JRA-VANコラム
初めて重賞が行なわれる中京芝2200mを分析!
変則日程の今年、菊花賞のトライアル競走としておなじみの神戸新聞杯は例年の阪神芝2400mではなく、中京芝2200mが舞台となる。神戸新聞杯がこの条件で開催されるのが初めてなら、このコースで重賞が行なわれるのも初めて。そこで今回は、中京芝2200mのデータ傾向について分析してみたい。集計期間は2016年1月17日~2020年9月13日。データ分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
表1は、中京芝2200mにおける牡牝別成績(セン馬は牡馬に含む)と、厩舎の東西別成績を示したもの。先に牡牝別成績から確認すると、牝馬の苦戦傾向がデータから読み取れる。スタミナを求められる距離で、最後の直線には急坂もあるため、牝馬にとっては厳しいコースなのかもしれない。牝馬が滅多に出走しない神戸新聞杯はともかく、その他のレースでは頭に入れておきたい。また、関東馬と関西馬の比較では、後者の好走率が明らかに上。中京は関西圏に含まれる競馬場であり、これは納得の傾向と言える。
表2は人気別成績。1番人気の好走率は水準をやや下回っており、3着が非常に少ないことも特徴のひとつとなっている。対して2番人気は好調で、1番人気をも上回る複勝率を記録している。続く3番人気の数字には物足りない印象を受けるものの、4~7番人気や9番人気の単勝回収率、8番人気の複勝回収率はなかなか優秀で、いわゆる中穴級の台頭に気をつけたい。
表3は枠番別成績。こうして見ると外枠の好走率が高いことがわかる。勝率ベースでいえば、6~8枠がいずれも9%以上の数値を残しているのに対し、1~5枠は最高でも2枠の6.8%。連対率、複勝率についても概ね同様の傾向が見られる。また、延べ99頭が走って勝ちきった馬が1頭しかいない1枠の扱いにも気をつけたいところだ。
※表4は脚質別成績。一般にこうしたデータでは、より前に行く脚質ほど好成績を収めやすい傾向がある。そのことを頭に入れたうえで表4を見ると、「先行」と「中団」の好走率がほとんど変わらないのが中京芝2200mの大きな特徴と言える。より細かく言えば、勝率に関しては「中団」のほうが高いぐらいで、単勝回収率109%を記録するなど、中団からレースを進める差し馬の健闘が光っている。
表5は前走コース別成績。前走1~3着に入った馬と前走4着以下だった馬に分け、着別度数順でそれぞれ上位5コースを掲載した。前走1~3着と前走4着以下の両方に顔を出しているのが中京芝2000mと京都芝2000mで、前走経験が活きやすい、中京芝2200mと好相性のコースと考えてもいいだろう。前走4着以下の好走率が高い要注意のコースとして挙げたいのが京都芝2200mで、前走で馬券圏外に敗れていた馬の巻き返しに注意したい。つい先日、9月13日のムーンライトHでもアドマイヤビルゴ(前走京都芝2200mで4着)がこのパターンで勝っている。同じ2200mでも京都と中京では左右の回り、直線の急坂の有無などレイアウトの特性が大きく異なることが、この巻き返しを生んでいるのかもしれない。
表6は騎手別成績で、着別度数順の上位10騎手を掲載した。トップの福永祐一騎手は好走率が非常に高く、神戸新聞杯で復帰予定の二冠馬コントレイルにとっては頼もしいデータと言える。これに続く2位の藤岡康太騎手、3位の鮫島克駿騎手はどちらも100%オーバーの単勝回収率を記録。4位のC・ルメール騎手が記録した複勝率80.0%はさすがのひと言である。関東所属では唯一、丸田恭介騎手が5位に入っている。複勝回収率190%が示す通り、主に裏開催での激走に要注意だ。
表7は種牡馬別成績で、着別度数順の上位10頭を掲載した。サンデーサイレンス直仔の有力どころであるディープインパクト、ハーツクライ、ステイゴールドが1~3位を占め、いずれも複勝率30%以上と安定して走っている。この3頭をも上回る好走率と回収率を記録しているのがディープブリランテ。このコースに出走した7頭中5頭が3着以内に入り、3頭が勝ち鞍を挙げるなど中身もしっかり整っている。爆発力ではハービンジャーも負けておらず、全5勝が5~8枠に集中しているのが大きな特徴だ。
ライタープロフィール
出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。
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