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「LJL」キャスター・katsudionが語る『リーグ・オブ・レジェンド』への想い、「シュレリア」への感謝

『リーグ・オブ・レジェンド』(LoL)のプロリーグ「LJL」には、6名のキャスターがいる。「LJL」創設期からキャスターを務めているeyes氏とRevol氏、大学生リーグ「League U」のキャスターからステップアップしてきたイェーガー氏とリクルート氏、そして、プロ選手、コーチ、キャスターへと転身してきたLillebelt氏と熱い実況でおなじみのkatsudion(カツディオン)氏だ。
katsudion氏は、まだ『LoL』の日本サーバーがない時代から、『LoL』を日本に紹介しファンコミュニティを盛り上げてきた立役者のひとりでもある。特に『LoL』のファンタジーとしての世界観やストーリーを伝えることにかけては、日本で彼の右に出るものはいないだろう。
今回は、そんなkatsudionという人物がキャスターになるまでの道のり、日本のファンコミュニティ設立当時の話、“恩人”とのエピソード、「LJL」の発展とeスポーツ人気前後の『LoL』シーンの話など、あふれんばかりの『LoL』愛についてじっくりうかがった。
ライアッター「シュレリア」との出会い
──katsudionさんのSNSや発言を聞きながらいつも、コミュニティやファンに一番近い距離にいる方だなぁと思っていました。まずはキャスターになったきっかけから聞かせてください。
katsudion:パソコンゲームは高校生の時からやっていて、本格的に仲間と一緒に遊んでいたのは『チームフォートレス』というFPSゲームでした。友達と大会とかにも出ていたんですが、ある時カジュアル向けに競技性が変わって、ガチでやる感じじゃなくなったんですね。
そのあと、チームの友達が誘ってくれたのが『LoL』でした。忘れもしない2010年6月頃のことで、新チャンピオンが「ガレン」でしたね。
当時はNA(北米)サーバーだったんですけど、ものすごい偶然で、たまたま一緒に遊んでいたメンバーの中にライアットの方がいたんですよ。「シュレリア」って方なんですけど……。
──あのアイテムの名前にもなっている「シュレリア」さんですか?
katsudion:はい、僕の『LoL』はシュレリアのラムスに「こっちに来て!」って言われたら「はい!」ってついていく、そこから始まったんです。
──『LoL』のコアユーザーにはおなじみですけど、アイテム名って開発者の名前から来ているものが多いんですよね。
katsudion:そうですね、「シュレリア(の戦歌)」とか、「ランデュイン(オーメン)」、「グインソー(ダスクブレード)」とかもそうです。
チャンピオンの名前もライアット社員から来ていて、エズリアル、ライズ、トリンダメアなど、その名前で業務されています。エズリアルは「LJL」ができたときに日本に来ていましたね。
シュレリアにはその後も『LoL』を教えてもらったんですが、彼女から「日本で『LoL』のコミュニティを作りたいんだよね」っていう話があって。それで、現地の英語情報を日本で伝える「Runeterra.jp」というサイトの運営に参加したりしていました。あとは、日本でのコミュニティ大会を開くお手伝いなどもしていましたね。
──もう「ライアットの中の人」的な感じですね。
katsudion:あくまでボランティアでしたけど、そんな感じでしたね。サイト自体はもう影も形もなくなっちゃいましたけど。
一番思い出深いのは、今だと考えられないんですけど、開発チームしか入れないサーバーの中で、シュレリアがハロウィンのドッキリとして、一緒に遊んでいた僕らの名前をつけたアイテムを作ってくれたんですよ。
僕のアイテムは「カツディオン・グルーガン」。1Gで買えて、相手に使うと50%のスローが無限にかかるんです(笑)。
NAサーバーでは「katsudion」でした。
— katsudion (@katsudion) March 2, 2016
日本サーバーでも「katsudion」です。 pic.twitter.com/bR1Lj5EB9o
──凶悪すぎます(笑)。
katsudion:僕らは使うことはできなかったんですけど、スクショで見せてくれました。懐かしいですねー、「キャンディコーン」が今のポーションで、「レッドキャンディ」「ブルーキャンディ」が赤エリクサー、青エリクサーでした。
そんな『LoL』内でのシュレリアとの出会いのおかげで、『LoL』の世界観やストーリーから大好きになったんです。
ライアットの日本上陸を機に転職
──日本の『LoL』コミュニティがなかった時代から関わっていらしたわけですが、そこからキャスターとして本格的に『LoL』に関わるまでのいきさつは?
