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2019年日本W杯のライバルと激突! 君島良夫氏が語る、アイルランド戦の見所!

2017年6月15日 12:47配信

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君島良夫氏

君島良夫氏が語るアイルランド戦の見所!

 6月10日に行われたルーマニア戦に勝利し、勢いに乗るラグビー日本代表。17日には、強豪アイルランドとの試合を控えている。アイルランドは2年後のラグビーW杯で日本と同組になることから、この1戦は注目を集めている。そこで、2016年までトップリーガーとして活躍し、現在は日本初のプロキックコーチを務めている君島良夫氏に見どころを聞いた。

君島良夫氏の経歴

 君島良夫氏は現役時代にはスタンドオフとして活躍した、元トップリーガー。高校からラグビーを始め、大学では同志社大学に進学し、4年生の時には大学選手権でベスト4に輝いた。社会人としては、2007年にNTTコムシャイニングアークスからスタートし、初年度からチームの中心選手として活躍。2009年にはトップイーストリーグ全勝優勝に貢献し、トップリーグ昇格を果たす原動力となった。2014年にはラグビーの強豪国オーストラリア、アメリカのリーグに挑戦。2015年、16年と日野自動車レッドドルフィンズに所属し、16年シーズン終了時に引退。現在は日本初のプロキックコーチとして、活躍している。

2019年W杯で同じグループになるアイルランド

 今回の試合、日本にとって非常に重要な試合となる。なぜなら、アイルランドと日本は2年後、2019年に日本で行われる世界最大の大会であるW杯で同じグループになるからだ。そのアイルランドは世界ランク4位(日本は11位)、前回の2015年W杯ではベスト8、先日のSIX Nationsでは2位とタイトルこそないものの常にTear1(世界ランク10位以内)の上位に位置する強豪国である。

 今回の日本ツアーには、ブリティッシュ・アンド・アイリッシュ・ライオンズと呼ばれる4年に一度結成されるイギリス4ヶ国のオールスターチームに招集されている数名の選手が11名不参加のため、ベストメンバーには程遠いが、それでも日本にとって格上となることは言うまでもない。今回の2連戦で日本が勝利することができれば、2年後のW杯本戦に向けて大きなプレッシャーをかけることができる。

アイルランドの実力は!? 世界ランク1,2位のチームを直近で破っている唯一のチーム

 アイルランドは昨年、世界ランク1位のニュージーランド代表オールブラックスとのテストマッチで、アイルランドはニュージーランドの世界記録18連勝をストップさせる大金星を挙げた。どれだけ対策しようとも誰も止めることが出来なかった、圧倒的世界一のオールブラックスを打ち破ったのだ。

それだけではない。さらに、先日のSIX NATIONSでは、世界ランク2位のイングランドの連勝記録を止める勝利を挙げ、完成度の高い試合を見せた。大きなタイトル獲得こそないものの、戦力は世界トップクラスであることは間違いない。2019年のW杯本戦で日本が決勝トーナメントに進出するためには、避けては通れない相手である。

アイルランドの武器は世界屈指のセットプレー

 アイルランドの強みは、なんと言ってもセットプレーと呼ばれるスクラム、ラインアウトとキックによる得点だ。

 特にスクラム、ラインアウトモールなどフォワードのパワープレーはアイルランドの最大の得点源であり、パスの少ないシンプルなアタックで、相手ペナルティーを誘う。そしてそのペナルティーからキックで敵陣深くに入り得意のスコアパターンにもっていく、またはペナルティーゴールで得点を量産し、細かくスコアを刻むのが伝統的なスタイルだ。日本がアイルランドフォワードの圧力に屈してペナルティーを犯してしまうようだと苦戦は必至だ。

 しかし、アイルランドには今回の日本ツアーに懸念もある。ここ数年アイルランド代表の最大の得点源であり、唯一無二のゲームメイカーであるジョナサン・セクストンが、ブリティッシュ・アンド・アイリッシュ・ライオンズに招集されているため、正キッカーが不在なのだ。そこに代わりに入るプレーヤーがどこまで精度の高いキックとゲームメイクで得点に繋ぐことができるかが一つの鍵になりそうだ。

重要な試合における最大の見所とは!?

 両チーム共に注目してほしいポイントは、飛び交う様々な種類のキックだ。アイルランドはラグビーにおいて最重要視される陣地を獲得するためのキックを多用する。日本はヘッドコーチがエディー・ジョーンズからジェイミー・ジョセフに代わってからはキックを好んで使っている。特に攻撃時にはキックによって意図的に「カオス」な状態を生み出し、そこからの攻めで得点を目指している。

 日本にとっては、アイルランドのキックによる陣地獲得を阻止できるかが争点である。キックで後手に回り、常に自陣での戦いを強いられる展開ではアイルランドの強力フォワードの圧力に耐えきれないだろう。

 しかし同時に、キックを有効に使って相手ディフェンスの圧力を分散できれば勝機がある。また、特に序盤でキックからの「カオス」な状態から得点をすることが出来れば余裕を持って試合を進められるだろう。

 ラグビーにおいてパスは後ろにしか投げられないため、キックは唯一シンプルにボールを前に進めることができる、いわば飛び道具なのだ。今回の試合でも長短、高低差、強弱、そして回転と、様々なキックを使い分けるチームが優位に立つと言っても過言ではないだろう。

このキックに注目!注目すべきキックのポイントとは?

 注目すべきキックの1つ目は、スクラムハーフ(背番号9番)からのハイパント(高く蹴り上げるキック)だ。滞空時間の長いボールに対して、チーム全体でディフェンスする、もしくはウィングの選手がいい形で競り合うことができれば、日本はボール支配率を高めることができる。逆にこのポイントで後手に回れば相手にボールを支配され、陣地戦では窮地に陥る可能性が高い。

 2つ目は、日本が得意とするアタックの流れの中から相手ウィングの裏にキックを蹴り込み、トライを狙うパターン。先週のルーマニア戦でも、13番に入ったラファエレから相手ウィングの後方へのキックで、スピードランナーを走らせてトライに繋げたシーンがあった。ディフェンスのレベルが上がっている近代ラグビーにおいて、パワーで劣る日本は単純な攻めでは防御網を破れない。このようなキックを使ったアタックで「カオス」を制することが鍵を握ることは間違いない。アイルランド戦では、選手がどんなキックをしているのか、それぞれのキックがどんな意図で、相手はどう対応したのか、そんなところに注目して観戦してみてはいかがだろうか。

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