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【インタビュー】 『フォートナイト』がライフル競技の救世主に? 日本ライフル射撃協会がeスポーツオリンピック競技を作った理由

2024年10月23日 12:00配信
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パリ五輪で湧いた2024年7月、国際オリンピック委員会(IOC)は「eスポーツオリンピック」をサウジアラビアにて、2025年から12年間にわたり開催すると発表した。その対象競技の中に、eスポーツの世界大会などで絶大な人気を誇る『VALORANT』や『Apex Legends』のようなシューティングゲーム、『ストリートファイター6』や『鉄拳8』などの格闘ゲームを採用しないことは、過去のプレ大会でIOC自身も明言している。

しかし、実は2023年にシンガポールで行われたeスポーツオリンピックの前哨戦となる「第1回オリンピックeスポーツウィーク」にて、人気シューティングゲーム『フォートナイト』をカスタムした射撃競技のオリジナルタイトル「ISSF Challenge Featuring Fortnite」が採用されたのだ。

この種目=ゲームを開発したのが日本のクリエイターだったということをご存じの方は、どれくらいいるだろうか。


今回、シンガポール大会でのオリジナルタイトル採用のキーマンである公益社団法人日本ライフル射撃協会(JRSF) デジタル射撃 事業開発プロデューサーの成瀬兼人氏と、このeスポーツ射撃競技を生み出したHypolygon株式会社のヤノス氏にインタビューした。

日本のクリエイターがオリンピック競技種目を制作するに至ったきっかけをうかがう中で、eスポーツで人気のFPS/TPSタイトルが選ばれない理由、IOCが目指すeスポーツオリンピックの姿も見えてきた。

ゲームからeスポーツへ、そして競技から文化へと、eスポーツの枠組みが変わる過渡期を考えるきっかけにしていただければ幸いだ。


プロフィール

成瀬兼人
ゲームを通じた新しいコミュニケーションを提案するスタートアップ、株式会社Bufff 代表取締役CEO。大手ゲーム会社でゲームディレクター/プロデューサーを務めた経験を持ち、公益社団法人日本ライフル射撃協会(JRSF)のデジタル射撃事業開発プロデューサー、一般社団法人日本eshooting協会の競技専門委員会/国際渉外委員会の委員長を兼任。国際ライフル射撃スポーツ連盟(ISSF)にも所属している。
成瀬兼人(X):https://x.com/Bufff_naruse
公益社団法人日本ライフル射撃協会(JRSF):https://www.riflesports.jp/

ヤノス
『フォートナイト』内にオリジナルゲームを制作できる「UEFN」(Unreal Editor for Fortnite)をはじめとするメタバース制作において国内トップクラスの実績を持つクリエイティブスタジオ、Hypolygon株式会社のUEFNクリエイター。中学生時代に制作した渋谷スクランブル交差点でかくれんぼができるマップをきっかけに、映画「スパイダーマン」「ヴェノム」をテーマにした渋谷を駆け回るマップ、「渋谷マルチバースラン」に携わる。その後「コロコロ学園鬼ごっこ」「すずめの戸締まり公式メタバース」などを制作。
ヤノス(X):https://x.com/yns_fn
Hypolygon株式会社:https://www.hypolygon.co.jp/


きっかけは渋谷スクランブル交差点での“かくれんぼゲーム”


──今回の「第1回オリンピックeスポーツウィーク」で一番話題になったのは、既存ゲームタイトルが使われる中で、唯一オリジナルゲームだった射撃競技の『フォートナイト』だったと思います。それを日本のクリエイターが制作したと知って、本当に驚きました。そもそもどんな経緯があったのでしょうか?


