害の軽い人に十分勝つチャンスがあるんです。誰もが勝ちを目指せるスポーツになっています。見る側も、パワーのない人がテクニックで相手を倒す、などといったところに着目していただけると面白いと思いますね。

――パラスポーツでは、競技で使用する車いすなどギアにこだわることも勝つために重要だとよく聞きます。パラ卓球は、どうなのでしょうか?

特に特殊なギアを必要としないことも、パラ卓球の魅力です。陸上をしていた時は、自分の体に合わせてミリ単位で車いすを設計してもらう必要があって、苦労しました。でも卓球は、日常生活で使用している車いすの高さを上げるだけで十分にプレーができています。

――最後に、今後の展望についてお聞かせください。

今回、東京五輪への出場は実現しませんでしたが、2024年のパリパラリンピックに向けてすでにスタートを切っています。目標は、国際大会で個人での金メダルまたは銀メダルを取ること。団体戦では銀メダルを取ったことがありますが、やはり自分の力で取りにいきたいです。今のうちに差を付けられるように、これからも日々練習に励んでいきたいです。

[PROFILE]

松尾充浩(まつお・みつひろ)

株式会社ベリサーブ所属。クラス2所属。19歳の時に交通事故で脊髄を損傷し車椅子での生活。卓球競技を始めたのは39歳。2018年アジアパラ競技大会(インドネシア)団体戦 銀メダル。2018年パラ卓球タイオープン個人戦銅メダル。

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