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【連載】「ヨガと人と。」~あの日のバナナが、今でも私に教えてくれること~
この連載「ヨガと人と。」では、ヨガ講師・ヨガインストラクターである私、山下真由実がヨガと出会ったこと、また旅先やヨガを通して出会った人、ヨガ哲学の教えから学んだことなど、経験したことを皆さんにお話ししていきます。
前回のお話しは『【連載】「ヨガと人と。」 ~ご飯を食べる=言葉を超えて広がる幸せ~』でした。
今回は『【連載】「ヨガと人と。」~あの日のバナナが、今でも私に教えてくれること~』をお話しします。
神さまへの捧げもの「プラサード」を用意した、ある日の出来事
「プラサード」とは「神さまへ捧げるお供えもの(食べ物)」のことです。
食べ物をお供えし、神さまの祝福や聖なる波動を受けたおさがりを、参加者がサットサンガ(サンスクリット語でサット(真理、純粋なもの)サンガ(集まり)の意味。みんなで集まって瞑想やチャンティング(マントラを唱えること)をしたり、スワミジ(ヒンドゥー教の修行するお坊さん)のお話を聞いたりします。)の最後にいただきます。
キッチン担当だった私は、朝のサットサンガの最後にふるまわれるこのプラサード作りの担当でした。
6時からサットサンガが始まるので大体4時半に起きて身支度を整え、キッチンに向かいます。
神さまへのお供えものですから、新鮮な果物を、心を込めて丁寧に切ります。(全員分となると結構な量になります。)それをなるべく美しく銀のプレートに盛り付けるのですが、ある日、私は大失敗をしました。
今回は、その時のお話です。
大量のバナナを用意した私に起こった出来事
プラサード作りの担当だった私は、いつものようにキッチンに行くと、その日は食材置き場に大量のバナナが置いてありました。
いつもだとリンゴやオレンジを切ることが多いのですが、リンゴをプラサードとして用意するにはキッチンにあるリンゴの量が足りないように思いました。
「よし、それなら今日はバナナにしよう!」と決めてバナナを切り出し、せっせと盛り付けはじめて1時間後、私は意気揚々とプラサードを会場に運びました。
その後約1時間半のサットサンガが滞りなく行われました。
さあ、最後にプラサードをみんなに配るぞ!とプレートを見ると、なんと朝に切ったばかりの美味しそうだった大量のバナナが変色して茶色くなっているではないですか。(涙)
悪くなっているわけではないのですが、なにぶん見た目的に美味しくなさそうな感は否めません。だからと言ってどうすることもできず、恐る恐る帰っていく人たちの前にプラサードのプレートを差し出すと…。
あ、やっぱりみんな取ってくれないです。そうですよねー!となりました。
ちなみに、プラサードは神様の祝福や聖なる波動を受けたおさがりなので、本当に悪くなっているものでない場合は美味しくても不味くても頂く、というのが基本です。(笑)
みんな横目でプレートを見るのですが、いつものように嬉しそうに一つとってほおばりながら帰る、ということはなく、ちょっと残念そうに会場から出ていきます。中にはとってくれた人もいましたが、少数でした。
ある女性は「うーん、今回は遠慮しておくわ。あなたに何かあるわけじゃないんだけど。」と伝えてくれました。
「それはそうだよな。」と納得すると同時に、食べ物であれば美味しさだけではなく、美味しそうに見えるように、心を配ることは大事よね、としみじみ思いました。
私は大量に残った茶色いバナナと一緒に、キッチンに帰りました。
余ってしまったバナナに申し訳なくて無念でしたが、とりあえずもうこんなもったいないことが起きないように、なんで変色をしたのか考えました。
どうやら変色を防ぐための絞ったライムの量が足りなかったのが、バナナが茶色くなってしまった原因のようでした。バナナの味はとっても美味しかったのに。
それ以来、さらに細心の注意を払って盛り付けを行うようになりました。
「プラサードを受け取っていくみんなが笑顔になるように」と願いながら。
受け取ってもらうための努力をすることも、ヨガ
私自身、ヨガのインストラクターとして日々活動をしているのですが、アシュラムでのプラサード作りの経験は、ヨガのレッスンを提供することと同じなのではないかと、私は思うのです。
例えるなら、プラサードでバナナを用意するときは『素材を大事に、食べてもらう相手のことを想って、味も見た目も美味しくつくる』ことであり、ヨガのレッスンを行うときは『ヨガの本質を大切に、自分の持っている想いと経験と知識を生かし、相手のことを考えて伝えていく』こと。
バナナを出すことと、ヨガのレッスンを提供することの本質は同じなのだなあと。
アシュラムでのプラサート作りの経験を生かしながら、私はこれからもヨガを伝えるインストラクターとして、ヨガを学び、心を尽くして教えていこうと、この原稿を書きながら改めて思いました。
あの時から時間は経っていますが、アシュラムにいたときのようにまたヨガの教えを学んだ気がしています。
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