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【「LJL」新人解説者・watanekoインタビュー】社会人から解説者を志した理由、盟友との出会い、「Summer Split」への野望を聞く

2023年6月9日 18:00配信
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いよいよ2023年6月10日(土)より、2カ月に及ぶ『リーグ・オブ・レジェンド』の日本リーグ「LJL 2023 Summer Split」が始まる。このリーグを勝ち抜いたチームは、賞金1000万円とともに、世界大会「Worlds 2023」への挑戦権を獲得する、『LoL』の1年間のシーズンの中でも最も盛り上がる期間だ。

そんな「Summer Split」を盛り上げるため、「LJL」キャスターに聞くインタビュー第2弾は、「LJL 2022 Academy League」(LJL Academy)から解説者として抜擢された新人のwataneko(ワタネコ)氏。

2023年の「LJL」デビュー時点からベテランの風格と安定感を漂わせるwataneko氏に、解説者に至るまでの紆余曲折、「Summer Split」のポイントや今後の目標をうかがった。


諦めきれなかった『LoL』の仕事


──watanekoさんというと、2022年の「LJL Academy」で解説をされていたということは知っているのですが、まずはあらためてそれ以前のご経歴から教えていただけますか?

wataneko:『LoL』自体は高校生の頃から始めて、ダイヤモンドまでスムーズにランクが上がりました。そこからちょっと調子に乗ってプロゲーマーを目指せるんじゃないかと、アマチュアチームに所属してかなり活動していたことがありました。

ただ、自分の実力が足りなかったり、スクリムでいい成績を収めることができず、結局は20歳を境に諦めることにしたんです。そこで完全にプロゲーマーという道は諦めて、社会人として就職したんですが、22歳の夏に会社を辞めることになり、半年くらいこれからどうやって生きていけばいいんだろうと、人生の分岐点にぶち当たってしまったんです。

そこで、「自分は本当は何をやりたいのかな……」と思った時に「やっぱり『LoL』だったな」と。ゲームやeスポーツの世界をまだ諦めきれていなかったんですね。じゃあ、今の自分にできることってなんだろうと思った時に、プロゲーマーは難しい、やれるならイベントスタッフかなと考えまして。

その中で、自分がやりたくて今からでも目指せるものとして、解説者を目指し始めました。23歳でeスポーツ専門学校に入って、そこでeスポーツ業界のつながりなどを知りました。

──そこで出会ったのが、「LJL Academy」でも組んでいたsyouryuさんだったと。

wataneko:はい。「LJL」の実況って結構ペアなので、解説の練習をするためにも相方が必要なんです。専門学校はみんな元々の目的が近いので、そこに集まっている光る人と一緒にやっていきたいというところで、syoryuっていうやつと出会って。そこで「LJLアカデミー」をやらせていただいたりっていう感じで、つながりを得たっていう感じですね。

wataneko氏とsyouryu氏の記念すべきデビュー試合


──転職活動の中で、プロゲーマーになる道はなかったんですか?

wataneko:そこはスキル的なもので、頑張れば伸びるかもしれないけど、その伸び具合は緩やかになってしまう。そうなってくると、「LJL」に入れたとしても上位層には届かない。当時はそういう考え方でしたね。

──そこから解説者としてデビューしたわけですが、「LJL」に入れたきっかけは?

wataneko:運営会社にSNSでダイレクトメッセージを送ったのが、「LJL」に関われた瞬間でした。ただ、それ以前にもコミュニティ大会とかで積極的に「やらせてください!」と声をかけたり、YouTubeで中国や韓国の大会を2人で勝手に実況・解説していました。やっぱりsyouryuのおかげでコンビで解説の練習ができたのが大きかったですね。

──その努力が実って2022年に「LJL Academy」に、そして2023年に「LJL」に抜擢されましたね。

wataneko:選ばれた時は本当にめちゃめちゃうれしかったですね。「LJL」はオンラインミーティングで採用していただけると聞いたんですが、syouryuと一緒にはできないということ、さらにNemoh君が一緒にやるということも聞いて、純粋に「LJL」に上がれる嬉しさだけでなく、ライバルもいる中で生き残れるのかという思いもありました。それでも、機会があるなら「Spring Split」だけでもと、やらせていただくことにしました。

ちなみに、syouryu氏もその後、Afreeca.TVでLCKの実況を務めるなど活躍の場を広げている


──パートナーと離れ、ライバルもいるけれど、解説者にはなれる……感情ごちゃまぜですね。

watanaeko:正直、自分の実力が「LJL」に足りているとも思っていなかったので、本当に運がよかっただけだと思います。「LJL Academy」の内容を見てもまだ改善点がありましたから。

