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【『LoL』“新人”解説者 eyesインタビュー】 「いい悪いをはっきり言う解説が、いまの日本の『LoL』シーンには必要」
新リーグ「LCP」で物議を醸したeyes氏の「良くないです」
1月17日(金)に開幕した『リーグ・オブ・レジェンド』(LoL)の新たなアジアリーグ「LCP」。そのデイ3のSHG戦で解説を担当した“新人”eyes氏が、視聴者に驚きを与えた。
eyes氏が実況から解説へ回り、新人のsyouryu氏が実況を担当したことも驚きだったが、何よりも解説の内容がこれまでの「LJL」とは一線を画していたからだ。
言葉を選ばずに言えば、SHGのプレーに対して“キレた”ようにも見え、視聴者からのコメントも「いまの日本に必要な解説」「正論」と支持する声がある一方、「eyesさん、怖い」といった賛否両論が巻き起こった。
なぜeyes氏は、日本の『LoL』シーンが大きく変わるこのタイミングで解説を担当することになったのか。解説者を引き受けた真意、そして刷新された「LCP」「LJL」への思いを聞いてみた。
試合の流れを読み解くという新しい視点
──先日syouryuさんにもインタビューしたのですが、eyesさんとの初コンビとなった「LCP」での解説を聞いて、「これはeyesさんにも聞かねば!」と思ってすぐにご連絡しました(笑)。そもそも、今年から解説を担当することになったいきさつは?
eyes:実況に関して、全盛期と比べると目の疲れなどもあり、実力が落ちているという自覚はありました。そんな時、運営の方から「以前担当していたアナリストデスクの評判が良かったので、解説をやってみませんか?」と声をかけていただいたんです。
自分にしかできない実況スタイルもありますし、実況もまだまだ続けていきますが、今のキャスター陣のバランスを見て、「アナリストデスクのようなことができるなら解説をやってみよう」と。
──新人のsyouryuさんとのコンビになりましたね。
eyes:syouryuくんはまだ公式大会では場慣れしていないので、実況のことも分かる僕と組ませたいという運営側の采配だと思います。イェーガーくんとリクルートくんのセットは崩す必要もないですし、katsudionはRevolさん、Nemohくんとコンビになっていますから。
──本題ですが、「LCP」Day3の解説について「かなりズバッと言われるなぁ」という印象を持ちました。eyesさんのTwitchを見ている方は「いつもどおり」ともコメントしていましたが、SHGに対して“愛ある苦言”だったのかなと。どんな思いがあったのでしょうか?
eyes:思い……そうですね、僕の解説は今まであまり「LJL」の解説では言われてこなかった内容だったと思います。ミニオン経験値かキルを取るかといった“プラマイゼロ”のような話は、僕が言い始めてから意識され始めたような気がします。
Day3のSHG vs CFO戦でのトップレーンでの少数戦、ジャングラーのcourage選手がファーストブラッドを獲得するも、深追いした結果Evi選手、Gaeng選手も取られ2-3トレードとなった場面で、eyes氏はファームとファイトの考え方を解説した
──マクロの戦術というよりは、試合運びの考え方だと思うのですが、日本チームのSHG戦だからああいう解説になったということですか?
eyes:いえ、以前からずっと「こういう話、誰かしてくれないかな」と思っていたことだったんです。
日本の視聴者って、キルを取ったら「おお!」って盛り上がるんですけど、そのキルが実は(試合全体で見たら)マイナスになっていることもある、という視点での解説はあまりなかったんですよね。たとえば、2ウェーブ分の経験値とゴールドをロストしてしまっていても、キルを取ったというアクションの方に注目する。もちろん、その場面場面によって解釈は変わるのですが、僕はそれをはっきり「ダメですね」と言おうと。
ここは僕自身も、自分が昔プレーしていた頃には詳しく理解できていなかった部分でもありました。もちろん、今までの解説者が悪いということではないので誤解しないでください(笑)。
──実況を担当しながら、そういう解説も必要だと考えていたわけですね。
eyes:そうですね。きっかけは一昨年から始めた「アナリストデスク」です。しかし昨年は「PCS」主体の配信となったために日本独自のコンテンツを展開しづらくなり、解説の機会が減ってしまいました。
なんというか……『LoL』のレベルをもう一段階上げるような解説が必要だと感じていたんです。そのためには、いいプレーはいい、悪いプレーは悪いとはっきり指摘することが必要だなと。ああいう見方ができるとプロシーンを見る時の目線も変わりますし、もっと『LoL』の奥深さをたくさんの方に知ってもらいたいというのが、僕の解説の一番の理由ですね。
2023年の「LJL Spring Split」では、実況・解説とは別のキャスターが試合を振り返る「アナリストデスク」が実施されていた
今の日本チーム、日本の『LoL』シーンに足りないもの
──「LJL」が世界でも下位ティアーなのは、日本のファンも選手も理解しているとは思いますが、日本の「LoL」シーンに必要なことはなんでしょう?