katsudion:当時は岡山県に住んでいたんですが、JCGのmatsujunさん(代表の松本順一氏)が開いていた「Tokyo Game Night」っていうゲームイベントがありまして。それが僕の初めてのオフラインイベント経験で、すごく楽しかったので、一度参加してからかなりの頻度で参加していたんです。
で、当時からゲームをせずに、イベント中に人前に出てしゃべっていたんですよね。実況の真似事のようなことをやっていて。思えばそこが実況を始めたルーツかなと思います。
──イベントの運営側から声をかけられたってことですか?
katsudion:いえ、ネットで放送しているときに自由に前に出てしゃべっていいよってことだったので、『LoL』の放送の時に「『LoL』わかる人~」と言われて自分から出ていった感じです。この当時から『LoL』クイズとかを出してましたね。
そんなふうにいろいろ『LoL』に関わっていた2014年に、「LJL」のファイナルが東京ゲームショウのロジクールブースで開催されて、「日本にライアットが来ます!」という発表がされました。
その頃は「Game 4 Broke」という『LoL』の情報サイトのヘッダー作成とかのお手伝いもしていて、このサイトを一緒にやっていたLotanさんと一緒に、会場でライアットの人から名刺をいただいたんです。
その時に、「『LoL』が日本に来て『LoL』が日本で流行るためにできることがあるんだったら、仕事やめようかぁ」って思ったんですよね(笑)。
「Game 4 Broke」は公式サイトもない中で、海外の情報を翻訳して提供する、日本のプレイヤーにとっての情報源だった。現在も継続している https://game4broke.blogspot.com/──なんかゆるいですけど、多分そこまでの経緯もあっての決断だったんですね。
katsudion:そうですね。そこから「東京ゲームナイト」つながりでmatsujunさんに相談して、2015年の秋頃に上京して、JCGで働き始めました。
『LoL』が流行るためになにかやりたかったので、JCGの『LoL』部門を担当して、大会の運営・作成・台本・選手管理・配信管理となんでもやっていました。
初実況は3日連続の海外大会「Intel Extreme Masters」
katsudion:ただ、なんでもやりたすぎて無理しがちだったのをLotanさんたちに心配されて、「やることをひとつに絞った方がいいんじゃない?」と言われたんですよ。
そこであらためて、自分は『LoL』のために何がしたいんだろう? と考えた時に、『LoL』の大会の配信を見つつ、「自分だったらこういうところをしゃべりたい」「もっとこういうところにふれていきたい」という気持ちがあることに気づいたんです。
2014年~2015年頃は、「LJL」ではほぼeyesさんとRevolさんだけで回していて、自分も実況が好きだったことと、他にやりたい人がいないのなら手を上げたい、ということで、eyesさんに相談しました。
──eyesさんとは以前からお知り合いだったんですか?
katsudion:はい、オンラインで交流があって。当時はただの友達だったので「アイちゃん」って呼んでました(笑)。eyesさんが初めて上京した時も一緒の新幹線に乗ってたんですよ。この時の岡山駅の新幹線乗り場で初めて会ったんですけどね。
──実際に初めて仕事として実況されたのはいつ頃ですか?
katsudion:当時JCGでやっていた「Intel Extreme Masters」(IEM)っていうインテル主催の海外大会です。その日本語実況放送をやらせていただきました。きっかけは他の方の実況を聞いていて、自分なりにもっと試合の内容や選手について深く語りたいと思ったため。「やる人がいないんだったら俺にやらせてほしい!」と豪語しちゃって。
会社からは決勝戦だけでいいと言われたんですけど、「決勝戦に行くまでの道筋があって、チームの戦いがあった上での結晶だから意味があるんだ!」と思ったので、時差もありましたが1日12時間、3日間の放送を、許可を取った上で全部ひとりでやりました。自分で台本を書いて、放送の告知なども作って、配信も自分の家で機材を持ち込んで……。
JCG時代のIEMでの実況アーカイブ。この時は一人だけだった。https://www.youtube.com/watch?v=l6VojWvwBRY
──それはしんどそうですね……。
katsudion:いままでで一番しんどい配信でしたね。当時は専属キャスターではないですし、時差を調整するために前の日からお休みをいただいて。深夜に始まって朝終わるので、寝ないように家でずっと立って実況していました。2日目がめちゃめちゃ眠くてしんどかったです。
そういう経験もあって、ゲームの知識も持っているし、eyesさん、Revolさんとも知り合って試合の見方もわかってきたので、キャスターに絞る方向でeyesさんに相談しました。もつ鍋屋で泣きながら話した記憶があります。
──泣きながら?