成瀬:今回のプロジェクト発足のきっかけは、ライフル射撃競技を取り巻く環境として、競技人口の減少、競技施設の問題、銃への世界的な規制強化など、なにか手を打たないとこのままでは競技人口も減り、競技者年齢も上がり続けてしまう……という危機感からでした。

一方で、ライフル射撃競技自体は第1回アテネオリンピックから採用されている歴史ある競技種目で、ヨーロッパを中心に非常に人気があります。日本でも高校生や学生の部活動の中で競技をすることは多いのですが、学校を卒業するとやらなくなってしまうんです。

そのような課題の解決策として、JRSFとしてデジタル技術を用いたeシューティング競技と融合することで、競技人口を増やすためのアプローチをしたい、というのが最初のきっかけでした。


──ライフル競技といえば、パリ五輪では「無課金おじさん」が日本のSNSでも話題になりました。あれもシューティングゲームユーザーの声からでしたよね。

パリ五輪で時の人となったエアピストル トルコ代表のユスフ・ディケチ選手。ゲーム内の初期装備のようだと「#無課金おじさん」が話題となった


成瀬:そうですね。大会によってはビームライフル銃などを使う種目もあり、ある程度のデジタル化は進んでいます。そうした動きの中で、「第1回オリンピックeスポーツウィーク」では、JRSFとしてeスポーツとして遊べる射撃種目の開発を目指しました。

──その開発にヤノスさんが抜擢されたきっかけは?

ヤノス:当時僕はまだ高校生だったんですが、『フォートナイト』の中でオリジナルマップを作れる「Unreal Editor For Fortnite」(UEFN)という開発ツールを使って、渋谷のスクランブル交差点をモチーフにした空間でかくれんぼをするゲームを個人的に公開していたんです。それをソニーさんが見て、「ゲームを乗せて公開したい」というお話をいただいて。

マップ自体には現在もアクセスできる(マップコード:2982-3240-0290)


──ソニーから直々のオファーが?

ヤノス:そこから派生した2作目のゲームとして、映画「スパイダーマン」と「ヴェノム」のプロモーションイベントのためのゲームを開発し、大会を開催しました。


成瀬:そして、ちょうどこのマップが公開されたのが、私たちが「オリンピックeスポーツウィーク」でのeシューティング競技を作ろうとクリエイターを探し始めた頃だったんです。「なんかすごいクリエイターがいるぞ!」と、XでDMを送ったところから実現に至りました。

──『フォートナイト』がベースだったのは、ヤノスさんが作ったマップがきっかけだったわけですね。

成瀬:そのような理由もありますが、IOCでは「人を撃つこと」や「街の中で戦ったり街を壊すこと」はオリンピックの理念から推奨はしていません。既存のeスポーツ系シューティングゲームとの最大のギャップはそこにあります。

そのような条件の中で、オリンピックとeスポーツ(シューティングゲーム)をどのように組み合わせるかを考えた時に、『フォートナイト』だけが唯一「クリエイティブモード」(現「UEFN」)を開放しており、「これならガイドラインをクリアした競技を作れるのではないか」と考えたところがありましたね。

eシューティングの普及という側面で考えると、『PUBG』や『VALORANT』などでも「オリンピックエディション」のようなものを作れれば実現できると思います。ただし、メーカーがオリジナルモードを作るのも難しいでしょうし、なにより今回の開発にあたってはEpic Games側の協力も得られて、やりやすかったということもありました。


ターゲットはゲーマー。ライフル競技に触れるきっかけに


──「ISSF Challenge Featuring Fortnite」のゲーム内容について聞きたいのですが、基本的には『フォートナイト』の操作ですし、途中にある建築要素などはライフル射撃にはそぐわないように思ったのですが……。

ヤノス:もともと『フォートナイト』を使ってオリジナルのライフル射撃ゲームを作るというよりは、『フォートナイト』をベースにして、実際の競技に近いものを織り交ぜながら作っていく、というお話だったんです。

そこで、「ステージエリア」と「射撃競技エリア」に分けてコースを作り、『フォートナイト』を使った要素と、短距離射撃やクレー射撃などのライフル射撃を踏襲した要素を交互にプレーするようにしました。

──実際のライフル競技の選手がプレーした時に「これならライフル射撃と呼べる」と納得できるような、止まった標的を狙うゲームなのかと思い込んでいたので、初めて見た時に建築要素があったのには驚きました。

成瀬:その辺りはヤノスさんとも議論はしていました。細かいところでは、もう少し実際の射撃競技っぽい標的に見せたりすることや、クレー射撃で標的に当たった時に吹き飛ぶ演出を入れたりすることなど……。途中で何回か、IOCやISSF、JRSFにも監修・確認してもらいながらの作業でした。

──監修の際には「もっと実際のライフル射撃の競技に近づけてほしい」といった要望やフィードバックはなかったのですか?

