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【現地レポート+インタビュー】翔「WWは5戦ともフル稼働でがんばる」——『スト6』の公式大会のパブリックビューイングは生実況で大盛り上がり
2024年7月28日(日)、eSports Style UENOにて、『ストリートファイター6』の公式大会「カプコンプロツアー2024 ワールドウォリアー 日本大会」(以下、WW)の第1回パブリックビューイングが行われました。
WWは毎年2月に開催される世界大会「カプコンカップ」への出場権を争う大会です。全5回の予選大会で獲得ポイント数の高い3大会の合計ポイント獲得数上位者が決勝大会に進出し、そこで優勝すると出場権が得られます。
今年の日本大会はスーパーリージョンとなっており、予選大会の総得点の1位の選手にも出場権が与えられます。
オンライン大会をオフライン会場で生実況!
大会自体はオンラインで開催されるのですが、ベスト8からパブリックビューイングの現場にて、アールさんの実況、ハメコ。さんの解説、ゲストのストーム久保さんを迎え、生実況による配信が行われました。この生実況付きのパブリックビューイングはWWとしては初の試みで、第2回以降も開催される予定です。
生実況が入るのは16時以降となりますが、会場自体は12時半から入場可能。15時まで、対戦会として会場が使われます。対戦会の参加者にはひとり10枚のコインが手渡され、勝者が敗者からコインを受け取るようになっています。このコインを多く集めた選手が、対戦会の優勝者となります。
そして優勝したのは、モダンE.本田を使ったxyzUGU選手。まだ14歳と若く、格ゲー歴も『スト6』からで7カ月とのことです。賞品としてチョコレート効果を受け取っていました。
さて、パブリックビューイングですが、公式配信が開始される16時半からの開始です。すでにトップ8は決定しており、トップ8の戦いが始まるのが18時からなので、予選での注目カードを振り返りつつ、生実況解説をしていきました。来場している人たちの多くは結果を知っているものの、どんな戦いであったかはわからないので、試合の結果に一喜一憂していました。
熾烈な戦いを勝ち抜いたのは翔(かける)選手
いよいよトップ8の戦いが始まります。トップ8に残ったのは、ウイナーズサイドにカズノコ選手、オラリン選手、立川選手、翔選手、ルーザーズサイドにももち選手、shuto選手、えびはら選手、シュウジ選手の8名です。
ここのところ大躍進の若手が今回も入っており、ベテラン、中堅と満遍なくそろった印象です。特に注目なのが、若手筆頭と言えるひかる選手と同じエヴァeに所属するシュウジ選手とウイナーズに勝ち残ったオラリン選手。どちらも前作からプレーしている選手ですが、多くの人には知られていません。
昨年の翔選手や、先に行われたTOPANGA Championshipで優勝したこばやん選手のように、一気にスターダムに駆け上がるか注目です。また、ももち選手がルーザーズながらトップ8に残っているのも見逃せません。TOPANGA Championshipでも3位の好成績を残し、EVOでも日本人選手最高位の4位になっています。
使用するEDOの独自攻略によるドリームコンボを引っさげ、完全にキャラクターをものにした印象があります。他にもサウジアラビア行きを決めている立川選手や完全にトッププレーヤーとして君臨している翔選手など、どの選手も優勝の目は十分にある選手がそろっています。
そんな中、暴れまくったのがオラリン選手。初戦でカズノコ選手を破る快挙を達成します。続くウイナーズファイナルで惜しくも翔選手に負けてしまいますが、ルーザーズでえびはら選手を下し、グランドファイナルで再度、翔選手に挑戦します。ウイナーズファイナルよりも1セット多く取りますが、残念ながら快進撃もここまで。
翔選手がリセットも許さず、優勝しました。
しかし、オラリン選手の活躍は大会に大きな爪痕を残し、視聴者にその名を刻みつけたことでしょう。オラリン選手が使用しているキャラクターはケン。ゲーム調整や新キャラクターの参戦により、ケンを使っていた多くのプレーヤーが他のキャラクターを使い始めた中での活躍です。
昨年末から台頭してきたりゅうきち選手と同様に、まだまだケンのポテンシャルを引き出せるプレーヤーが居り、そしてケンの潜在能力の高さを示したといえるでしょう。
他の試合で注目だったのは、ルーザーズクォーターファイナルで行われたももち選手対立川選手戦。どちらも同じEDを使いますが、ももち選手の操作タイプがクラシック、立川選手の操作タイプがモダンという違いがあります。