katsudion:今のままだとほかの仕事もやらなきゃいけないし、実況に絞ろうと思ってもJCGに入社して半年しか経っていなかったのでできないかもしれない。でも、実況に対する本気の思いを伝えて、結果的にeyesさんの弟子として実況を学び始めました。
matsujunさんにはご迷惑をかけてしまいましたが、あの時僕の今後について相談した上で、温かく送り出してくれたことには、今でも本当に感謝しています。
突然の「LJL」デビュー
──実際にキャスターとして「LJL」で活動し始めたのはいつ頃ですか?
katsudion:一番最初は、秋葉原のe-sports SQUARE AKIHABARA(イースク)で、アイドルのイベントや、Rainbrainさんと社会人リーグの実況・解説をさせていただいたりして、経験を積ませていただきました。「LJL」と頭についている番組で初めて出たのは、2016年の春のCSの入れ替え戦でした。
──この頃は選手もまだ映っていなかったですよね。
katsudion:オンラインでしたね。eyesさんから「LJL」でkatsudionくんにキャスターをやらせたいとライアットに相談していただいて、「じゃあ、1回やってみようよ」ってことになって。
見ている人からすれば急に僕が出てきたと思ったでしょうね。相手はRevolさんで、「エイプリルフールも近いしいいんじゃない?」という感じで。
あの時は息ができなかったですね。今までで一番緊張したと思います。
「LJL」でのkatsudionさんの初実況。https://www.youtube.com/watch?v=gDhjgvuaOLU
──今見てみるとどうですか?
katsudion:恥ずかしいですねー(笑)。この時はほんとに緊張してて、Revolさんが何言ってるのかわかんなかったんですよね。
そういえば、のちに隣で解説することになるDay1さんとLillebeltさんのどちらも、この試合に出てましたね。
情熱を届けるkatsudionスタイルのルーツ
──katsudionさんの実況というと、冷静と情熱を兼ね備えてるイメージがあるんですが、ご自身が実況をしていて、スタイルが固まった時期とか試合って覚えていますか?
katsudion:スタイルを探そうというのはeyesさんとも話していました。1年目は全然固まらなくて、2年目になってリールさんがコーチに復帰することになり、Day1さんに教えることにもなりましたし。2018年くらいからは割と余裕をもって楽しんでやれた気がしますね。
──実況のスタイルって、ご自身ではどう考えていたんですか?
katsudion:解説者によって変えたりもするんですけど、実況って結局、解説に何をしゃべらせるかなんですよね。でもスタイルを探していた時によく考えていたのは、選手がその時何を発信したいんだろうということ。すべてを感じ取って代弁できるわけじゃないんですけど、それをくみ取ろうとしていました。
自分がプレイしていても、「やってやったぜ!」って思うシーンとかはあるじゃないですか。そういうのを代弁したくて。感情表現豊かなのが自分の特徴なのかなとは、なんとなく思ってはいたんです。そこをもっと生かす方向性で。
──よくわかります。
katsudion:ブラウムが盾でADCを守ったときに、「うちのキャリーにさわるんじゃねぇ!」みたいなことを言ったり。相手を下げるのではなくて、見ている人も「フフッ」って盛り上がれるような言葉選びを意識しています。
よくキャスター仲間とも話すんですけど、実況とか解説ってそんなにみんな聞いていないですよね(笑)。ゲームしながら流し見している人も多いと思いますし。
──すみません、私もそうです(笑)。
katsudion:ですよね(笑)。だからこそ、どこで楽しませるか、が重要なんです。
もちろん、選手のすごさを伝えるのは大前提なんですが、やっぱりエンタメとして見てもらわなきゃいけない。でも『LoL』の試合って長いし、1日8試合もする中でどうやって見てもらうか、ということを常に考えています。
あと、昔はよく『LoL』のユニバースネタを挟んだりしていましたね。最近Twitchでも、「RUNETERRAカツペディア」という番組を久々にやってみました。
──3年ぶりだったそうですね。あんなに『LoL』について語れる人って、katsudionさんかRevolさんしか知らないです。

ヴィエゴ、ルシアン、セナなどが登場するイベント「光の番人」についてひたすら独り語りする「RUNETERRAカツペディア」https://www.twitch.tv/videos/1088384680
──そういう知識の深さをなぜ実況に生かそうと思われたんですか?
