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【連載】第3回やさしく学ぶヨーガスートラ:“今”の自分にとって大切なことを見極める

2022年9月23日 07:00配信
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日本でもヨガを実践することが一般的になってきた今、ヨガのエクササイズ的な要素以外である、心や思考に作用する“ヨガの教え”に興味を持つ方も増えています。

この連載では、ヨガの教え=ヨガ哲学を体系的に学べる『ヨーガスートラ』を、ヨガインストラクター養成校の講師・インストラクターたちがリレー形式で解説していきます。

心の動きを収めるために必要なこと

第2回でご紹介した『ヨーガスートラ』第1章4節では、心と自分自身の混同によって翻弄される私たちの感情の波立ちについてみていきました。
ヨーガチッタヴリッティニローダハ(ヨガとは心の反応を収めることです)

「心の反応」は目で見えるものでも、手で触れられるものでもないため、捉えどころがありません。

それゆえ、私たちは無意識のうちにその心に支配され、心をコントロールしようとしているはずの私たちが、簡単に心にコントロールされてしまうのです。

今回は、その捉えどころのない心をいかにして収めるか?その方法について書かれている文章をみていきます。

第1章12節:アッビャーサ・ヴァイラーギャービャーン タン ニローダハ
(修習と離欲によって、苦悩の原因となる心の動きは収めることができる)

出典元:ヨーガスートラ

修習とは繰り返し行うこと、離欲とは執着しないことです。繰り返し行うことはある種の執着にもみえますし、何事も執着しなかったら長く繰り返し行うことはできないように感じます。

一見、真逆のようにも捉えられるこの両方を達成していくことで、なぜ心の動きを収めることができるのでしょう?

日記を書くことで、客観視する力を育んだ日々

何がきっかけで書き始めたか定かではありませんが、私は最近まで20年間毎日ずっと日記を書いていました。

おそらく子どもながらに、自分ではコントロールできない時間の流れや、一瞬で消えてしまう不確かな感情を留めておきたくて、文字にして残すという方法を選んだのだと思います。

この日記を書く過程で、私はその日に感じた心の反応を反芻し、「なぜあのときの私はそのような感情になったのか?」を分析し、文章にして残すという『心の動きの視覚化』をしていました。

日記を毎日書くということは、今やその感情の最中に居ない冷静な自分が、一日の終わりに今日体験した感情を再生し、落ち着きをもって自分の感情の推移を分析するということを日々繰り返します。

そのため、日記を書き続けることは、自分の感情の波立ちを把握し、客観的な視点を育むことに通じると思っています。

日々を書き残すことは“今”を生きているのか?

ところが、私は今年になってその20年間書き続けた日記をパタリと止めました。その理由は、「“今”を生きていない」と感じたからです。

私たちは個人の力では止めることができない時間の中で“今”を生きています。その“今”はいくら文章に書き残しても時を止めることはできません。それなのに、私は日記を書くことでカタチに残したと安心していたのです。

書くことで私の記憶は日記に依存し、日記が書けない日があると私の心理的な時間軸は永久にその日で一時停止となり、本来の時間軸から置いてきぼりにされたような気分になっていました。

それは実際、“今”を生きてないことと同じです。書き残すことによって自分が安堵するという日記への依存心と執着に気がついたとき、日記を書きたいと思った当初の目的からずれているような違和感を覚え、私は日記を書かなくなったのです。

客観性を養ったからこそ“今”の大切さに気付く

私は、どんな動機で日記を書こうと思ったか明確には覚えていないものの、自分の“生”を実感したいという感覚や、生きた証を残したいという思いがありました。

でも、その目的を達成するためにとった日記を書くという手段が、いつの間にか私の記憶の依り所となって存在感が増し、目的化していったのです。

進むべき道は後ろでも横でもなく、前にしかありません。巻き戻しが効かない過去に執着し、目の前の“今”に向き合っていない姿は、本来目指していたゴールではないのです。

その本来のゴールがすり替わったことに気づけたのも、長年日記を書き続けたことによって培われた客観的な視点があったからだと感じています。

この視点があったからこそ、書くこと自体への依存によって本来のゴールから反れてしまったことに気づき、スパッと手放すことができたのでしょう。

そして現在は、自分の記録を残す後ろ盾がないからこそ“今”が大切に思えてくると実感していますし、日記の中ではない、いきいきとした一瞬一瞬を丁寧に味わいたいと思うのです。

皆さんにも本来の目的を見失ったまま、惰性で続けているような習慣はありませんか?

その習慣化しているものの目的が明確に答えられないのであれば、それはもうあなたにとって必要のないものなのかもしれません。

人は月日の流れや成長に伴って、そのとき大切にしたい価値観も変わってきます。昔の自分にとっては大切だと考えていたものも、自分の成長とともにその価値観が時代遅れに感じることもあります。

「今の自分にとって大切なものは何か?」それを刻々と移り変わる時の中で、常に最新の状態に更新し続けることが必要になってきます。

依存や執着、欲望にあっけなく占拠されてしまう心を上手くコントロールするには、大切なことのために手放すことができるまで、継続する努力が必要なのかもしれません。

監修:Chika
ヨガスクールFIRSTSHIP講師

【連載】第1回やさしく学ぶヨーガスートラ:「今」に意識を置くということ

【連載】第4回やさしく学ぶヨーガスートラ:「手放す勇気」が本当のゴールへ進む選択となる

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