ももち選手はED使いのトップのひとりとして君臨していますが、それを裏付けるのが同キャラ対決での強さです。公式の大会ではED同キャラで負けたのはEVOのエンディングウォーカー戦くらいなのではないでしょうか。
ただ、1セット目をももち選手に取られた後、立川選手はマノンに変更。2連勝したあと、ももち選手が取り返し、セットカウント2-2になります。そこで立川選手は再び、EDを選択。フルセットフルラウンドにもつれ込みながらも立川選手が勝利を収めました。先もいった通り、ももち選手にED同キャラでの勝利もありますが、力不足といわれているマノンを駆使し、2勝を勝ち取ったことが会場を多いに沸かしていました。
イベント終了後には、優勝者の翔選手のインタビューと、実況解説ゲストのインタビューを行うことができました。
翔選手への優勝者インタビュー
——優勝おめでとうございます。率直な感想をお聞かせください。
翔選手:ありがとうございます。EVOから帰ってきてから時差ぼけが酷くて、日中ずっと眠いって状態なんですよ。なので、あまり練習できていなかったんですけど、トーナメントの組み合わせの運が良く、自信のある組み合わせが続いたって感じですね。
——今年のWWは、ポイント1位と例年通りのファイナル優勝者の2名がカプコンカップへの出場権を得られるわけですが、今回の優勝でどちらもぐっと近づきました。現状ではどちらを狙って行く感じでしょうか。
翔選手:やっぱりポイント1位は狙っていきたいですね。それが難しかったらトップ8に入ってファイナルで勝ち抜こうと思います。なので「WWは5戦ともフル稼働でがんばっていかないと」と思います。まあ、5戦出ることで大会の実績や経験を積めるので、それはポイントとか関係なく価値があるものだと思っています。
——今回のWWではベガと豪鬼を使用していましたが、どちらも実装されてから間もないキャラクターでした。勝ちきれるまでの練度を上げた秘訣みたいなものがあれば、教えてください。
翔選手:『スト6』以前の僕の活動を知っている人は、道着キャラ(リュウやケン、豪鬼などの飛び道具と強力な対空技があるキャラクター)のイメージが強いと思うんですけど、実は結構いろんなキャラを使っているんです。まあ、そのほとんどはお遊びで使っているんですけど、『ストIV』の頃からいろいろ使っているので、新しいキャラクターを使うのに抵抗がないというのはありますね。
——次回のWWまでに結構時間が開いており、その間にサウジアラビアのeスポーツワールドカップやストリートファイターリーグが開始されるなど、さまざまな大会が挟まれるのですが、次回に向けての対策や他の大会との差別化などはあるのでしょうか。
翔選手:そうですね、大会ごとに絞って攻略するといような感覚はなくて、ひとつひとつの大会に向き合って、それぞれを攻略していくと言うのが一番なんじゃないかなって思っています。あとは自分の練度を上げていくことですね。
——今回、オラリン選手が活躍したり、TOPANGA Championshipではこばやん選手が活躍したり、ニューカマーの登場が目立っていますが、このあたりはどうみられていますか。
翔選手:そうですね、その点は僕自身が実績を残せたのが昨年からということもあり、なんともいえないところはあります。ひとつとしてはやはりゲームが変わったというところでしょうね。
あとはオラリンさんもこばやんさんも『スト6』から始めたプレーヤーではないんですよね。その前のタイトルからプレーしており、その経験値が生きて、今、花開いてきているのかなと思います。
——今回の大会ではグランドファイナルの相手がウイナーズファイナルと同じ相手でした。迎え撃つ立場として、同じ人と当たるのと違う人と当たるのではどちらが気持ち的には烙なのでしょうか。
翔選手:オープントーナメントだと同じ対戦相手だったとしても、対戦する順番が違うだけで、全然対策ができずに試合が終わってしまうことがあるんです。そういう意味では一度対戦した組み合わせの人ともう一度対戦する方が対策は取れると思っています。
TOPANGA Championshipでも好成績を残せたんですが、個人的には長期戦が得意だと思っています。なので、ウイナーズファイナル、グランドファイナル、グランドファイナルリセットと、3先を3回やれるのは、通して長期戦をやっていると思えるので、同じ人の方がいいです。
——ありがとうございます。
実況アール氏、解説ハメコ。氏、ゲスト解説ストーム久保氏インタビュー
——大会、おつかれさまでした。今年はカプコンカップが日本で開催されるということで、日本人選手は例年以上に気合いが入っていると思いますが、そのカプコンカップの出場権を争うWWを1回終えてみて、どんな風に感じましたでしょうか。