katsudion:まあ、単にオタクなんですよ(笑)。
僕、『ファイナルファンタジー』のアルティマニアっていう攻略本が子どもの頃に大好きで。めちゃくちゃ設定資料が細かく書いてあるんですよね。特に『FF8』のアルティマニアを超読みこんでいたんです。
そこから「設定厨」というか、裏設定とかを見るのが好きになった、という話を自分の配信でしたら、当時その本を作った方から「うれしいです」っていうDMをいただいて、すごく感動したのを覚えてます。
──それはファン冥利に尽きますね。
katsudion:そうですね。『LoL』も当初のキャラクターの設定は“雑”だったんですよ。「彼はこれこれこういう理由でリーグ・オブ・レジェンドに参加している、以上!」って感じだったんです。
でも、ライアットもファンたちがそういう設定が好きな人もいるってことを理解して、いまのようなかたちになっていきました。昔は「今週の新聞」みたいな感じで、「カーサスと誰かが喧嘩した」とかそんな感じでしたから。
絵描きとして見た『LoL』の魅力
──katsudionさんのTwitterを見ていると、それこそファンアートから海外の情報まで本当に幅広いですよね。実況のためのチェック以外であれだけの情報って、どうやって集めているんですか?
katsudion:Twitterで海外の人とかをフォローしているってこともあるし、見ていて気になったら調べたりはしますね。
あと、僕自身がイラストを書くこともあって結構絵描きの人をフォローしているんですけど、絵描きの人って愛が深いんですよ、みんな。とにかくカルマが好きとか、とにかくヨードルが好きとか。しかも絵って言語関係なく世界中に広がっていくんですよね。
そういう人たちって、チャンピオンの新しい情報とかが出た時に、僕よりもはるかに早くアップするんですよ。そういう情報をリツイートしたりもしますし、SejuPoroさんとかは情報網が広いので、彼女の情報を使わせてもらったり。あとは、ライアッターをフォローしておけば自ら発信してくれるので。
──それだけ『LoL』が好きとなると、『チームファイト タクティクス』、『レジェンドオブルーンテラ』、さらにスマホの『ワイルドリフト』とたくさんタイトルがリリースされていて大変ですよね。そちらもプレイされているんですか?
katsudion:『TFT』はたまにやります。最近はハイパーロールがあって気軽に遊べるので。『LoR』はカードだけ見ていますね。フレーバーテキストが必ずついてくるんですけど、そこに「へぇー」っていう情報が出たりするんですよ。『ワイリフ』も、モデルだけは見ていますね。
──モデル?
katsudion:3Dモデルがめちゃくちゃいいんですよ。『LoL』って最近はグラフィックのテクスチャーも上がっていてクオリティが高いんですけど、『ワイリフ』はエンジンから違っていて、立ち絵の代わりに3Dモデルがチャンピオン選択画面で出てくるんです。そのクオリティがめちゃくちゃ高くて、ディテールが見やすいんですよね。
絵描きさんならわかっていただけると思うんですけど、『LoL』ってゲーム内のグラフィックとスプラッシュアートが全然違うんですよね。どっちをベースに書けばいいの? って長年悩んでいたんです。『LoL』だとチャンピオンをぐるぐる回して見られないし、ゲーム内の3Dモデルを回しても結構デザインが違うんです。ヨードルとか頭のバランスがおかしかったりもしますから(笑)。
でも、『ワイリフ』はそれをすべて解決するレベルでグラフィックがよくて、かわいいんですよね。スマホということでちょっと露出が少なめになっていたりもするんですけど。


各種スキンも動き付きで360度眺められる。画像はアーリとアニー。スキンごとにモデルがあり、横や後ろ姿も眺められる
──ゲームをやるよりもグラフィックを見ていると。
katsudion:眺めてますねー。「LJL」でも試合の合間に出す応援ボードでカイ=サを描いたんですけど、『ワイリフ』ベースで描きました。
カイ=サ
— katsudion (@katsudion) January 24, 2021
ぬりえ pic.twitter.com/ozJV0ebH0D
──どこまでも深い『LoL』愛が感じられますが、eスポーツキャスターとしてほかのゲームの実況をしてみたいということはないんですか?
