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自分に自信を持ってプレイすることが上達への近道【読売ジャイアンツ代表選手 吉田友樹選手インタビュー】
NPBとKONAMIが共催し、今年で3年目を迎える「eBASEBALL プロリーグ」。今、eペナントレースの全日程が終了し、eクライマックスシリーズ、e日本シリーズを残すのみとなりました。そこで、「eBASEBALL プロリーグ」で活躍する選手をピックアップし、インタビューを敢行しました。
第2回目となるのは、中日ドラゴンズの新井選手に引き続き、読売ジャイアンツの吉田友樹(よしだゆうき)選手です。吉田選手はeBASEBALLプロリーグ1年目からジャイアンツのメンバーとして活躍するだけでなく、『スプラトゥーン2』の人気プレイヤー・たいじ選手としても活躍しています。ひとつでも活躍が難しいeスポーツにおいて、まったく異なるジャンルのeスポーツタイトルで活躍できる秘訣を聞いてきました。
実際のプロ野球とリンクしているところがなにより面白い!
——さっそくですが、3年間プロ活動をしてみた率直な感想をお聞かせください。
吉田友樹選手(以下吉田):そうですね、「eBASEBALL プロリーグ」はほかのeスポーツの大会と比べて、規模が大きいなあと感じました。例えば、ステージも派手ですし、実況解説陣の豪華さなど、お金かけているなって気がしています。
また、選手として活動している上で、プロの選手として扱って貰っているのをひしひしと感じます。今シーズンは新型コロナウイルス感染症の影響で、オンライン・無観客での開催となってしまいましたが、2年目の2019シーズンはフジテレビなどを会場として開催し、観客を入れて、演出もすごかった。1年目も規模的にはすごいと思っていたんですけど、2年目はさらにグレードアップしていました。
年々、「eBASEBALL プロリーグ」のファンも増えてきているのも実感しており、昨年は多くの方にe日本シリーズに来てもらえました。最初の頃は、プロ野球チームのファンが応援してくれているという感じだったんですけど、だんだんと「eBASEBALL プロリーグ」のファンとして来てくれているのがわかりました。
——確かに1年目の大会では、選手というよりはマスコットのファンだから来たとか、「eBASEBALL プロリーグ」がまだそこまで認知されていないという感じでしたもんね(笑)。
吉田:そうですそうです(笑)。
それが2年目以降は僕自身のファンが来てくれるようになったり、「eBASEBALL プロリーグ」のユニフォームを着て応援に来てくださっているので、とてもうれしく思っています。
それだけに、ファンの方々にもよりいっそう楽しんでいただきたいですね。ひとつひとつのプレイにお客さんが声だして応援してくれているので、より魅せられるプレイを心がけたいとも思いました。
——確かに、チームとしてはもちろん、一個人として応援してくれるファンというのもうれしいですよね。ほかに、なにか感じたことはありますか?
吉田:なんといっても、実況や解説の方がプロ野球中継をするアナウンサーであったり、プロ野球OBの解説者であったり、実際にプロ野球に関わっている人が来てくれていたことですね。
ゲームの解説だけでなく、実際の野球とからめて解説してくれるのは感動しました。『実況パワフルプロ野球』(以下、パワプロ)はゲームなので、ゲームならではの仕様もあるんですけど、そういったプレイも実際の野球に例えて話してくれるので、『パワプロ』についてわからない人でも十分に楽しめたのではないでしょうか。
あと、アナウンサーや解説者に自分の名前を呼ばれるのはうれしいですね。僕も野球ファンだったので、まさか応援していた選手の方々が自分の名前を呼んでくださるなんて夢にも思っていませんでしたし(笑)。
数々のeスポーツタイトルがありますが、実況をプロのアナウンサーがしてくれるのは野球の強みですね。きっとほかにはないんじゃないかなあ。
——なるほど。そういう意味を含めてe日本シリーズに出場した感触はどうでしたか?