成瀬:今回のそもそもの大目標は、「『フォートナイト』などのシューティングゲームプレーヤーに、ライフル射撃に興味を持ってもらうこと」でした。そのため、実際のライフル射撃競技に寄せすぎてしまうと、シューティングゲームプレーヤーに興味を持ってもらえない可能性があり、避けるべきことだと認識しておりました。『フォートナイト』のベースの上にトッピングするかたちでライフル射撃の要素を入れ込む、という作り方をしていきました。

──『フォートナイト』などのプレーヤーにライフル射撃に興味を持ってもらう、という方向だったんですね。

成瀬:そうです。そのため、ライフル射撃とは関係ないけれど『フォートナイト』では当たり前となっている、建築や編集要素も入っています。実際の大会を見てみると、『フォートナイト』のプロの中でも“縦積み”のやり方が違ったりもして、練習するための控え室内で互いに研究し合ったりする姿が見られました。

──シューティングゲームプレーヤーにライフル射撃競技を知ってもらうという形なら、こういう競技というのもわかります。ヤノスさんとして「ここをもっとこうしたかった」とか、当時はできなかったけど今ならよりよいゲームにできたという部分はありましたか? 個人的には、クレー射撃が標的が横移動するだけで、もっと本物っぽく遠くを飛ぶようなイメージの方が良かったんじゃないかと思ってしまったのですが……。

ヤノス:実は、制作当時は「UEFN」がリリースされてから半年くらいの時期だったので、僕自身がまだ「UEFN」に適応できていなかったという事情もありました。短距離射撃もクレー射撃も終盤の遠距離ライフル射撃も、標的自体は『フォートナイト』の既存のアセットにある同じ標的で、ライトで照らしたりして差別化しているだけなんです。今なら思い描いたものをゼロからなんでも作れます。

成瀬:私の理解では、ヤノスさんはもっとアーティスティックな領域が優れていると思っています。今回の作品も、ゴールに行くとマリーナベイやシンガポールの街並みが見えるのですが、本当は走りながら見えるコースにも開催地の街並みを再現できると、ヤノスさんのクリエイティビティが解放されて、さらにすごいリアルとデジタルの融合ができたのではないかと思っています。ただ、冒頭にお伝えしたIOCのガイドラインや景観の肖像権などの問題もあるので、これがギリギリのラインでした。


 「ISSF Challenge Featuring Fortnite」はeスポーツ×オリンピック競技の成功事例のひとつ


──実際のライフル射撃の選手からの反響はいかがでしたか? キーボードとマウスの操作はピストルを撃つわけではないので、まったく異なる競技ですよね。

成瀬:正直なところ、日本ライフル射撃協会でも世界ライフル射撃連盟でも、最初の段階では「なんだこれ?」という不思議な感覚だったと思います。そもそも彼らはリアルなスポーツが基準となっており、ゲームもそれほど遊ばない方が多いです。『フォートナイト』を見たこともない方たちからすればギャップはすごかったかと思います。特に建築や編集要素は見ていてもわからなかったと思います(笑)。

一方で、大会終了後の評判を聞くと、今回の「ISSF Challenge Featuring Fortnite」はeスポーツとオリンピックにおけるひとつの成功事例として語られているところもありました。

「第1回オリンピックeスポーツウィーク」の他の競技種目では、ゲームメーカーがスポーツ団体などを介さずに直接IOCと組んで進めていたり、既存のゲームやツールを使ってルールを定めていました。

そのような中で、リアルスポーツの団体が中心となり、デベロッパーとIOCと直接やりとりをしてオリジナル種目を作ったのは唯一のケースだったんです。しかもそれを、「JRSF」という日本のライフル射撃競技の団体が起点となって作り、ひとつの種目として成立させました。

グローバルで見ても『フォートナイト』というゲームは世界的に認知されており、およそ5億人ものユーザーがいます。eスポーツのビッグタイトルをオリンピックで行えるようなかたちに仕上げたことで、IOCからもプロジェクトを評価していただけたようには感じます。定量的に見ても、他競技と比べて視聴者数が多く、盛り上がりを作れたと感じています。

──ヤノスさんとしてはどうですか?

