JRA-VANコラム
3歳未勝利戦でデビューする馬の狙いどころは?
今年は新馬戦の終了時期が昨年までと比べて4週早まったことにより、先週日曜の阪神4レースが現3歳世代にとって最後の新馬戦となった。今週からは、初出走馬もすべて既走馬相手のデビュー戦になる。レース経験がない分不利な戦いが予想されるが、そんな中でも初出走馬を狙える条件はあるのか。2016~20年に行われた3歳未勝利戦を対象に傾向を探ってみたい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
まず表1は、対象期間中(2016~20年)に行われた3歳未勝利戦でデビューした馬の成績を年別に調べたものである(デビュー戦前に取消や除外のある馬も含む)。3歳未勝利戦は既走馬だけで争われたレースも含め毎年800レース以上が行われ、初出走馬は20頭前後が勝利を挙げている。今年は新馬戦の終了時期が早まったため、勝ち上がる馬ももう少し増えてくるだろう。ただ、好走確率や回収率は全体的に低調。やはり、既走馬相手の初出走では苦しい戦いを強いられる馬が多いようだ。
月別の成績を調べると、1~3月、つまり昨年までなら新馬戦がまだ行われている時期に、あえて未勝利戦でデビューした馬の好走確率が比較的高かった。また、4月以降は6月まで、勝率・連対率は徐々に低下している。今年も、今週以降ひと月ほどの結果を見てから「初出走馬でも意外と勝負になる」と思って手を出すようでは、痛い目に遭うことも多いはず。未勝利戦で初出走馬を買うなら、早い時期のほうが当たる確率はやや高い。
人気別では、1、2番人気が高勝率を記録しており、単勝回収率は2、3番人気が90%台。上位人気馬をアタマで狙うなら2番人気が良さそうだ。ただ勝率こそ低くなるものの、単勝回収率は5、6、8、10番人気も高い値が出ている。
単勝オッズ別に見ると、該当馬が少ない1倍台を除けば4倍台や7~14倍台、そして20~40倍台の単勝回収率が高い。的中数を確保しつつ高回収率を求めるなら4倍台の馬(表3では主に2番人気)、一発大穴狙いなら20~40倍台(同8、10番人気)あたりから1着候補を探すといいだろう。
距離別の成績は、芝では距離が延びれば延びるほど勝率や連対率は高くなる一方、単複の回収率は低い。ダート戦は芝ほどきれいに好走確率が上がっていくわけではないが、やはり長めの距離(1800m以上)での好走確率が高く、こちらは単勝回収率も100%を大きく超えてきている。配当妙味、好走確率、好走馬数を総合して考えると、距離別ではダート1800m戦が初出走馬の狙いどころと言えそうだ。
馬体重別の成績をみると、ダート戦では440キロを切る小型馬は苦戦傾向にある。しかし芝では400キロを切らないかぎり、特に体重を気にする必要はなさそうだ。馬体重別の成績は一般的に小型馬不振というデータになることが多いものだが、この「3歳未勝利戦・初出走馬・芝」という条件下では、その傾向は当てはまらない。
最後に調教師成績も見ておきたい。表には期間中に3勝以上を挙げた10名を掲載したが、12勝を挙げた美浦の堀宣行調教師が断トツ。好走確率も非常に高いため、該当馬がいれば軽視は禁物だ。栗東ではトップの5勝を挙げる中内田充正調教師や、好走確率・回収率ともに高い高野友和調教師が送り出す馬がいれば注目したい。
以上、3歳未勝利戦における初出走馬について、いくつかデータを探ってみた。初出走馬は既走馬に比べ判断材料が限られるが、その少ない材料を補足する形で今回のデータを活用いただければ幸いだ。基本的に既走馬相手では不利な戦いになりやすいものの、中には「買い」と言える馬もきっと見つかるに違いない。
ライタープロフィール
浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。
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