吉田:昨シーズンは日本一になることができましたが、eペナントレースを戦っている時は、最悪eクライマックスシリーズに出られれば勝てると思っていました。eクライマックスシリーズは短期決戦ですし、自分たちなら勝てると思っていました。
e日本シリーズは多少硬くなっていましたけど、実力を出すことができ、勝てました。
あと、e日本シリーズは熱量が違っていましたね。選手の声の出し方とか今まで以上に気合いが入っていて、それはヘッドセット越しからも聞こえるくらい気合い入っていました。
——確かに、最後の最後で決着がついたときは、敗れた千葉ロッテマリーンズの選手が泣き崩れるシーンもありましたもんね。そういったのもe日本シリーズならではですよね。
自分が世界一うまいと思いながらプレイすることが吉田流上達の秘訣!
——吉田選手は、『スプラトゥーン2』で「GG BOYZ」というチームで活動していますが、どういった経緯で、『パワプロ』でもプロリーグへの参加を考えたのでしょうか。
吉田:『パワプロ』でプロを目指したのは本当に偶然なんです。『スプラトゥーン2』で大会に出たり、配信をしたりしていたんですけど、ちょうどその時、別のゲームもやってみようかなって思い、探しているところに『パワプロ』のゲームソフトが目に入ったんです。
本当になんの気なしに、たまたま買ってみただけです(笑)。
『パワプロ』にマイライフと言うモードがありまして、そのモードを動画配信でプレイしてみたんです。そうしたらリスナーさんに「うまい!」と煽てられて、僕自身も「あれっ? うまいのでは?」と思ってしまったんです(笑)。
で、そこからオンライン対戦をやってみたら、思った以上に勝ててしまって——。そのタイミングで、「eBASEBALL プロリーグ」のプロプレイヤーを選抜するオンライン予選の話を聞きまして、そんなのがあるなら、ちょっとガチで練習しはじめてみようかと言った感じですね。
なので、『パワプロ』をずっとやっていたわけでもないですし、『スプラトゥーン2』以外にプロ選手として活躍できるタイトルを探した結果と言うわけでもないんです。
——ええっ。そうだったんですかー。『パワプロ』自体も初プレイで?
吉田:いえいえ、それこそ小学生時代とかに過去のシリーズを遊んでいた程度です。まあ、その時は地元最強だったのでうまいと思っていました(笑)。プロテストに関しては、実力試しみたいなところもありましたね。
あとは、当時から『パワプロ』上位プレイヤーだったさんらいくさん(三好航太郎氏)のアドバイスにも助けられました。本格的に練習し始めた頃に、ちょうど配信を観てくれていたさんらいくさんにいろいろコメントしてもらって、『パワプロ』の基礎中の基礎を教わったんです。その甲斐もあり、オンライン予選を通過できたと言う次第です。
――なるほど。何人か複数のタイトルのeスポーツ選手として活躍している人もいますが、まったく別ジャンルでしかも、どちらも優勝経験があるというのは類がないと思います。そのような快挙を成し遂げた秘訣はなんでしょうか。
吉田:僕は、元々ゲームはうまい方だと思っていました。でも、『スプラトゥーン2』で日本一になったのも、「eBASEBALL プロリーグ」で日本一になったのも、ひとえに仲間になった人に恵まれたと言えると思います。そういう意味では運の良さがあるかと。
また僕が代表プレイヤーとなったジャイアンツは、強振に適した選手が多く、強振を常とするチームメンバーの戦い方とマッチしたと言うのもあります。
『スプラトゥーン2』は、初代『スプラトゥーン』からプレイしており、実力が拮抗しているトップ選手を多く知っていました。その中からうまい人を選び、勝てるチームを作りました。個人的に『スプラトゥーン2』で勝てた秘訣としては、試合の3分であがらないように、メンタル重視に考えていたところですね。
『パワプロ』のプロプレイヤーになった時、全員で受ける研修会というものがあって、プロプレイヤーとしての活動の心得やたたずまいについて聞く機会を用意して頂けました。その中で、プロ野球OBの話を聞く機会があり、本番どういう気持ちでいくのか、緊張せずに試合に挑めるのかと言う話を聞き、それは実践しています。また、その話は『スプラトゥーン2』のメンバーにも共有しております。
――『パワプロ』は、短期間の練習でプロテストに合格していますが、なにか特別な練習方法などがあったのでしょうか。
吉田:個人的な話ですが、ゲームをプレイしている時は、自分が世界一ゲームのうまいプレイヤーだと思ってプレイしています。それで練習すると初心者なのにうまい風にプレイしていくんです。最初はうまくいかないこともありますが、それがハマっていくと実力になっていく感じですね。
——なるほど。そういった意識も大事ですよね!
