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LANパーティー界の黒船が与えたインパクトとは? 「DreamHack Japan 2023」を振り返る

2023年5月18日 18:00配信
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5月13日と14日の2日間、幕張メッセにて「DreamHack Japan 2023 Supported by GALLERIA」が開催された。自分たちでPCを持ち寄って朝から晩までゲーム三昧で遊ぶ「BYOC」(Beyond Your Own Computer)を軸に、ゲーム、音楽、カルチャーなどが融合したフェスティバルだ。日本では「LANパーティー」というイメージも強いイベントだが、手作り感は一切なく、スポンサーも豪華で、インフルエンサー、VTuber、アーティストらのライブとゲームイベントが融合した華やかなフェスティバルとなっていた。

今回は、「eスポーツ」をキーワードとして初開催の「DreamHack Japan 2023 Supported by GALLERIA」を振り返ってみたい。

eスポーツイベントとしての「DreamHack Japan 2023」


「BYOC」自体は一般ユーザーがゲームを楽しむだけのものだが、本家「DreamHack」はeスポーツとともに成長してきた歴史がある。『リーグ・オブ・レジェンド』(LoL)の第1回世界大会が行われたのが「DreamHack」というのも有名な話だ。

このようにeスポーツとの密接なつながりがあるのは、DreamHackという会社が、欧州でeスポーツタイトルを多数運営するESLゲーミングの子会社だからだ。今回「DreamHack Japan」でも『ブロスタ』の世界一を決める大会「Snapdragon Mobile Masters」が賞金20万ドル(約2600万円)をかけて行われていたが、そのように大きな大会だと気づいていた観客がどれくらいいただろうか。



また、『Counter-Strike: Global Offensive』の大会や『Counter-Strike 2』の試遊が行われたのも、ESLとの関係性があればこそ。これらは日本で人気がないというよりも、世界で人気のゲームを日本で紹介する意味も含め、意義があったと言えるだろう。特にこれからリリース予定の「2」については、日本でも期待する声は大きいため、仕切り直しで人気を集められる可能性はある。


それ以外にも、『レインボーシックス シージ』では日本代表のDONUTS VARRELとアジア代表のDplus KIAによるオフライン決勝「R6S DREAM SHOWDOWN 2023」や、『LoL』の若手プレイヤーを発掘する「LJL 2023 Scouting Grounds」、『ぷよぷよeスポーツ』のプロとゲストが対決する「“Puyo Puyo Champions” Pro/Amateur Tag Team 2on2 Tournament」などもあったが、これらも公式なeスポーツ大会というよりは、エキシビション的な要素が強く、観戦イベントという雰囲気だった。



一方で、日本で人気のeスポーツタイトルを使ったイベント自体は数多く行われていた。『VALORANT』では、ZETA DIVISIONの女子メンバーとアイドルやアーティストが対希有する「VALORANT 女性プレイヤーエキシビションマッチ」、バーチャルeスポーツプロジェクト「ぶいすぽっ!」のメンバーが戦う「ぶいすぽっ! VALORANT紅白戦 Presented by GALLERIA」、『LoL』を使った人気ストリーマーによる共演「LoL The k4sen×DreamHack Japan」、アーティストやストリーマーが戦う「Apex Legends チーム対抗戦」なども、終始ファンが押し寄せる人気コンテンツになっていた。



eスポーツのファンといっても、ガチガチの競技シーンを追いかけているのは一部。多くはカジュアル層としてプレイも観戦も楽しんでいる人たちであり、そういった層が求めているのはヒリヒリした戦術による戦いばかりではなく、ジャイアントキリングやスーパープレイ、失敗も含めたエンタメとしての試合観戦だろう。

eスポーツの題材はあくまでゲームだ。ゲームをどう楽しもうが、プレイヤーやファン次第。賞金のかかった真剣勝負も、わいわい楽しむエキシビションも、リアルスポーツと同じようにeスポーツの楽しみ方として定着していると言える。大会がなければ「DreamHack」ではないというわけではないし、エンジョイイベントだから「DreamHack」と呼べないというわけではない。

BYOCとしての「DreamHack Japan 2023」


本家「DremaHack」は「BYOC」、いわゆるLANパーティーが中心だが、考えてみれば『LoL』は当時からすでにオンライン対戦が可能なタイトル。つまり、オンラインかオフラインかということと、LANパーティーで遊ぶということとは別の話だ。

今回のBYOCだけを見るとたしかに決して参加者は多くはなく、空いているスペースも多かったように思う。しかしこれは、今回の会場の条件が難しかったという理由もあったようだ。


