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【新連載・岡安学のeスポーツってなんだろう? 第1回】『モンスターストライク』の競技性

2021年6月23日 21:00配信
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最近、ようやく一般的にも浸透しはじめたeスポーツ。

ただし言葉的なもの、概念的なものとして周知しはじめているだけで、その実態を知る人はまだまだ多くありません。そこで、eスポーツをもっと知ってもらう為にこの連載を開始しました。

eスポーツとはどういったものかを知ってもらおうと言うものです。まあ、いまさらゲーム大会であるとか、競技性のあるゲームのことであるとかなどはさすがに省きます。


誤解されがちな「eスポーツ」という言葉の範囲


主に扱うのはeスポーツのジャンルやタイトルについてです。ひと言でeスポーツと言っても実は多岐に渡ったもので、eスポーツと言う言葉だけで括るにはざっくりしすぎています。

例えばフィジカルスポーツを例に取れば、スポーツそのものを示すものだと考えてください。

「スポーツ全般なんでも好き」と言う人も中にはいますが、その多くがスポーツの中でも「球技」の「サッカー」の「Jリーグ」の「浦和レッズ」が好きと細分化していきます。その人が野球を好きな場合もありますが、ともすればサッカーが好きすぎて野球を忌み嫌って居る人すらいる次第です。

eスポーツも同様で、『ストリートファイターV チャンピオンエディション』が好きな人が『鉄拳7』を好きであるかどうかはわからないですし、対戦格闘ゲーム以外にMOBAやシューティングが好きかどうかの関連性はないわけです。

なので、一括りにeスポーツと呼ぶにはカテゴリーが違いすぎてまったく別モノと考える方がよいでしょう。先に言ったように、同じeスポーツの括りにありながら、忌み嫌ってしまう場合もあります。

つい先日も、シューティング系のeスポーツ選手が、スマホゲームのeスポーツタイトルに対して「あれってeスポーツなのですか?」と聞かれたこともありました。ただ、話を聞いて見ると、そのタイトルの競技性をわかって居らず、勝敗は運や課金によって決まると考えていた節がありました。

eスポーツ関係者といえども、自分と関わりの薄いタイトルやジャンルについては、理解していない場合が多く、誤解を生みがちなのでしょう。

『モンスト』のeスポーツ性


第1回目は『モンスターストライク』を挙げてみたいと思います。これを読めば『モンスト』のeスポーツとしての佇まいやプロ選手の競技力の高さがうかがえるようになると思います。

『モンスターストライク』は言わずと知れた日本でもっとも課金されているタイトルです。なので、eスポーツでも課金額の高い人が強いと思われがちです。


もっとも日本でプレイされているスマホアプリの一つである『モンスターストライク』


しかし、『モンスト』のeスポーツ大会である「モンストグランプリ」や「モンストプロツアー」では、競技に特化したアプリ『モンストスタジアム』を使っており、課金とはかけはなれています。


eスポーツ大会では『モンスターストライク』ではなく、派生アプリの『モンストスタジアム』を使用しています


『モンストスタジアム』は、コラボキャラを除いたオリジナルキャラクターの★5以上の上位モンスターがすべて最初から使えるようになっています。つまり課金要素はありません。用意されたステージをいかに早くクリアできるかを競争します。

eスポーツ要素としては、まずそのステージでいかに最短でクリアできるかの攻略をしていく必要があります。将棋で言えば何手で詰められるかを考える作業です。

『モンストスタジアム』は4人のリレー形式でプレイしていきます。「ザコを処理するモンスター」「ボスにダメージを与えるモンスター」など最適解を考えると、どうしてもそれぞれに役割のあるモンスターを選ぶ必要が出てきます。そのため、思った通りの打ちだしができずミスをしてしまうと、手順が1つ伸びるのではなく、最悪4手遅れることになります。


XFLAG PARK 2020の「激究極スタジアム」でGVが4手で攻略した「光明なき魂の監獄」。同じく4手に挑戦したチームもありましたが、成功したのはGVのみでした。その様子は決勝戦第1試合(1時間41分頃)
XFLAG PARK 2020の「激究極スタジアム」でGVが4手で攻略した「光明なき魂の監獄」。同じく4手に挑戦したチームもありましたが、成功したのはGVのみでした。その様子は決勝戦第1試合(1時間41分頃)


例えば14手で倒しきる手順で考えていた場合、2番目のモンスターが対ボスになります。したがって、1回ミスするとボスを倒しきる能力を持つモンスターがいないため、1手遅れの15手クリアになるのではなく、もう一回対ボス用のモンスターの順番まで回さなくてはならず18手になってしまうわけです。