吉田:そうですね。なので、僕は初心者講座は絶対見ません。自分なりにプレイの仕方を研究していく感じです。日々の練習は、基本的に実践派ですね。マイライフで打撃練習をする場面もありましたが、圧倒的に実践の方が多くなっています。
——「eBASEBALL プロリーグ」のジャイアンツは比較的メンバーが固定されていますが、普段から交流や練習などはされているのでしょうか。
吉田:坂東選手は昨年から2年連続、高川選手、舘野選手は3年間一緒なので、他のチームより固定していますね。一緒にいる時間が長いので、ピッチングにせよ、バッティングにせよ、お互いの苦手な部分も知っていて、それぞれに補いあえているのが強みだと思っています。
なので、みんなで集まって練習するときは、苦手な部分を指摘しあって、改善しています。その点に関しては、他のチームよりアドバンテージがあるのではないでしょうか。僕は基本的にジャイアンツのチームメンバーとしか練習しないんで、なおさらそんな感じですね。
——えっ、そうなんですか? ほかのチームと練習しないという点に不安は感じないのでしょうか?
吉田:シーズン中であれば、ほかのチームとの試合を見返すことで配球など研究できますし、なんだかんだチームメンバーがほかのチーム選手と対戦しているので、不安を感じることはありませんね。坂東選手がオンライン対戦をよくして、対戦した時の情報をよく覚えていますので、そこを共有してもらっています。
あとは去年の動画を見てクセを見つけることはしています。やっぱり、クセってなかなか抜けないもので、そういうところを研究して試合に挑んでいます。
——なるほど。逆に自分が対策されているなあと感じたこともありますか?
吉田:ありますねえ。僕は内角高めがすごい得意で、結構打てる方なんですけど、今年は露骨に攻めてこなくなったなあとか(笑)。
——あはは。まあ、そこは対策合戦になりますよね(笑)。ちなみに、一日のゲームプレイの時間と、『パワプロ』、『スプラトゥーン2』の時間の割り振りを教えてください。また、それぞれのシーズン中における比率もお教えください。
吉田:私が行っている動画配信は夜行っています。だいたい19~25時まで。その後の25時から5時まで『パワプロ』の練習をする感じです。
ゲーム配信は、『スプラトゥーン2』や『パワプロ』シリーズだけでなく、『Apex Legends』や『エスケープ フロム タルコフ』などもプレイします。結構コアなゲームの配信もしていますね。『Apex Legends』は楽しんでプレイしています。たまにプロ選手とプレイすることもあるんですけど、まったく歯が立たず足下にも及ばないですね。
——今後、『パワプロ』、『スプラトゥーン2』以外に、プロ選手として目指してみたいeスポーツタイトルはありますでしょうか。今のお話だと『Apex Legends』は難しそうですが(笑)。
吉田:『パワプロ』も『スプラトゥーン2』も、もともとゲームが楽しくてハマったので、プロを目指してプレイし始めているわけではありません。なので、今後もプロになるためにゲームを選んだり、特訓することはないと思います。
ただ、『パワプロ』や『スプラトゥーン2』と同様にハマって、うまくなったタイトルがあれば考えます。ゲームは楽しむのは一番。プロになるためだけの努力はしたくないですね。
球団の一選手という意識を持ち、
読売ジャイアンツ代表の名に恥じないプロプレイヤーを心がける
——ジャイアンツのメンバーとして、日々気をつけている点や率先して行うようになったことはありますでしょうか。
吉田:ジャイアンツの代表選手なので、下手なことをすると球団に迷惑がかかると思っています。試合会場には『パワプロ』は知らないけど、ジャイアンツが好きと言うファンも来ます。そういった方々に対しても振る舞いや発言に気をつけています。
昨年は、KONAMIさんが用意してくれた、「eBASEBALL プロリーグ」の選手個々のプロフィールカードが配られたんですね。来場してくれたお客さんに配布しました。サインを求める方には、カードにサインをしています。