LANパーティーでは、自分の機材を持ち込み、思い思いの装飾などを行うことが多い。グラフィックを飾ったり、コスプレをしたり、会場自体を配信したりもする。そういった大掛かりな機材を持ち込むためにマイカーで近くまで搬入することもできたのだが、本国を知るスタッフなどに聞いてみると、「海外と比べるとクルマで持ち込むという文化が日本にはあまり馴染まない」という声も聞かれた(逆に、精密機器ながら郵送などの体制はしっかり作ってあったことも付け加えておきたい)。




また、一般的には24時間ぶっ通しで楽しむことが多いが、会場のセキュリティの関係などもあり、21時まででスペースがクローズされてしまったことも、残念な部分だった。もし幕張メッセのあの巨大なホールで夜通し遊べるとなれば、それだけでも参加者は増えたに違いない。


また、日程が近いGWに日本最大のLANパーティー「C4LAN」が開催されたことの影響もあっただろう。ライバルというわけではなく、LANパーティー好きで「DreamHack」に参加したかった方も、日程と予算の関係で見送らざるをえなかったという人もいたのではないだろうか。

こうしたBYOCの条件は国によっても異なるため、一概に悪いというわけではないが、本家「DreamHack」を知る人からすれば「なにか違うイベント」と思った部分もあったかもしれない。

ただ、実際に参加された方を見ていると、2日間楽しそうにプレイしていたことも印象的だった。BYOC参加者限定の『Counter-Strike 2』の試遊も人気で、参加者だけのプレミアムな体験も楽しまれていたようだ。


また、機材の持ち込みが難しいという日本の条件に合わせて、BYOCの中でもスポンサーのGALLERIAが会場にゲーミングPCを、INZONEがゲーミングモニターを、IKEAがゲーミングチェアをレンタルなどで提供する体制もできていた。BYOCという言葉の固定概念にとらわれなければ、実はもっと気軽に参加できるイベントでもあったのだ。有料のBYOCスペースの外には、無料で試遊できるスペースも用意されており、気軽にゲームを楽しむ姿も見られた。


事前の告知や周知の時間がもう少しかけられれば参加者も増やせたかもしれないが、初年度でもあり、日本のLANパーティーの現状が知れたというところだろう。次回以降、BYOCの中でコミュニティ大会を今以上に盛り上げたり、サークルや仲間単位で参加できるようになっていけば、徐々に発展していける余地はあると感じた。


音楽ライブとしての「DreamHack Japan 2023」


「DreamHack Japan 2023」のコンテンツが発表されていく中で、大きな反響を見せたのは実はゲーム業界よりも音楽業界だったように思う。

今回はSMEが運営委員会に名を連ねていることもあり、音楽ライブイベントとしてのコンテンツが非常に充実していた。SNSなどの反応でも「あのアーティストが来る『DreamHack Japan』ってなんなの?」といった声が多数飛び交っていた。

参加アーティストも非常に豪華だ。13日(土)は岡崎体育、APOKI、7ORDER、KEIJU、OZworld、CHEHON、Creepy Nutsが締める。






そして14日(日)は水曜日のカンパネラ、ホロライブ、DXTEEN、iCON Z、ano、yama、日向坂46と、さまざまなジャンルから今をときめくグループが勢ぞろいした。





これらのライブを観戦するには、ライブチケットを購入する必要があった。チケットは座席指定券・もしくは自由席券があったが、2日間通し券のみ。そのため特に指定席がアーティストやイベントによって必ず空白が出てしまっていた。

ライブ目的の人たちにゲームも楽しんでもらうという試みは非常に良かったと思うが、ライブ自体をかなり詰め込んでいることや、アイドル、ヒップホップ、VTuberといったジャンルが多岐に渡るからこそ、休憩も兼ねて席を外す人も目立って見えた部分もある。特に、本来コラボしてほしいはずのゲームイベントの時間帯に、観客が目に見えて減ってしまったところは、次回以降の運営上の課題でもあるだろう。

逆に、特定のゲームイベントがライブ会場側で行われたため、ライブチケットでなければ見られないという逆の状況も生まれた。特にライブ会場のイベントのほとんどは配信が行われなかったため、見られずに悔しい思いをした人もいただろう。




音楽コンテンツとゲームコンテンツの親和性が高いことは間違いないが、両者を無理やり引き合わせても興味を持てるとは限らない。アーティストがもっと気軽にゲームコンテンツにも参加すれば、日本特有のゲームコンテンツとして爆発しそうな可能性は感じられた。

また、どのアーティストが参加したイベントもゲームタイトルはeスポーツで採用されているものが多い。真剣にプレイしている人もエンジョイ勢も一緒に楽しめ、アーティストの中にもゲーム好きは着実に増えている。ゲーム好きをカミングアウトしてくれるアーティストももっと増えていくだろう。