ヤノス:たしかに、大会後の評価とかはまったく聞いたことがなかったですね。そんな評価をいただけてうれしいです。


オリンピック種目に必要な要素とは?


──ここまでは制作者サイド、オリンピック委員会サイドからの視点でしたが、eスポーツファンやプレーヤーサイドからの視点で考えると、率直にいうと「これはeスポーツじゃない」と感じた人も多かったと思います。ゲームとしては成立していますが、かなり限定されたルールに沿った競技のためのツールという印象を受けました。ヤノスさんとして「競技種目」を作る難しさはありましたか?

ヤノス:僕としては、こういう動きをするだろうと想定してコースを作るというよりは、スタンダードでシンプルなゲームにした方が、競技としては幅広いものになると考えていました。できるだけ選手の動き方を縛らないように、割と広めに余地を残した方が面白い。そこのバランスはすごく難しいところですが。

──実際の大会のプレーの中で、そういった想定外の攻略なども見られましたか?

ヤノス:一番大きなもので言うと、中盤の中距離射撃でランダムに標的が出てくるところで、もともとはスナイパーライフルのスコープをのぞいて撃つ想定だったんです。ところが選手のひとりがスコープを使わずに、いわゆる「腰撃ち」を貫いて結果的に2位になったんです。作っている時に想定していた動きをはるかに超える攻略をする選手がいたのが印象的でした。

決勝でBoltz選手が見せた“腰撃ち”(右)。annon選手のようにスコープをのぞく撃ち方の方が多かった(https://www.youtube.com/live/7Isnxx1DkGw?si=q5kBvlCKJtkWTDAi&t=7842


──ちなみに、選手のみなさんにはどれくらい練習時間があったんでしょうか?

成瀬:今回はスケジュール的に完成したのが大会の2〜3週間前で、『フォートナイト』の他の大会も直前にあったため、選手もそれほど練習する時間はありませんでした。

私も、現地で大会運営の打ち合わせや選手の管理などをしながら控室で練習する姿を見ていたのですが、『フォートナイト』のトッププレーヤーが集まって、他の人の動きを見たり真似たりと研究し合っていました。

また、普段のゲーム中と違ってどのように操作しているかも見られたので、ほぼマウスが動いていないくらいのハイセンシの選手もいたりして驚きました。ある意味特殊な環境だったので、それぞれの戦略を見せ合いながら練習していたのが興味深かったですね。

──選手の人選については、今大会は招待制でしたよね。どういった基準で選ばれたのでしょうか?

成瀬:経緯としては、ライフル射撃競技が「第1回オリンピックeスポーツウィーク」で採用されることが決まったのもかなり直前で、ヤノスさんに開発依頼ができたのもギリギリだったんです。

本来であれば日本予選、地域予選などを経て世界大会に出場できるという流れは当然あるべきですし、一般参加者も公平にチャレンジできてこそオリンピックだと思います。実際そのようなお声もいただきました。次回以降の課題であると認識しています。

今後についていま公開されている情報では、IOCとサウジアラビアが「eスポーツオリンピック」を2年おきに12年間開催するということと、最初の大会が来年に開催されるということだけです。ライフル射撃競技は前回大会の成功のおかげで有力であると考えていますが、まだ最終的な種目は決まっていません。

──もちろん、JRSFとしては「eスポーツオリンピック」に関しても働きかけていく?

成瀬:そうですね。オリンピックはアスリートにとって特別な大会なので、協会としてもしっかりと働きかけていきます。前回大会でヤノスさんが作ってくださったマップをアップデートして、次回以降の大会にもつなげていきたいです。


日本ライフル射撃協会が描くeスポーツライフル競技の未来


──「eスポーツオリンピック」の競技タイトルは、シューティングゲームの面白さとは違うところで、競技として切磋琢磨する部分が必要だと思います。JRSFとして「オリンピックeスポーツ」のライフル競技は、今後どうあるべきだとお考えですか?