katsudion:あんまりないですね……キャスターとしての範囲を広げたいのであればその方がいいんでしょうけど、僕は『LoL』だからキャスターをやっているので。
実際、ライアットゲームズからいろいろなタイトルがリリースされたので、結構考えたんですけど、やっぱりFPSならFPSでもともとそのジャンルに精通した方がいるし、そういう方がやるのがいいと思いますし。
──他に趣味とかはあるんですか?
katsudion:最近はツーリングが今一番楽しいですね。中の仕事が増えるほど外に行きたくなってきて、去年大型免許を取ってホンダのRebel 1100に乗ってます。
「ゆるキャン」ってアニメが好きで、最初は125ccのモンキーが好きだったんですけど、免許を取っているうちに「遠出したいな」と思い始めて。そうなると排気量が大きくないときついので大型にしました。まだソロキャンプはしていないんですけど。
究極の質問・『LoL』をオススメするいい方法とは?
──これだけ『LoL』というゲームが大好きなkatsudionさんなら、『LoL』の魅力を伝えるのも上手だと思うんですが、『LoL』にふれたことのない方に『LoL』の楽しさをどうやって伝えればいいでしょうか?
katsudion:それが難しいんですよねぇ(笑)。『LoL』にどう誘うかって、おそらく全プレイヤーが悩んでいると思うんです。
やり始めたら楽しいんです。でもひとりで始めると心もとないから5人で始めるのがいいと思うんですけど、5人集めるのがとても大変なんですよね。
──katsudionさん自身は、最初は『LoL』のどこが楽しかったんですか?
katsudion:単純に初めてふれるゲームだったから、ということですかね。上から見下ろす視点のゲームをやったことがなかったので。マウスクリックでキャラクターを動かすということにまず慣れなかったですし。「わー、気持ち悪い」と思いましたし。
結局、友達とやるのが楽しかったのかなぁ。一緒にうまくなってものすごく達成感が得られるゲームだから。
『LoL』を始めるのって、ゲームを始めるんじゃなくて、新しい趣味を始めるのに匹敵すると思うんですよね。時間のかけ方が(笑)。
ただ、始めるとむちゃくちゃいろんなことが広がるんですよ。eスポーツが楽しめるようになる。『LoL』の世界観とかも楽しめる。音楽もあるし、公式・ファンメイドも含めてたくさんのイラストやコミックなどの見て楽しめるものもあるし、小説もあれば映画もある。なんでもあるんですよ。

公式サイトには、コミックやストーリー、世界観の説明など、さまざまなコンテンツが用意されている
──私もサイラスのコミックを見て『LoL』への印象がガラッと変わりました。ラックスとガレンが兄妹で、ラックスがサイラスを逃してしまってとか……。
katsudion:『LoL』のストーリーの面白いところは、ゲームとは別のところでストーリーがいまだに進んでいることなんですよね。普通のゲームって「こういうキャラクターです」というストーリーは変わることはないじゃないですか。
でも『LoL』って、何年か経った後のゲーム内イベントで「死んでしまったと思っていた人が生きていた!」とか、変わっていくんです。その新しい物語によって、既存の別のキャラの物語にも動きが巻き起こったりする。それが「精霊の花祭り」だったり、サイラスのコミックスとして公開されたりというのが『LoL』のユニバースストーリーの進め方で。
だから、ずっと楽しめるんですよね。なので、早く(噂になっている)MMO RPGを出してくれ! と思っているんですけどね(笑)。
「Worlds」で再び男泣きを!