「LJL」での見本となった先駆者、リクルート氏の存在


──いま「Spring Split」を振り返ってみて、自分でやった実況とか周りの反応とかはどうでしたか?

wataneko:自分の解説や話した内容は、本当にミスも多いしボロも多いし、全然ダメだなとは思っています。点数をつけたら30点くらいです。

──だいぶ厳しいですね……。

wataneko:そんな中でも、自分なりに楽しんでやれた試合もあり、視聴者目線で考えると良かった試合もあったと思います。ただ、自分としてはまだまだ満足できていません。

──端的に言って、自分にいま足りていないものはなんだと思われますか?

wataneko:これは甘えになっちゃうのですが、やはりひとつは「経験」です。「LJL Academy」の時は頭の中が整理できていた印象だったんですが、「LJL」では緊張とか先輩からのアドバイスとか、周りからの期待とか、いま振り返ると頭がパンクしてしまっていました。ここを気を付けてやろうと意識していても、試合中に緊張してうまくできなかったところはあります。

──でも、個人的には初回からものすごく慣れている印象を受けました。なんでそんなに最初から堂々とできたんでしょうか?

wataneko:実は家族以外には、23歳の時にeスポーツを目指し始めたことも、eスポーツの専門学校に入ることも、「LJL」を目指していることも、誰にも話さずにスタートしたんです。本当に自分ひとりでの勝負だという覚悟があったのかもしれません。

もうひとつは、僕と似たリクルートさんという存在がいらっしゃったから。とても尊敬していますし、見習っています。

──リクルートさんも「LJL」に参加したばかりの頃はいろいろな意見に苦しんでいましたよね。でもそこから相当努力されて、いまやファンに認められたように記憶しています。

wataneko:僕もリクルートさんの実況はずっと見ていましたし、本人に言ったら怒られると思うんですけど、初期の頃の解説動画はもう何回も何回も見ました。YouTubeの再生リストに登録してありますから。

──そういう意味では、Revolさんのようなベテランではなく、リクルートさんという同じような境遇の先輩の存在に勇気づけられたところもあったわけですね。

wataneko:そうですね。そこが1番大きかったとは思います。

実際にプレイして試したことを解説に生かすスタイル


──しゃべりにしても知識にしても、すごく堂々としていて相当な経験者なんだろうなと思いました。緊張しない秘訣みたいなものはあるんですか?

wataneko:秘訣ではないんですけど、「LJL Academy」をやっている頃から自分らしさが徐々に見え始めました。

というのも、やっぱり解説って色が分かれるというか、比較されやすいと思うんです。そうなった時に、もし自分が「LJL」に出られたとして先輩方と競い合える部分ってなんだろうってなった時に、元プロでもない、積み重ねもない、公式の場にも出ていないという「ギャップ」が使えると思っていました。

なので、多少解説が間違っていてもいいから、自信をもって話すとか、抽象的な内容で終わらないで一歩踏み込んで具体的に話すということを心がけていましたね。

──知名度が低くても「自信を持ってやろう」ということを心に決めていたわけですね。

wataneko:そうですね。自分が思っていること以上に話せることもないし、うそをついてもいけないので、思っていることをとにかく話そうとは思っていました。

──ちなみに、解説の時にリアルタイムで気を付けていること、人と差別化するために努力している部分っていうのはあるんですか?

wataneko:自分が肌で感じたことをそのまま伝える、ということです。

例えば、メタに上がっているこのチャンピオンが強いと言われた時に、もちろん活躍している動画とかプロの考え方も取り入れますが、まずは自分でプレイしてみて、本当にそれが強いのか、アイテムの変化を加えたら別の方向でも強いんじゃないかなど、プロと同じ意見なのかを考えていく。違ったとしてもそれを押し出そう、みたいな感じでやってましたね。

おそらく、先輩方はやっていなかった部分だったので、いちプレイヤーとしてランク戦も回しているというところもアピールしながら、思ったことを伝えるということをメインにしていました。

watanekoさんのYouTubeでは、話題になったピックなどを実際に使いながら解説する動画も好評。ランクも積極的に回している


──「Spring Split」での解説で、失敗してしまったこともありましたか?

wataneko:ヴァルスの「リーサルテンポ」の話とかは、本当に思っていたことだったので、あそこは絶対「ヘイルブレード」じゃなきゃダメだな、自分だったらそうすると思ったのですが、やりすぎてしまいましたね。

でも、半分笑いにしてくださったことがありがたかったです。頑張んなきゃって思えました。

BC vs SGの試合で、Loken選手が選択した「リーサルテンポ」に対する


──逆に、自分的にうまくいったところはどうですか?