eyes:新しいリージョンの「LCP」は、日本も含めた地域のプロリーグなので、その意味では「LCP」は日本のホームです。もう「日本チーム頑張れ!」と“応援する場”だけではいけない。
どのチームも本当に行きたいのは、世界大会の「Worlds」のはずなんです。たとえ「LCP」代表になったチームが日本チームでなくても僕は応援しますし、「LCP」というリージョンが世界で活躍することを応援したい、という考えで今年の実況・解説をやっています。
──とはいえ、日本のファンとしてはやはり日本チームが気になります。eyesさんから見て、「LCP」での日本チームの現状はどう分析していますか?
eyes:SHGは、「ファイトで勝てたら勝利」という戦い方で、負けていてもファイトで勝てたからなんとかなっていた。けれど、今年も同じようにやろうとしても集団戦で勝てない、ということが頻発している感じがしますね。
昨年は、ミッドのDasheR選手がレーンで勝てていたから、アドバンテージがある上で戦えたんですが、今年はちょっと違います。スワップゲームになったり、トップレーンが1vs1でどうにかしなければならなかったり、ADC中心に中盤でゲームを支えきれなくなったり、レートゲームを見据えなければいけない時に味方がいないのにファイトしてしまったり……。
メンバーの入れ替えが大きかったので、チームとしてフィットするかたちを見つけるのに苦労している感じがします。ただ、徐々に良くなってきていますし、SHGはまだまだこれからだと思います。
──DFMはいかがでしょうか?
eyes:Aria選手を中心にチームを作っている印象がありますが、ADCのYutapon選手という大きな軸が抜けて、Milan選手とKakkun選手のどちらにするかが課題ですよね。
Kakkun選手はもともとミッドレーンをやっていただけあって、ポジショニングやスキルへの反応などの生存能力が高いです。ただ、突然ファイトが起きた際に「ここで3キル取るのか、すごい!」といった“ADキャリー”らしいシーンはなかなか見られません。Milan選手が体調不良で離脱してKakkun選手に託されていますが、その辺りがカギですね。
──日本チームが「LCP」で勝ち上がるためにはどんなことが必要だとお考えですか?
eyes:今までの「LJL」は対戦相手が国内でしたし、ある程度力量も分かっていましたが、「LCP」ではいきなりいろいろな地域の選手が入ってきてしまった。その上、ベトナムは1-2-1みたいな変則的な戦術もやってきます。
SHGに必要なのは、ドラフトプランに沿ってどっしり構えること。ミッドのFate選手はLCKの1部リーグで戦っていた選手なので当然うまいんですが、スーパーキャリーをするというよりは、チームを支えるユーティリティータイプの選手です。自分たちの強いかたちを見つけるのに時間がかかるでしょう。
逆に、DFMは相手のかたちよりもAria選手をキャリーにして、Guwon選手とのミッド-ジャングルで完結させるような戦い方をしているので、チームとしての完成は早い気がします。ただ、もっと試合数が増えてスワップなども起こっている間はいいのですが、ボットレーンが経験不足からフィジカル面で負けてしまうケースも出てきそう。そのあたりが早く解決されるのを望んでいます。
「LCP」初の日本チーム同志の対決はSHGが勝利。しかし「LCP」は1年間の長丁場。どちらもまだまだ成長の余地はある
「LJL」の変革で、日本の『LoL』レベルは上がる
──日本のプロリーグだった「LJL」の方は、アマチュアから参戦できるシステムに変わりました。こちらも賛否ありますが、率直にこの変化についてはどう考えていますか?
eyes:僕は、立て付けが変わったこと自体はいいことだと思います。
「LJL FORGE」の勝者インタビューで選手も言っていましたが、オープン予選になって「『LJL』に出て1勝したい!」という選手やチームがいるということは、高いレベルで試合をしたいと思っているプレーヤーがたくさんいるということです。
大会のレベルとしては、第一線で戦っていたプロや「LJLアカデミー」「LCPアカデミー」に出場経験のある選手とアマチュア選手とでは、やはりダントツに差があります。REJECTを見ているとそう感じますよね。
そこだけだと「『LJL』のレベルが下がった」とも見えてしまうのですがそうではなく、「LJLアカデミー」などに力を入れてこなかったという今までの「LJL」の悪い部分が見えたということです。
逆に、アカデミーで頑張ってきた選手からすれば今年の「LJL」はチャンスなんです。言ってみれば、元プロを倒しちゃえばいいわけで。そういう下剋上が見たいなと期待しています。
──たしかに、「LJLアカデミー」も「PCSアカデミー」もありましたが、メディアとしてもそれほど注目してこなかったという反省もあります……。「PCSアカデミー」はこんなに差があるものか……と思って見てはいました。
eyes:もっともっと強い選手がアマチュアやアカデミーから出てこなければいけなかったんです。ただ、当然「LJL」で戦っている選手たちも自分の地位を守りたい。マッチアップやレーン戦で勝てる方法なども簡単には広めたくないでしょう。それくらいプロは厳しい世界ですからね。
──eyesさんとしては、今年の「LJL」の方が日本の『LoL』実力は上がるかもしれないと?