成瀬:これは私自身の思いでもあるのですが、eスポーツのFPS/TPSで人気のタイトル、日本では『スプラトゥーン3』なども含まれると思いますが、これらは時代に合わせて人気作品やヒットタイトルが生まれ、どうしても移り変わりも激しいですよね。『VALORANT』のプロが『フォートナイト』のプロではないように、選手もタイトルごとに分かれてしまっています。

それでは、TPS/FPSのプロの中で、果たして誰が一番うまいんだ? という統一指標があったらワクワクしませんか? 10年後、さらに40年後の大会では別のゲームが人気になっているかもしれませんが、標的を撃つというテクニックに関して誰がうまいのか、という根源的な射撃競技の上手さを競える競技タイトルを作れたら、個々のゲームタイトルにも依存せず、オリンピック競技としての価値が出せるのではないかと。

もうひとつは、昨年の『フォートナイト』の世界大会(FNCS)を視察した時も、選手はほとんどが男性でした。プレーヤー比率自体も女性は少ないと言われますが、非常にジェンダーバランスが悪い。

本来、世界の人口でざっくり男女が半分くらいいると考えると、eスポーツは男女のプレーヤー人口のうち半分の市場しか取れていないとも考えられます。IOCが掲げているオリンピックのアジェンダをeスポーツの中でも考えてみると、女性の種目を作るとか男女ミックスにするなど、オリンピックという枠組みの中ならできると思うんです。ちなみに、ライフル射撃自体も男女別の競技やミックスの競技があります。

このあたりはむしろ、既存のeスポーツ業界でも実現できていません。素直に平等性があって、みんなで楽しくできる世界になればと思います。

──逆に、リアルスポーツのライフル射撃選手がeスポーツに取り組む、というのはどうですか? これまで彼らが培ってきた射撃テクニックと、eスポーツ上でのエイムテクニックというのはまったく異なるものになるわけですが……。

成瀬:あり得るとは思いますが、現状はハードルは高いです。自然な流れで既存のライフル射撃競技をやっている人がゲームをやるのはギャップが大きいですから。

ただ、どこかで交わる世界線もあるとは思っていますし、そんな世界を創っていきたいです。

例えば、『フォートナイト』のインフルエンサーが実際のライフル競技を体験してみることで、射撃競技に必要とされる集中力やメンタルのすごさを感じられる可能性もあります。実際に「銃を撃つ」という行為自体が、特別なものであることは確かですから。

今は本当に模索しながらやっている段階ですが、もっと簡易的なレーザービーム銃で、それこそゲームセンターなどで遊べるようなものも出てくるかもしれません。グラデーションがありながら、ライフル射撃競技の選手とeスポーツ選手の双方に行き来が生まれてくると、それぞれのいいところが出てくるんじゃないかと思っています。

※ ※ ※

冒頭の「ISSF Challenge Featuring Fortnite」の試合動画を見て「こんなのeスポーツじゃない」と一蹴するのは簡単だ。ひとりだけで黙々とプレーするタイプの競技が、FPS/TPSのプレーヤーたちに向かないということも理解できる。

言ってみればそれは練習に近いものであり、既存のeスポーツにおける最終目的は点数を競うことではなく、FPS/TPSでのランクや対人戦での強さを誇りたいからだ。

また、ゲーム会社にとってプロモーションの一環でしかないeスポーツを、オリンピックという公共性の高い競技大会で採用することに無理があるのも理解できる。eスポーツの競技タイトルは、競技性だけでなくキャラクター性や純粋なグラフィックの人気、ゲームシステムなどでも移り変わる可能性があるからだ。

そういった難しい状況の中で、シンプルかつ選手のすごさが伝わるeスポーツオリンピックのライフル射撃競技の原型を、日本人が開発したということがなにより誇らしい。そして、ライフル射撃という競技に関して、いま最もオリンピックeスポーツに近い場所にいるのが日本なのだ。

初回となる「オリンピック・eスポーツ・ゲームズ」が実施されるのは2025年。世界的に人気のシューティングという競技は、他のeスポーツ競技と比べても最もオリンピックに適応させるのが難しい競技とも言える。

日本生まれのeスポーツオリンピックのライフル射撃競技が、今後どのように発展していくのか。そして、ライフル射撃以外にもどんな種目がeスポーツオリンピックに採用されていくのか、期待とともに楽しみに待ちたい。


オリンピックeスポーツウィーク2023:https://olympics.com/ja/esports/olympic-esports-week/
オリンピックeスポーツシリーズ:https://olympics.com/ja/esports/olympic-esports-series/

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