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プロゲーマー・カワノ誕生前夜の話【新連載・Good 8 Squad カワノ備忘録 第1回】
はいどうもこんにちは、カワノです。今回eSports Worldさんからお願いされまして、定期的にコラムを執筆させていただくことになりました。
コラムの内容としては、ゲームの攻略とかそういったものではなくて、プロゲーマーの生活の実態はどうなのかとか、ゲームに関する時事ネタ(例えば香川県の“ゲームは1日1時間”条例)に触れたりだとか、「SFL」などの直近の大会に関しての感想だとか、最近人生に関して思うことだとか、本当に見境なく書こうと思っています。
まぁ、たまにはゲームの攻略のことも書くかもしれませんが、どちらかというと“僕がその時書きたいことを書く”ってのをイメージしてくれたらなと思います。
ただの日記にならないように、できるだけ皆さんの実生活に役立つように意識もするつもりです。
そして今回は初回ということで、まずは自分の自己紹介から始めたいと思ってます。
自己紹介と言っても、年齢とか体重とかじゃなくて、プロゲーマーを目指して、大学を休学して東京に出てきた時から、今に至るまでの話をしたいと思っています。意外にこういう話をしたことってなかったんで、いい機会かなと思いお話しさせていただきます。
休学してまで東京に出てきてやる気いっぱいの時の心情。
東京に出てきたものの、練習でも大会でも全然勝てない日々が続く時の心情。
大会で上位入賞し始めるも、じゃあお金が稼げるようになったのか、じゃあ仕事が来るようになったのかというとまったくそうではなかった時の心情。
僕の当時のリアルな心情の移り変わりを伝えることができたら幸いです。
『ストリートファイターV』との出会いから大学休学まで
最初に軽く、『ストリートファイターV』(ストV)を始めたころから、大学休学を考え始めたところまで話します。
なぜここを軽くなのかというと、特に面白い話ではないというか、別に『ストV』で生きていこうとは思ってなかった時の話なので、そこまで聞いてて重みがないと思うんですよね。俺も別に面白い話だとも思わないので軽くザっと話します。
まず『ストV』をいつから始めたのかというと、一応発売日初日に購入してプレイしました。最初は見た目で「かりん」を選んだんですよ。ただ、かりんは昇龍拳という必殺技を持ってないと知り、即やめました。
というのも、当時の僕は昇龍拳を持っていないと対空することができないと思っていたので、かりんを使ったら飛ばれ放題になってゲームとして成り立たないと思ったんですよね。かりんは通常技で対空することができるんですけど、始めたての僕にとっては対空=昇龍拳だったので、通常技で対空なんてつゆ知らず、「ケン」に移行しました。
そして一週間くらいで『ストV』自体をやめました。当時高2の終わりごろで大学受験を控えていたので、さすがにやってる暇ないなと思ってやめました。
本格的に始めたのは受験が終わってからです。
受験が終わって『ストV』を起動してみたら、その時ちょうど「コーリン」という新キャラが実装されたので、そのまま流れでコーリンをやることに。お金のかからない趣味として最高だなと思っていました。
そして、半年ぐらいでウルトラダイヤ(確か当時のRANKで500位くらい)まで昇格。この時はさすがに「俺、結構センスあるんじゃないか?」と自負し始めて、大会とかあれば行くようになってました。
プロゲーマーを目指したきっかけ
ここからまた3カ月ぐらいでグランドマスター(グラマス)という最高ランクまで上がったと記憶しています。そしてアマチュア限定の大会ではかなり活躍できるようになり、そこをふ~どさんに目をかけてもらって、第1回「SFL」に若手枠として出場しました。
そこでプロの方たちとの交流が増えて、僕もプロゲーマーを目指したいと思い始めました。
ちなみに、なぜ大学を休学してまでプロゲーマーを目指したのかというと、わくわくしたからです。
特にそんな崇高な理由があるわけじゃないので深くは書きません。ただわくわくして挑戦してみたいなと思ったからです。
今は休学ではなくもう完全に退学したんですが、大学をやめるってそんなにいい選択肢じゃないと思うので参考にしないでください。ふ~どさんにも軽く相談しましたけど、もちろん大学をやめることはすすめられませんでした。
もし自分が格闘ゲームをやめる時が来るとすれば、それは格闘ゲーム以上にわくわくするものに出会った時だと思います。
その時はおそらく格闘ゲームに中途半端に関わることはせず、スパっとすべてやめると思います。そういう僕の性格も、このコラムを通して知ってもらえたら幸いです。
ここまで軽くザっと話しました。ここからは細かく書いていこうかなと思います。
京都にいても東京のプロには追いつけない
そしたらまず東京にどうやって出てきたかって話をしたいんですけど、先ほども述べた通り、僕、大学を休学して東京に出てきてるんですよね。元々は京都でした。
もちろんそのころの僕ってスポンサーさんもいなければ、何らかのチームに入っていたわけでもないんで、収入源がないんですよね。無一文なわけです。ただ、東京には行きたい。
なんで大学を休学してまで東京に行きたかったのかというと、自分の『ストV』のレベルの上がり方が東京と地方じゃ全然違うと思ったから。