ただ、あまりファンと接しすぎても、良くないと思っているんです。会場に来ることができた人だけ、手厚くなってしまうと、配信を観ている人と差ができてしまいますし。会場の人も配信を見ている人も平等に接するように心がけていますね。
——すでに佳境を迎えつつある「eBASEBALL プロリーグ」ですが、今シーズンはいかがですか。
吉田:去年、e日本シリーズで日本一がとれたので、2連覇したいですね。今は、勝ちたい一心で練習しています。勝てるように相手の対策とか苦手な部分の練習漬けです。プロ野球では日本シリーズで悔しい結果となったので、「eBASEBALL プロリーグ」では、我々が福岡ソフトバンクホークスをe日本シリーズで倒したい。
——『スプラトゥーン2』の方はいかがでしょうか。
吉田:『スプラトゥーン2』は大会自体の開催予定がなく、『スプラトゥーン3』のリリース待ちかなと思っています。なので、今は楽しんでプレイしています。切羽詰まってやると、楽しめなくなるので、うまくならないし、プレイ人口も減ってしまうと思いますので。
——なるほど。最後にeスポーツプレイヤーを目指す人、ゲームをプレイする人にひと言お願いします。
吉田:とにかく楽しんでやることですね。ゲームを楽しんでやる。ゲームをプレイしていて、負けてイライラする人が多いんですよね。
対戦相手のせいとか、回線のせいとか。そういうのって言いたくはなると思うんですけど、うまくなるのに不要なものだと思っています。ゲームは楽しんで欲しい。プロになるためではなく、楽しめた結果としてプロになれればいいんじゃないでしょうか。
——ありがとうございました!
———
複数タイトルでeスポーツプレイヤーとして活躍している人はそれなりにいます。ただ、そのほとんどが同系のジャンルのタイトル違い。例えばFPS系でさまざまなタイトルをプレイしていたり、対戦格闘ゲーム系でさまざまなタイトルをプレイしていたり——。
『スプラトゥーン2』と『パワプロ』とまったく異なるジャンルのゲームでeスポーツ選手になり、その両方で日本一となったのは、他に類を見ないのではないでしょうか。
ただ、吉田選手にしてみれば、そんなことも些細なこと。どちらもゲームであり、遊んで楽しいものととらえています。結果としてプロで活躍できるレベルのプレイができ、大会へ参加しています。まさに「好きこそものの上手なれ」を実践しているわけです。まあ、私を含め、ほとんどの人が「下手の横好き」で終わってしまうのですが。小中学生の将来になりたいものの中にeスポーツ選手が入ってくる昨今において、吉田選手はゲームが好きでプレイしているかどうかをもう一度見直す見本となってくれそうに思えました。
吉田選手のTwitter:
https://twitter.com/taijich0324?lang=ja
吉田選手のYouTubeチャンネル:
https://www.youtube.com/c/Yaritaiji/featured
「eBASEBALL プロリーグ」公式サイト:
https://e-baseball.konami.net/pawa_proleague/
©NPB © Konami Digital Entertainment
【岡安学 プロフィール】
ゲーム情報誌編集部を経てフリーライターに。ゲーム誌のほか攻略本など関わった書籍は50冊以上。現在はeスポーツ関連とデジタルガジェットを中心にWebや雑誌などで活躍中。近著「INGRESSを一生遊ぶ!」(宝島社)
Twitter:@digiyas
ゲーム情報誌編集部を経てフリーライターに。ゲーム誌のほか攻略本など関わった書籍は50冊以上。現在はeスポーツ関連とデジタルガジェットを中心にWebや雑誌などで活躍中。近著「INGRESSを一生遊ぶ!」(宝島社)
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