wataneko:先ほどから考えていたんですけど、どうしても自分の解説で納得できた部分がなくて。

プラスの意味でとらえると、やっぱりSHG vs SGの試合は純粋に自分自身が楽しめましたね。真面目に取り組もう、みたいなスタンスではなく、純粋にいちプレイヤーとして視聴者と一緒に楽しめた実況・解説だったので、そういった意味ではあの試合が良かったですね。

──なるほど。お話を聞くまでは知識の宝庫みたいな方かと思っていたのですが、どちらかというとプレイヤー寄りの思考なんですね。

wataneko:そうですね。結構OTPとかミクロを抑えようとは動いてはいます。

──ちなみに、watanekoさん自身はどのレーンで何をメインで使ってるんですか?

wataneko:そこも結構バラバラで、最近ADCに大きな変更が来たのでADCばかりやっていましたが、例えばちょっと前にジャングルでジャーバンIVが強いのになかなかピックされなかったのが気になったので、自分でピックしたり。元々はミッドメインなんですけど、どのレーンもやります。

──では、一番好きなチャンピオンは?

wataneko:アジールです。あの先導者みたいなイメージがすごく好きなのと、三国武将スキンでリコールする時に囲碁を打つんですが、僕も小学生の頃からテーブルゲームが好きで、将棋、以後、オセロ、麻雀とインドアゲームを嗜んでいたので、なんだかシナジーを感じるんですよね。

三国武将アジールのリコール演出

【「LJL 2023 Summer Split」の注目選手、夏からの意気込みを語る!】


「Summer Split」の注目ポイント、メタの変化


──「Summer Split」に向けて、注目している選手やチームについてお聞かせください。

wataneko:一番気になっているのは、やはりDFMですね。あれだけ「MSI」で惨敗してしまって、メンタルの部分とか、直後の「LJL」でどう切り替えてくるのかなと。SGも新しいロスターが発表されて、最初からスタートダッシュを決められるような状況でもなさそうですし、SHGのこれからの動向と、DFMの1戦目の状況、メンタルの状況が気になりますね。

個人的には、SHGのDasher選手に注目しています。「Spring Split」の途中でも言っていたんですが、スケールメイジのビクターなどでは、どうしても対面のJett選手やAria選手を上回れないとインタビューで回答されていて。アカリやヨネのように序盤から動けるチャンピオンや、「MSI」を見た感じではジェイスなども使えなきゃいけないと自負されていると思うので、そこがしっかりクリアできて、初戦からピックできるかが気になりますね。

──Dasher選手はもともとすごく強い選手でもあるし、本来なら負ける選手ではないという意味で注目している感じですか?

wataneko:それもありますが、単純に自信を持ってピックできる状況下にあるのか、というところですね。うまいのは間違いないと思うんですけど、結局バンピックのところで、コーチとの話し合いとか、Dasher選手自身が自信を持ってピックできるかどうか。春は自分たちよりも下位のチーム以外にはそういうピックは出せなかったような印象があったんですが、Dasher選手次第でかなりSHGのチームの色が変わってくると思います。

──「Summer Split」での変化で言うと、試合フォーマットも変わりますよね。全チームがBo3の2周だったレギュラーシーズンがBo3の1周だけになり、プレイオフも全チームでのトーナメントになりました。試合形式の変化についてはどうですか?

wataneko:実質的にプレイオフまでの期間が短くなったということは、パッチの変化も少なくなります。そこが追い風になるチームもあれば、そうでないチームもあるかなと思います。

各個人でロールごとの動きがしっかりできているチームは、そのまま自分のロールの変更点だけを調整すればいいのですが、まだ勉強段階であったり、コーチからフィードバックしてもらっている選手だと、この短期間でプレイオフのトーナメント戦を勝ち上がるのはなかなか難しいかなと思いますね。

──要は、どちらかというと新人がいるチームには不利かなと。

wataneko:そうですね、あとはメタに左右されやすい選手ですかね。

──そのメタについては、「MSI」まではトップがタンクメタだったりもしましたが、何か変わりそうでしょうか?

wataneko:トップに関しては間違いなく、アイテムの変更具合からタンクメタからは抜けると思っています。ファイターが出てくるんじゃないですかね。例えば、リヴェンとかが出てくるとかなり面白そうです。

ミッドに関しては、やっぱり「MSI」でノーチラスが出たり、いまLPLでもニーコが出ているので、レーン主導権が取れるようなチャンピオンが出ると、回り回ってスケールメイジの出番になる。だいたいこのローテーションなので、またアジールが出るんじゃないでしょうか(笑)。