──katsudionさんの感情のこもった実況はすごく胸アツなんですが、そんなkatsudionさんが実況をしていて一番うれしかったことってなんですか?
katsudion:なんだろうなぁ……日本チームが世界大会で活躍すること、ですかね。
──また男泣きしたいですよね(笑)。
katsudion:いやー、涙もろいんですよ、僕(笑)。あそこまで「うわーーー、やったーーー!」って思えたことって今まで生きてきた中でなくて。
だって、うれしくて泣くことってあります? だからTwitterのトップにもずっと残してあるんです。あれ見ると今でも泣きます。
プレイインステージのROUND1を抜けて、ROUND2まで進んだのはあの時だけです。もしかしたら次に突破してもあれ以上の感情は湧きあがらないかもしれません。
DFMのタイブレーク観戦の様子です。ただただ、うれしい。 #Worlds2018 pic.twitter.com/9D3I1sQIzd
— katsudion (@katsudion) October 3, 2018
──そんな「Worlds」に出場するチームを決めるSummer Splitも佳境を迎えていますが(編集部注・インタビューは8月上旬に実施)、日本チームが世界で活躍するために何が必要だと思いますか?
katsudion:DFMが世界で通用するということを教えてくれたので、そこに勝てるチームが出てくるのが一番いいんですよね。それが「LJL」のレベルが上がっているということを表すわけですから。
シンプルに言えばリーグのレベルが上がらなければいけない。そこ引っ張っていくのは世界で結果を出しているDFMであることは間違いないんです。だから、ライバルと呼べるチームや選手がたくさん出てくるのが望ましいです。
同時に、これから始まるアカデミーリーグやスカウティンググラウンズを含めて、次世代の新人選手たちが活躍してリーグ全体が活気づくことが大事なのかなと思います。
──たしかに、世界では2部リーグなどもありますが、今の「LJL」にもっと若手が活躍できる場所ができるのはいいことですよね。
katsudion:そうですね。今期の「LJL」では新人選手を抱えるRJやAXIZが素晴らしい成果も挙げましたから、そういった活躍がどんどん増えていけばいいなと思います。
そうやって、国際戦で成果を出しているDFMに張り合えるチームが出てくれば、もっともっと「LJL」も国際大会も面白くなると思います。
そして勝ち上がったチームに対しては、「LJL」全体で応援できたらと思いますね。
『LoL』が僕を救ってくれた
──いまこうして振り返ってきて、岡山での安定した仕事を蹴って、まだ未知数だった『LoL』を仕事にするのは賭けだったと思うんです。『LoL』に対してどんな思いがありますか?
katsudion:なにより、『LoL』というゲームに救われたという思いがすごく強かったんですよね。
高校生の時、FPSをプレイしていてまるで認められず、全力でやっているのに「ゲームばっかやってんじゃねぇ」と言われていました。僕は勉強もしていたんですけど、親から見たらゲームばかりやりすぎと思われていました。
でも、友達と大会で勝ったりするとすごくうれしくて。僕にとってゲームは大事な存在だったんですけど、周囲には受け入れられない時代でした。
そんな中でライアットは「Worlds」という世界大会を作って、eスポーツが職業として成立するという環境を作ってくれた。自分が10代の頃にはまるで考えられなかったですが、ひとつの選択肢として、eスポーツでプロを目指すことが認められる世の中になったら、自分みたいな苦しい思いをしなくていい。
もうひとつは、シュレリアが本当に『LoL』を楽しませてくれたことです。シュレリアへの恩返しみたいなところも僕が勝手に思っているだけですが、今では『LoL』というゲームを盛り上げたいという気持ちの方が強くなっています。
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インタビューの中でkatsudion氏は、ことあるごとに「僕にできることをするしかない」という謙虚な言い方をしていた。
実況に対する評価は、それを見聞きしたファンが判断することだ。目の肥えた『LoL』コミュニティの声は、時に温かく、時に厳しい。そんなファンに対するkatsudion氏からの「僕にできること」は、ひとえにファンが「LJL」と『LoL』をいかに楽しんでくれるか、ということに尽きる。
「LJL 2021」の優勝はDetonatioN FocusMeが勝ち取り、いよいよ次は「Worlds」だ。世界中の猛者たちが集うヨーロッパの地で、選手自身が過去最強の布陣と口をそろえるDFMが活躍し、再び男泣きするkatsudion氏の実況を聞ける日が、今から楽しみだ。
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