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【日本最小ラガーマンが語る豆の眼力】世界を知るSH田中史朗選手の「仕事」

2017年10月26日 19:20配信

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首藤甲子郎氏

1.全勝同士の対決

トップリーグ第9節、今回はサントリーサンゴリアスVSパナソニックワイルドナイツの試合で見られた技術について解説していきたい。ここまで8戦全勝同士の対決となった一戦はサントリーが21-10で競り勝ち、首位をキープした。

Ellis Webでは動画付きでプレーを解説!

2.世界のフミアキ

一級品のプレーを見せてくれたのがパナソニックワイルドナイツSH田中史朗(No.9)選手だ。

田中選手は日本のみならず世界を代表するSHであることをまずはお伝えしたい。

日本代表キャップは61を数え(2017年10月26日現在)、2011年と2015年にそれぞれ開催されたラグビーW杯でも活躍した。

さらに、田中選手といえば2013年に日本人として初めて世界最高峰のスーパーリーグデビューを果たしたのである。

そして厳しいポジション争いを勝ち抜き3年目には優勝に貢献する活躍を見せた。

世界レベルの技術で見るものを楽しませるのが田中史朗という選手なのだ。

首藤甲子郎氏

3.田中選手のパスダミー

注目のプレーは前半11分。田中選手が敵陣10m付近、パナソニックボールのラインアウトからのラック後に見せた動きだ。

ラックからのボールを持ち出した田中選手は、ラック周辺の相手FW選手の間にできたわずかなスペースに対し、パスをする素振りを見せながら自ら勝負を仕掛けていく。

このパスダミーに翻弄された相手DFは田中選手に触れることすらできない。

田中選手は敵DFラインの裏にでることに成功するわけだが、この後の田中選手の動きに隠された、見えない技術を解説していきたい。

4.ランコースを瞬時に変更

まず、相手DFラインの裏に出た直後、直ぐに右から上がってくるだろう味方のフォローを一瞬確認し、それを待つ素振りを見せる。

しかし、どうしてもそのタイミングにはフォローが間に合わないことを確認し、瞬時に別のフォローオプションへと切り替えたのである。

SH田中選手は左から上がってくるフォロープレーヤーにボールを託す判断をするのだが、そのコース取りに技術が隠されていた。

左サイドに空いたスペースと、数的優位を確認すると上がってくるフォロープレーヤーに対し自分のランニングコースを真横にスライドするようにランコースを変えたのだ。

この動きをすることで、田中選手とフォロープレーヤーとの距離を一瞬にして縮めることができ、味方のスピードを落とさせることなく勝負させることができる。

5.田中選手は「仕事人」

決して田中選手は足の遅い選手ではない。本来であれば、ラインの裏に出た時点で自分でトライに行くなど勝負をかけることができた場面である。

ではなぜ田中選手はこのような動きをしたのか。私は田中選手がSHとしての「仕事」を優先したのだと考える。

自分で勝負に行ったことで、自分が捕まりせっかくできたチャンスのボールアウトが遅れてしまうリスクがあるのだ。

ボールと共に動き回り、攻撃のリズムを構築するのがSHに求められる仕事である。

田中選手は自分で勝負するよりも、幅広い視野でもって仲間を生かし2つ、3つ先の状況を読んでいた。

常にチームにとって最適なプランを遂行した方がチームとしてベストな結果が得られると判断したに違いない。

この大一番で、常に冷静に正確なプレー選択をし続けることができる余裕こそ、世界が認める日本SH、田中選手の「仕事」である。

田中選手のプレーはどれを見ても一級品だ。

是非、世界のフミアキから多くの技術を見つけてみてはいかがだろうか。

文:首藤甲子郎

編集:横澤樹

画像提供:延原ユウキ

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