その為、保険としてボスに対応できるモンスターをもう1体入れておいたり、何度やっても手順通りにクリアできるように練習をしたりします。

なので、手順の最適解とその手順通りの操作が必要となってくるわけです。さらに1手、1手の打ち出しに関してはリアルタイム性となっているので、打ちだしの速さも重要になってきます。正確かつ素早い打ちだしができるところに腕の差が出てきます。


2チーム同時プレイの「バトルラウンド」の競技性


ここまでの話は、大会で言えばタイムアタックラウンドの話になります。モンストグランプリの決勝やプロツアーでは、タイムアタックラウンドはあくまでもバトルラウンドでのピック優先権を獲得するものであり、それで勝敗が決まるものではありません。

バトルラウンドでは、対戦する2チームで同じモンスターを使用することができないので、順番にピックをするドラフトが行われます。


タイムアタックラウンドの上位チームがピック選択権の先攻後攻の選べます。ピックは、先攻後攻後攻先攻先攻後攻先攻後攻の順番で行います


先で説明したステージ攻略の為の最適な手順は、理想のモンスターがそろっていてこそ。それがままならなくなることも当然あります。その時は理想のデッキに近い代替モンスターを選びますが、それが本当に代替として活躍できるかは微妙です。

そうなると、ピックで相手に取られたことを想定した攻略が必要となり、最適解ではないものの最適解に近い解法を用意しておかないといけません。ピック順はタイムアタックラウンドで好タイムを出した方に優先権があるので、最適解での練習も重要になってきます。

タイムアタックラウンドは、1チーム毎にプレイするので自分たちの実力のみが反映されますが、バトルラウンドでは2チームが同時にプレイし、どちらが早くクリアするかを競います。その為、相手の動きも重要となってきます。

相手がミスして優位に立てているのであれば、安全策で多少タイムロスをしてもミスを少なめに行けます。逆に不利であれば成功率が低いものの、一気にタイムを縮める手段をとるかどうかの選択に迫られます。もしかすると、安全策をとったにもかかわらずミスをするかもしれないわけですから。


プロでも「ダウン」が起きる理由とは?


『モンストスタジアム』では「敵のボスをいかに早く倒すことができるか」が競技の目的となっています。しかし、初心者がプレイすると早く倒す前に相手に倒されてしまう「ダウン」となってしまうことがあります。

プロチームやハイアマチュアチームにとっては、クリアすること自体はできて当たり前で、クリアだけを目標にすればほぼダウンすることはありません。それでも大会でダウンをしてしまうことが多々あります。


クリアする時間を重視するため、ステージのギミックに合わない特性を持つモンスターを選ぶこともあり、ミスがダウンにつながりやすくなっています


それは、ダウンするリスクのある行動をとらないと相手に勝てないことがわかっているからです。

バトルラウンドでは、ピックの戦略や相手の動きに合わせた行動が必要です。タイムアタックで必要だった攻略力と操作力に加え、対応力も重要となってきます。この3つが兼ね備えられているのがトップチームたる所以です。

もし、これから大会を観る機会があったら、上記で書いてきたポイントに注目してみてください。プレイの凄さが際立ち、『モンスターストライク』が競技性の高いゲームであることが即座に理解できると思います。

また、多くのeスポーツタイトルがそうであるように、自身が『モンスト』もプレイしたことがあるかどうかで、観戦の核が変わってきます。ゲームのルールを理解している人であれば、ピックの重要性がわかりますが、初心者の場合、モンスターの特性を理解していないので、そこは難しいと言えます。

「バトルラウンド」では、2チームの動きを同時に観なくてはならないので、観戦しやすいタイトルとは言い難い部分もあります。とりあえず、最初はどちらかのチームだけを観ておくのがオススメです。

1つのステージではいくつかのバトルに分かれており、バトルをクリアするごとに相手チームとのタイム差が表示されます。最初のうちはこのタイム差が広がったり、縮んだり、もしくは逆転したりすることに注目しておくと試合の流れだけは把握できます。


ミスをすることが前提の対戦


『モンストスタジアム』は、最適解を用意して、手順通りに行動すれば勝てる競技と言えます。ただ、その最適解がピックにより崩れ、対戦相手がいることでミスを誘発してしまいます。

つまり、『モンスト』はミスをする競技とも言えます。

実況はどのタイミングでミスをしたかを解説してくれるので、その重要度は高くなります。たまに、ミスと思える行動が実は仕込みで、それがそのチームならではの戦略だったりする面白さもあります。

『モンスト』はeスポーツの中でも特異な部類に入ります。対戦と言っても直接相手に攻撃することはなく、相手がいながらも自分自身との戦いになっています。

スポーツで言えば陸上競技や競泳のようなイメージでしょうか。ゲームや試合自体のルールはeスポーツの中ではわかりやすいというのも、陸上競技などに近いかもしれません。


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