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【連載】第9回やさしく学ぶヨーガスートラ:本当の自分は、自分の中心にある
日本でもヨガを実践することが一般的になってきた今、ヨガのエクササイズ的な要素以外である、心や思考に作用する「ヨガの教え」に興味を持つ方も増えています。
この連載では、ヨガの教え=ヨガ哲学を体系的に学べる『ヨーガスートラ』を、ヨガインストラクター養成校の講師・インストラクターたちが解説していきます。
心が静まると、真実の自分に出会える
前回の【連載】第8回やさしく学ぶヨーガスートラ:真実を見つめ、心を穏やかにでは、【どのようにしたら心は穏やかであり続けるのか】について、を学びました。
そこで今回は、【本当の自分は、自分の中心にある】についてヨーガスートラの一節を読み解いていきましょう。
第1章41節
クシーナ・ヴルッテーヘ アビジャータッシャ エーヴァ マネーへ グラヒートゥル グラハナ
グラーハイェーシュ タッ・スタ タッ・アンジャナター サマーパッティヒ
考えが静まる時、人の本質は、変化する様だけれど、本当はどんなことにも影響されないと言う理解に至ります。ヨーガ・スートラ(やさしく学ぶYOGA哲学ヨーガスートラ参照)
いろいろな顔をもつ私
それでは皆さん、突然ですが質問です。
あなたは誰ですか?
この質問を投げかけられて、今あなたはポカンとしながらも「私は誰?」を考えましたね。
例えば、「私は山田花子です」「私は会社員です」「私はパンが好きな人です」など、たくさんの私が浮かんできませんでしたか?
この「私は○○です」という「○○」の多くは、誰かに「私」を説明するときに使う、名詞のようなものです。
でも、本当にそれがあなたでしょうか?
さて、今回は今こうして、あなたの中にポッカリと浮かんだ、『本当の私ってなに?』
という疑問と『自覚できている「私」が世界をどのように認識しているのか』について触れた一節をご紹介します。
ヨーガスートラの章の中でも、少し理解するのに難しいかもしれませんが、ヨガ哲学の考え方の中ではとても大切な章になるので、最後までお付き合いくださいね。
私から観ても、他の誰かから見ても私
先ほど例をあげたように、「私は○○です」と説明した「○○」に入る言葉は、他の誰かと比較したとき、自分をより分かりやすく説明することに使いますね。
これは、私から観た私でもあるし、他の人から見た私でもあります。
少し難しい話になるのですが、ヨガ哲学では『私たちが世界と関わる時、考えは無意識のうちに世界を3つに分けて捉えている』と説いています。
(1)観る者 (2)観ている事 (3)観られる物
※ヨーガ・スートラ(やさしく学ぶYOGA哲学ヨーガスートラ参照)
例えば、あなたは母親で子供の前にいるとします。
子供を見ている私が(1)観る者、子供は(3)観られる物、「私は母親だ」という感覚が(2)観ていることに当たります。
そして、これは立場や環境が変わればどんどん変わります。
朝、家の中で子供と関わる間は「母親」、会社に着けば「社員」、夫から連絡があれば「妻」、パンの話をしているときは「パンが好きな人」。
でもそれは自分と外から見た名詞をつけられた私であり、立場や環境が変われば「私は〇〇」が変わり、その役割によって心の持ちようも変わりますよね。
では、もう一度質問です。
本当のあなたは誰ですか?
本当の私は、穏やかでクリアな存在
ヨガ哲学では「本当の私」とは、感情の波などに左右されない、穏やかで幸せに満たされた、クリアな存在だと説いています。
さらに、ヨーガ・スートラでは「本当の私」の存在のことを、透明でクリアな「水晶」だと表現しています。
私は、「本当の私」を「水晶」と例えている考え方が、とても素敵だなと思っています。
水晶は透明なので、水晶の近くにあるものの色を写し込みます。
でも、決して水晶自体が色に染まることはなく、水晶は変わらずクリアな透明のままです。
同じように、私たちも水晶と同じで、どんな状態であっても「私は私」なのです。
つまり、私たちは毎日服を着替え、さまざまな感情の波を経験していますが、どんな服を着ていても、そのとき感じている感情の波も、それが本来のあなたではないですよね。
着ている服があなたではないように。
では、どうしたら、人から見られている立場や、自分が見ている視点、身に着けている物や環境、自分の感情に左右されることない、本当の私に出会うことができるのでしょうか。
ヨーガ・スートラでは、瞑想によって「本当の私」に気づくことができると説かれています。
呼吸を通して感じる「私」が、本当の「私」
「イライラしているお母さんをやめたいのに」「本当は、素直になりたいのに」など、自分の気持ちとは裏腹に態度にでてしまうとき、ちょっと冷静になって、深呼吸をして少し気持ちが落ち着いた、という経験はありませんか?
その落ち着いた気持ちこそ、「本当の私」に出会える入り口なのです。
では皆さん、できれば今、手を止めて目を閉じて、ゆっくりと深呼吸をしてみてください。
深く呼吸をしている間、あなたは「イライラしているお母さん」や「会社で働く会社員」でしたか?
おそらく、役割や感情から離れ、心の波も穏やかになったのではないでしょうか?
少しの間でも静かに呼吸をすると、荒波が穏やかな湖面のように鎮まり、心はまーるく落ち着いてくるものです。
この、まーるく穏やかな今のあなたが、「本当の私」という感覚に近い状態なのです。
そして、本当はこの穏やかでくつろいだ状態が途切れなく続いているのが、クリアで純粋な水晶のような「本当の私」です。
ヨガは、カラダと心はこの世界と関わるための道具
「心やカラダを使って、私は○○という役割を果たし、感情の波を経験しながらも、穏やかでくつろいだ状態で生きることがヨガのゴール」と、言われています。
私たちは幸い、カラダを持って生まれてきました。
そして「本当の私」は『色々なことを経験したくて、このカラダや心を使っているらしい』と思うと、自分に降りかかっている良いことも悪いこともユニークで面白い経験だと感じられるかもしれませんね。
さまざまな経験を通して、自分の気持ちが見えにくくなったら、ゆっくり深呼吸をしてみてください。
ほんの少しの時間でも、自分の中に渦巻く感情や考えをゆったりと眺めてみましょう。
自分が何を感じ、何を望んでいるのか?経験を味わい尽くしてみましょう。
そして、穏やかでまーるい自分と繋がったとき、幸せなステップに磨きがかかり、あなたらしい輝きが増していくのだと思います。
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