アール:WWだからというより、今年のイベントに対して、みんな気合いが入っているというのはすごく感じます。練習期間が決められているなかで、練習方法やキャラクターの選択をしなくてはならない上、結果を残さないといけないという選手は多いと思います。
こばやん選手やひかる選手のように、同じキャラクターを使い続ける人は迷わず打ち込めますが、そうでない人はどうやって2年目を過ごすかに悩んでいますね。特にベテランは時間との戦いに直面していると思います。
ストーム久保:オープントーナメントで誰でも出られるという状態で、上に残る選手ってかなりギラついた奴らが残るんですよね。今回はそれがあまり感じられなかったのは、プロライセンスを持っていなかったり、チームに所属していない人がかなり残っていたからかもと思っていました。
結局、トップ8には安定して強い人が残っているんですよね。
『スト6』はドライブインパクトやドライブパリィがあるおかげで、荒れるゲーム性なんです。それでも安定して勝ち残れるのは驚きですし、何かあるんだろうなって思いました。
まあ、その何かが解明できていないから、俺は勝てなかったんだろうなって、大会を観て感じました。今回はオラリン選手とえびはら選手が活躍していましたけど、まだまだ隠れた強豪が全然いるんだなと思いました。今後、4回あるWWではそういう人たちがもっと出てくる可能性があると思うと、すごく楽しみですね。
ハメコ。:例年と違いがあるかといわれたら、そんあことはないんだろうなって思った観ていたのが正直なところですね。今年のカプコンカップが日本で開催されることは、eスポーツワールドカップとかよりも日本においては価値があるぞと公言しています。
カプコンカップXIに対しては、全選手が出たいとは思っていると思うんですけど、結局レベルが高すぎて、毎回トップ8に入るという人がいるといい切れない状態。
あとは環境の違いですね。つい最近行われたEVOはPS5の環境でしたが、家に帰ってきたらPCの環境でやっていて、その調整をどれだけうまくやっていけるかと言うのを個人的にはみていました。大会スケジュールが過密すぎて、そういった環境の変化もあり、その状況でアベレージを出す厳しさはまさに短距離走なんですけど、それが連続することで長距離走であるみたいな。
『ストV』の頃はこういうスタイルで、海外に行ったり、戻ってきたりという感じだったんですけど、その頃が少し戻ってきた感じです。うれしい悲鳴でもあるんですけど、若手からベテランまでそろった今、よりベテランの方が体力的にキツくなってくるんだろうなと思っています。まあ、健康には気を付けてくださいねと。
——今回のWWは初のパブリックビューイングでの開催となりますが、これに関してはいかがでしょうか。
アール:単純にオフイベントが増えるというのはいいことだし、さまざまなオフイベントがある中、パブリックビューイングというのは、もっとも気軽に参加できるイベントだと思っています。
ゲームをプレーしたことがなくても参加できますよね。自分が思うオフイベントの良さって、コミュニティにふれることができることだと思うんですよね。ひとりが好きだと思っていたものが、コミュニティは他にもたくさんいて、そういうのが体感できる場なんです。
それを公式がやってくれるというのはいいですね。イベント自体の信頼感もありますし、参加もしやすい。
今回、第1回ということで、多分、こちら側が見えていない部分で、もっとこうした方がいいっていう改善点はたくさんあったと思います。それを吸収するためのアンケートも実施されていましたし、すごくいいものを作れるチャンスが生まれたよねって感覚です。
我々は公式と観客のちょうど間に居る立場なので、そういった観客や視聴者の意見を公式に伝えるというのはどんどんやっていきたいと思います。
ストーム久保:パブリックビューイングの仕事の依頼を受けて、最初は結構不安だったんですよね。どういう規模でやるかもわからなかったですし、どれくらい来場者があるかもわからなかったんです。でも、いざ聞いてみるとチケットは完売していますし、現場ではみなさん楽しんで帰ってくれたように見えたので、そこはすごく満足でした。アールさんもいっていますが、公式がやってくれるのは本当にうれしいんです。心強いですし。
あとは今回、上野でしたが、地方とかでもやってほしいと思っている人は多いと思います。先ほど、来場者とお話したところ、京都から来てくださった人とお会いしました。関西でやってくれれば、喜ぶ人は多いと思います。なんならカプコン本社でやりましょう!