当時の『ストV』界隈ってオフ対戦会で練習するのが主流で、プロのみんなはオンライン対戦ではなく直接顔を合わせて練習をしていたんですよね。
そして、対戦が終わるごとにお互い意見を述べ合って切磋琢磨していくっていう環境でした。
当時の僕はまだアマだったのですが、一応東京に出る前から「SFL」に参加していたし、本来はプロしか入れないオフ対戦会にも、東京に行った時に期間限定で参加することができたんですよね。
期間限定で参加していたのが、東京に行く3カ月前くらいの話です。
その時初めて、プロが切磋琢磨している環境を見て、「あ、これは京都でオンラインでやってても絶対に追いつけないな」と思いました。
実際この判断が正しかったのかはわからないですし、プロを目指す人に「大学休学しろ」とか言うつもりもないんですけど、やっぱりその時の『ストV』界隈って他のゲームジャンルと違って、ネット対戦だけでうまくなるのは不可能だなって、僕は思いました。
なぜかというと、プロの人達はほぼネット対戦をしてなかったんですよね。さっきも言ったように、オフ対戦会が主流だったんです。
“上達するには自分よりうまい人と対戦するのが一番の近道”とよく聞きますが、そもそもネット対戦では自分よりうまい人と対戦する機会自体がなかったんです。
今でこそコロナが蔓延したりだとか、「SFL」が主流になったことで他チームと対戦しづらくなったりとかでオンライン対戦が主流になってますけど、当時は本当にオフ対戦が主流でした。プロとアマの差が一番激しかった時代だと思います。
「人に頼る作戦」で東京進出
僕はもちろんこの時から最高ランクにはいましたけど、最高ランクのアマチュアプレイヤー達や僕を10とするならば、プロ達は100くらいあったんじゃないのかなと思います。
だからまず自分の中で、プロになって大会で勝つための第一歩、それは東京に住むことだったんですよね。反応速度を良くするだとか、キャラの立ち回りを変えるだとか、コマテクを良くするだとかそういうのじゃない。第一歩は東京に住むことだと思ったんです。これが前提条件。
ただ、さっきも言ったんですけど無一文なんで、どうしたものかと思って、僕お得意の“人に頼る作戦”をすることに決めました。
みなさん、人に頼ることはめちゃくちゃ大事です。一人じゃできないことも人に頼ったらどうにかなったりします。
ただこの“人に頼る作戦”、問題点がありまして。
人に頼るためには人と知り合ってないといけないんで、もし今からプロゲーマーを目指したいと思う人は、できるだけオフイベントとか大会とかそういうのあったら出るようにしましょう。そこで人と知り合いましょう。
実際、この時に頼った人も大阪のイベントで知り合った人でした。名前は仮に、Aさんとしましょう。
このAさんなんですが、この方が今の僕の所属チーム「Good 8 Squad」(グッドエイトスクワッド。G8S)のマネージャーです。Aさんに頼ろうと思った理由は、Aさんがeスポーツに興味あるっていうのを元々話していて知っていて、実際ガチくんのマネージャーもしていたからです。
当時まだ「G8S」は発足されてなくて、ガチくんも個人で活動してる体裁だったんですけど、Aさんは「ゆくゆくはチームを発足して活動していきたい」とおっしゃってました。
あと一番いいのが、大阪に住んでいらっしゃるんですけど、東京にも事務所をお持ちだったので、この人に住ませてもらうように頼もうと思いました。
当時の僕は強くはなかったんですけど、アマチュア限定の大会で優勝してたり、若手枠で「SFL」に出てたのもあって、育成枠扱いで面倒みてくれるんじゃないかと思ってました。
また、Aさんに連絡する前に、ガチくんにもめちゃくちゃ推薦してもらうよう頼み込みました。ここでも人を頼っています。ガチくん、ありがとうございました……。
ガチくんとの出会い
ガチくんとはどこで知り合ったのかというと、ちょっと時系列を遡ることになってしまうのですが、ちょうどガチくんが「CAPCOM CUP」で優勝した年です。
ガチくんのブロックの近くにコーリン使いのももちさんがいたんです。そこでコーリン対策として対戦に誘ってもらったのがきっかけです。
もちろん超ボコボコにされるわけですよ。すごく悔しいんですけど、すごく楽しいんですよね。
なんでかっていうと、仮にも最高ランクではあったので、そんなに超ボコボコにされることってなかったんですよね。僕がプロと初めてラウンジ形式で対戦したのがこの時だったので、すごく新鮮でした。
ただ、とても悔しいなと思いました。
なので1回目はこうしてガチくんから対戦を誘ってもらえたけど、俺の力量を理解された今、ボコボコにされた今、もう対戦には誘ってもらえないかもしれないと思い、「今度は僕から対戦誘ってもいいですか?」とお願いし、毎日対戦をお願いして毎日ボコられていました。本当によく対戦を受けてくださったなと思います。
そういう日々が何日か続いたころ、さすがにガチくんが「ちょっと俺も他キャラの対策もせなあかんけぇ、今日はやめていい?」とついに断られました。逆にそれまでやってくれたことに対して感謝です。だってガチくんがももちさんのコーリンと当たるとしても3回戦とかでしたからね。
ちなみに余談ですが、ガチくんはその年の「CAPCOM CUP」、コーリンと当たることなく優勝しておりました。
(続く)
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