eyes:僕はそちらの考えです。本人たち次第だとは思いますが、今年「LJL FORGE」に参戦しているDFMアカデミーのmomoくんとかrreくんみたいな次世代の子たちがなかなか上がってこれなかったのは、彼らの実力が足りていなかっただけではありません。
「LJL FORGE」に参戦中のKareha Childrenなんて、「U19eスポーツ選手権2024」や「STAGE:0」でも優勝しているのに勝てない。今の「LJL FORGE」で1勝1敗だとしたら、さらに上のリージョンに行くと多分大変なことになる。
要するに、これが今の日本全体の『LoL』のレベルってことなんです。
でも、その中でさらに「(アカデミーの選手たちに)上がってこいよ!」と思っています。Marble選手やKakkun選手のようにアカデミー出身で活躍している選手もいますから。
世界一のeスポーツで、日本チームが世界一になる姿を見たい
──2月26日からは「LJL FORGE」が再開されますが、見どころを教えてください。
eyes:視聴者やファン側の視点で言うと、「REJECTを倒すチームはどこか」というのが一番分かりやすいと思います。「LJL」の選手がフルメンバーでそろっているチームですから。さらに、「LJL」の第一線で戦ってきたSengoku GamingとAXIZが出て来るという話もありますし、第一線で揉まれてきた選手たちとアカデミー出身の選手たちの差が視聴者にも分かりやすくなります。
「LJL FORGE」ではREJECTが予選から全勝で圧倒的な強さを見せてきた。彼らを倒すのが誰かが最初の注目ポイントになる
アマチュアチームで個人的に気になっているのは、Sprit Quartz Gamingのジャングルのpopon選手。デビュー戦でカウンタージャングルをしまくっていて、「この選手、大丈夫か……?」と思いながら見ていたのですが、集団戦がめちゃくちゃうまくて、フロントを張る選手とpopon選手のバランスがすごくいいんです。
それと、エズリアルがめちゃくちゃうまくてビビったNight Capのsaru選手とか、VARREL Youthのトップのkkkkkkkkk選手なんてまだ16歳ですよ? この素材がまだまだ伸ばせるって思うとニヤニヤしちゃいますよね。
──とはいえ、同時視聴者数などを見るとどうしても「LJL」人気が落ちてしまったように見えてしまいます。
eyes:そうですね、視聴者もみんな目が肥えていますから、「LCK」を見ていればいいやという方もいるでしょう。
ただ、僕がなぜ日本で『LoL』に頑張ってほしいかというと、世界で一番プレーされているeスポーツタイトルで世界一になったらカッコいいというだけなんです。『VALORANT』も日本での視聴者は世界と比べてかなり多いですが、グローバルでは圧倒的に『LoL』の方が上ですから。
──そのためには、日本での『LoL』人口ももっと増やしたいですよね。ちなみに、これから『LoL』を始めたいという方にはどんな言葉をかけますか?
eyes:そうですね、『LoL』は1人でやるとつらいゲームなので、最初から友達と一緒にプレーするのが一番楽しいと思います。初心者同士で「これ何?」「わかんない」と言いながらやるのがいいですし、チームでやってみることで新しい発見があるかもしれません。
ソロQでの怒りを自分への成長に変えていくと、もっと楽しくなると思いますよ。
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eyes氏も語っていたように、これまでの「LJL」は目の前のファイトでの活躍=勝った負けたによる一喜一憂をフォローすることが多かったのは、「LJL」がガラパゴス化した国内チーム同士の大会になってしまっていたからだ。一部のトップチームを除き、残念ながら世界を目指すには厳しかったのは事実だろう。
今年から「LCP」が設立され、日本の選抜チームしか参戦できなくなったことで「Worlds」への道はかなり狭くなった。だからこそ、日本の『LoL』シーンは、アマチュアを含めてこれまで以上に強くならなければならない。その危機感と日本チームへの愛こそが、eyes氏の解説の真意だ。
個人的には、eyes氏のような解説を聞くことで『LoL』の深い知識が身につき、日本の『LoL』のレベルもアップするように思う。“新人解説者”のeyes氏の新たな挑戦と活躍に、これからも注目していきたい。
eyesのX:https://x.com/eyes1015
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