ボットは、ユーミとミリオがグローバルバンが終わってビックできるようになります。今まではユーミだけ警戒していればゼリ&ユーミを警戒できたんですが、ミリオもルシアンとのシナジーがあるし、2つバンしなければいけないチームは辛いでしょうね。なので、ボットの主導権が明らかに取れないようなチームは本当に苦しめられると思います。

──「MSI」を見ていても、いま中国が世界最強地域なわけですが、とにかくフィジカルが強いですよね。パッチの変更もその流れに沿っている感じなんでしょうか?

wataneko:個人的には正しい方向性だと思っています。eスポーツのあり方として、フィジカルが正義というのはある意味正しい。

『VALORANT』もそうなんですけど、マクロだったりマインドゲームで逆転できる部分はあるけども、やはり元はスポーツだと思うんです。サッカーで言えば足技がうまい選手がドリブルで何人も抜けるでしょうし、バスケであればひとりでシュートまでこぎつけられる選手がいる方が強いと思うので。そういった意味で、やっぱりフィジカルの強さが基盤にあるのが、eスポーツの新しいあり方かなと思います。

常にコミュニティに寄り添う解説者でありたい


──最後に、watanekoさん自身の「Summer Split」に向けての意気込みや目標をお聞かせください。

wataneko:ひとつだけ目標がありまして、とにかく「Summer Split」では「マッチアップ」について話していこうと思っています。

トップのマッチアップは絶対こっちが有利で、ミッドはこっちが有利なので、そこにジャングラーがこう考えて動けばこっちに行くはず、といった感じで。間違ってもいいので、明確な予想を打ち出す解説ですね。

──今までそれをしてこなかった理由は?

wataneko:要は「解説が言ってること間違ってるじゃん」とコメントで言われるのが怖かったんです。でも、賛否があるのは当たり前のことで、コメントが盛り上がればそれはそれでいいのかなと。

野球選手が高い打率を狙っていくような気持ちで、僕自身が思ったことを伝えて、結果的にどれくらいの打率だったのかを後で振り返ってみたいんです。それを毎年やりながら、精度が上がっていくようにもっと勉強すればいいかなと考えています。今まで恐れていた部分も話していければいいかなと。

そして、そういう話を自分から出していくためにも、今までkatsudionさんにおんぶに抱っこだったので、ちゃんと自分から話し始めるコミュニケーションにも注目してほしいです。

実況解説が始まるとどうしてもkatsudionさんから振っていただく方が多くなります。katsudionさんもいろいろな解説者と組んでいますからね。なので、僕は今回そこをあえて、自分から話し始められるように頑張りたいです。

──この先のキャリアについて、目標はありますか?

wataneko:コミュニティに寄り添う人間でありたいと思っています。ただ、それがストリーマーなどの活動なのか、キャスターとしていろいろな番組に出演していく形なのかは、まだわからないですね。

個人的にいま企画しているものもあるので、いろいろなことにトライしていった結果が自分のなりたいものなんじゃないかなと思っています。

──一貫してプレイヤーとしての視点を忘れず、という感じですね。あまり有名になったり偉くなったりして、一目置かれる存在になるというよりは。

wataneko:そうですね。僕自身、解説者を目指していなかったら、ひとりで配信してお酒を飲みながらあーだこーだつぶやくおじさんになっていたと思いますし(笑)。

──ちなみに、「LJL」の解説者は専業ですか?

wataneko:ほぼ他の仕事はしていないです。というのも、唯一やっているアルバイトが高校生向けに『LoL』について教える高校の講師なので。といってもフリーランスの講師という感じですね。

──まさに『LoL』漬けの日々ですね。夏には全国高校eスポーツ選手権とか「STAGE:0」もありますしね。

wataneko:そうですね。みんな熱心に『LoL』をやってくれているので、僕も一生懸命教えています。真面目で活気のあるいい子たちばっかりです。

──高校生くらいから「LJL」の解説者に『LoL』を教えてもらえるなんてうらやましいですね。ぜひ世界で活躍するプレイヤーが輩出できるように頑張ってください!

wataneko:はい、彼らのように『LoL』に熱中して楽しんでくれる子たちのためにも、これからの活動も頑張ります!


watanekoのTwitter:https://twitter.com/LoLwataneko
watanekoのYouTube:https://www.youtube.com/@LoLwataneko

LJL 2023 Summer Splitの詳細はこちら:
【決勝戦は待望のオフライン開催!!】「LJL 2023 Summer Split Finals」が幕張メッセで8月20日開催! 6月10日よりレギュラーシーズン開幕!
https://esports-world.jp/news/29467
【LJL新シーズンのメタを予習!】「LJL 2023 Summer Split」Preshow番組が6月10日16時より放送!
https://esports-world.jp/news/29468

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