ゲームコミュニティにとっての「DreamHack Japan 2023」


もうひとつは、ゲームコミュニティにとっての「DreamHack Japan」という視点だ。

今回、ゲームコンテンツが行われたアクティビティエリアで、2日間ともに最も人が集まっていたのは、アーケードゲームを題材にしたゲーム大会のエリアだったことは間違いない。

13日(土)は『ストリートファイターIII 3rd Strike』による「Cooperation Cup」、14日(日)は『Virtua Fighter 5 Final Showdown』による「VFR Beat-Tribe CUP」。ともに18回もの歴史を誇る大会で、常連プレイヤーを中心に全国からこの日のために集結した。


アーケード筐体を多数持ち込んだこの空間は、他のイベントとは明らかに異質。昭和のゲームセンターの雰囲気を感じさせる、年齢層の最も高いイベントだった。かくいう筆者もこの世代のため、親近感も感じられた。

大会運営も実績を重ねてきたスタッフが中心で、「EVO」のようなコミュニティ大会の雰囲気が強い。なにより、観客のことよりも参加者のことを最優先していたのが印象的だった。


そして、試合が進んで使用筐体が減っていくと、座席を用意して観戦モードに切り替わっていく。配信は海外に向けてもネット配信されていた。


このような昔ながらのコミュニティにとっては、「DreamHack Japan」という大きなイベントで開催できることで、新たなプレイヤーを増やしたり、ゲームを知ってもらうきっかけになることは、ゲーセン文化を知るいちプレイヤーとしてもうれしい。

これらのタイトルはアーケード基盤の開発・生産も終了しており、メーカーとして新たな利益を生むわけではない。当然公式eスポーツ大会が開催されることもないだろう。

しかし、参加者たちは純粋にそのゲームが好きだから趣味として続けているのであり、eスポーツのような賞金がなくても、プライドと名誉をかけて戦っている。そんな大会をより多くの観客の前で戦えることは、選手にとってのモチベーションにもつながるはずだ。

そんな能書きをたれなくても、単にみんなで集まって対戦して、勝った負けたをやるのが楽しい、それくらいの気持ちでもいいのかもしれない。


ビジネスとしての「DreamHack Japan 2023」


「DreamHack」は2023年だけでもオーストラリア、ドイツ、アメリカ、スペイン、インドといった世界各地で開催される。それらすべてが同じフォーマットということはなく、国ごとにそれぞれの文化に合わせて発展してきている。日本流の「DreamHack」という意味では、日本国内のさまざまな企業の支援もありつつ、日本のファンが望むものを準備できていたとは思う。

まだまだ手探り状態に見えた部分も多かったことも確かだ。ライブ関連は早めに判明したものの、肝心のゲーム関連のコンテンツ情報が判明するのに時間がかかったり、チケットの仕組みもあって、ライブ部分とゲームコンテンツ部分が明確に分かれてしまったようにも思えた。eスポーツの世界大会が開催されるという割に、そのあたりの告知が弱いように感じたのももったいなかった。





ただ、一番大切な来場者がどれだけ楽しめたかという意味で言えば、「東京ゲームショウ」などと決定的に違うのは、メーカーや企業によるPR合戦ではなく、プレイヤーファーストであったということだろう。

試遊などのイベントにしても、朝から並んで整理券を獲得しなければ遊べないようなものはほとんどなく、会場内をブラブラしながらモバイルゲームやPCゲームに興じたり、懐かしいアーケードゲームを思い出したり、トークショーを聴いたりといったイベントへの参加のしやすさは、メリットにも感じられた。単に来場者が少なかっただけと言われればそれまでだが、スペースの取り方、ブースの配置なども決して無理はしておらず“ちょうどいい”規模感だったように思えた。

唯一残念だったのは、音楽ライブの部分だけが明確に分離されてしまったことだ。指定席でなければ管理が難しいことは百も承知だが、チケット制度さえ見直せればゲームと音楽、両方のファンがまだ見ぬ世界にふれられる大きなチャンスになりそうだ。

祭りの縁日を見て回るような感じで楽しめるゲームイベントは、あるようでなかなかない。ライブもゲームもトークも、何をやってもいい2日間、といったイベントとして、次回以降も内容もスペースも詰め込みすぎずに、ゲームを中心とした多様な楽しみ方を提案してほしい。


DreamHack Japan 2023 Supported by GALLERIA
https://www.dreamhackjapan.com/


ⒸDreamHack Japan 2023 Supported by GALLERIA

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