——今回、無職久保として、初の公式イベントでしたがそこはいかがでしたか。
ストーム久保:もうちょっとやれることはあったかなとは思いました。どこまで踏み込んでいけるか、ちょっと迷いましたね。個人配信とは違い、公式なので、無職アピールとか個人的なことをやってもなぁと。
ハメコ。:公式がいろんなサイズのオフラインイベントを提案しているというのがまず本当にいいことですね。あとは、これを続けてバリューを高めるにはどういうことができるんだろうな、みたいなことはちょっと考えちゃいましたね。
今は『スト6』自体が盛り上がっているので、イベント自体は約束された勝利みたいなところがあって、そこから来場者の要求をに応えられる場として、どうすればいいかという。今回はGRAPHTさんのブースが出ていて、グッズ販売もしていましたが、海外でしか売っていないグッズをここで売るとか、そういうものがあれば、バリューが上がると思います。
——WWやパブリックビューイング自体のグッズもありませんでしたね。
ハメコ。:そういうグッズを展開してくれれば。イベントに来ていただいている人は『スト6』が好きで来ているし、最初から楽しむつもりで来ているので、つまらないと思って帰ることとはないんですよね。面白い試合ばかりでしたし。
しかし、そこは選手のみなさんのプレーのおかげなんですよ。さらに伸ばすにはどうすべきかという。そのあたりは、我々にはやれることが特になくて、あるとすれば実況解説の枠を超えた形での協力になるかなと思いました。
——ありがとうございました。
———
パブリックビューイングの前半では対戦会を行い、後半でトップ8のパブリックビューイングを行うというのは、参加型のイベントとしてプレーヤーとしては満足度の高いイベントだったのではないでしょうか。あとはせっかくオープントーナメントなので、対戦会と同時に現地でトーナメントにも参加できるシステムができればと感じました。
選手の負担も大きくなると思いますが、会場から参加するプロ選手がいたら、よりいっそう盛り上がるでしょう。今後もWWのみならず、さまざまな公式大会で、こういったパブリックビューイングが開催されることを期待しています。
©CAPCOM
撮影:岡安学
編集:いのかわゆう
【岡安学 プロフィール】
eスポーツを精力的に取材するフリーライター。ゲーム情報誌編集部を経て、フリーランスに。さまざまなゲーム誌に寄稿しながら、攻略本の執筆も行い、関わった書籍数は50冊以上。現在は、Webや雑誌、Mookなどで活動中。近著に『みんなが知りたかった最新eスポーツの教科書』(秀和システム刊)、『INGRESSを一生遊ぶ!』(宝島社刊)
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eスポーツを精力的に取材するフリーライター。ゲーム情報誌編集部を経て、フリーランスに。さまざまなゲーム誌に寄稿しながら、攻略本の執筆も行い、関わった書籍数は50冊以上。現在は、Webや雑誌、Mookなどで活動中。近著に『みんなが知りたかった最新eスポーツの教科書』(秀和システム刊)、『INGRESSを一生遊ぶ!』(宝島社刊)
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