JRA-VANコラム
実力拮抗の混戦模様と評される今年のオークスで有望な馬は?
5週連続東京G1の3週目は、牝馬クラシックのオークス。桜花賞組では二冠を目指すスターズオンアース、ハナ差2着から逆転を目指すウォーターナビレラのほか、2歳女王サークルオブライフやチューリップ賞勝ち馬ナミュールなども逆襲を狙う。もちろん、忘れな草賞を快勝したアートハウスなどの別路線組も虎視眈々と食い込みを狙う。果たしてどの馬が有力なのか、過去10年の結果をもとにデータ傾向を調査していこう。データの分析には、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
表1は人気別成績。1番人気は5勝、複勝率80.0%の好成績。2番人気も複勝率70.0%としっかり走り、3番人気も昨年のユーバーレーベンなど3勝を挙げている。ダークホースは13年に9番人気のメイショウマンボが勝ち、2、3着にもぽつぽつ来てはいるが、全体としては上位人気が強いG1とみていいのではないか。
表2は馬体重別成績。当日「460~479キロ」が6勝を挙げ、好走率、回収率ともに群を抜いており、やや大きめの中型馬が好走しやすい傾向が見て取れる。ほかに1着馬が出ているのは「420~439キロ」と「440~459キロ」で、それぞれ2勝をマーク。一方、牝馬としては恵まれた「480~499キロ」や大型の「500キロ以上」はあまり振るわず、やや意外な印象もある。
※好走例のある前走のみ。格付けは現在のものに統一
表3は前走レース別成績。出走例、好走例ともに多い桜花賞とフローラSが重要な前走であるのは明らかで、この両レースについては表4と5の項で改めてデータを見ていきたい。
ほかに複数の好走馬を出しているのは、桜花賞と同日に行なわれる忘れな草賞。15年のミッキークイーン、19年のラヴズオンリーユーと2頭のオークス馬を出しており、好走率では桜花賞をも凌ぐ。一方、スイートピーSはそれなりに出走例があるものの、オークス好走は19年2着のカレンブーケドールだけ。なお、前述のミッキークイーン、ラヴズオンリーユーと合わせ、前走桜花賞およびフローラS以外でオークス連対を果たした3頭はいずれもディープインパクト産駒という共通点がある。
表4は前走桜花賞出走馬に関するデータをまとめたもの。まずは「人気」から見ていきたい。桜花賞で1、2番人気だった馬は、いずれも複勝率60.0%を超える好成績。特に2番人気が4勝を挙げている点は注目に値する。一方、6番人気以下は合わせて【0.0.1.41】と苦戦しており、桜花賞で5番人気以内には入っておきたいところだ。
続いて「着順」。桜花賞の1、2着馬はどちらも複勝率50.0%以上、3着馬も複勝率40.0%と有望。しかし、4着以下馬は好走率を落とし、合算して【1.2.1.50】と巻き返しは容易ではない。その数少ない桜花賞4着以下からオークス好走を果たした馬を具体的に挙げると、13年1着のメイショウマンボ、15年2着のルージュバック、17年3着のアドマイヤミヤビ、21年2着のアカイトリノムスメの4頭で、いずれも「桜花賞の前走で重賞1着」という共通項がある。
もうひとつ、桜花賞の「4角通過順」もチェックしておきたい。複勝率20%以上かつ勝ち馬が出ているのは4角5~6番手、7~9番手、10~12番手、16番手以降となっている。ただし、16番手以降に関しては、好走した3頭というのが14年2着のハープスター、17年3着のアドマイヤミヤビ、18年1着のアーモンドアイで、オークスで1、2番人気に推された実力馬ばかりだったことは留意しておきたい。逆に、4角1、2番手だった馬の好走例はなく、3~4番手だった馬が勝った例もない。この通り、桜花賞で差し・追い込みの競馬をしていたほうがオークスでは好走しやすく、逃げ・先行していた馬は苦戦の傾向が見て取れる。
表5は前走フローラS出走馬に関するデータをまとめたもので、注目のファクターは「着順」と「上がり3F順」のふたつだ。まず「着順」については、フローラS1、2着馬と3着以下馬に分けたとき、前者は複勝率31.6%、後者は複勝率7.7%と大きな差がついている。18年以降、フローラSでは1、2着馬にオークスの優先出走権が付与されていることを考えても、妥当な傾向と言えそうだ。
「上がり3F順」はさらに直結度が高いぐらいで、フローラSの上がり1位馬はオークスで複勝率50.0%、上がり2位馬も複勝率40.0%を記録。しかし、上がり3位以下馬は複勝率6.3%まで下がってしまう。
なお、フローラS3着以下からオークス好走を果たした16年のビッシュ(フローラS5着→オークス3着)と21年のユーバーレーベン(フローラS3着→オークス1着)は、いずれもフローラSで上がり1位を記録。つまり、フローラS3着以下からの巻き返しがあるとすれば上がり1位馬ということになりそうだ。
※3歳3月以前に行なわれ、1着馬がオークスに3頭以上出走したレースが対象
表6は、3歳3月までに行なわれる芝1600m以上の重賞・リステッド競走で好走した馬がオークスに出走した場合、どのような成績を残しているのかを表したもの。それぞれ1着馬と2、3着に分けた成績を掲載しているが、2、3着馬は全体に苦戦しており、基本的には1着馬について見ていきたい。
オークスと相性がよさそうなのは、勝率66.7%のシンザン記念、勝率22.2%、複勝率44.4%のチューリップ賞、勝率20.0%、複勝率40.0%の阪神JF、複勝率57.1%のクイーンCの各1着馬。該当する馬の出走があれば注目する価値はあるだろう。エルフィンSはまずまずといったところ。一方、アルテミスS、フェアリーS、アネモネS、フラワーCの4レースは、1着馬でも苦戦傾向が見られる。2歳戦のアルテミスSを除く3レースには中山開催という共通項があり、東京のオークスとは求められる適性の違いがあるのかもしれない。
【結論】
以上の分析を踏まえて、今年のオークスで有望なデータに該当する馬を紹介していきたい。
もちろん、まずは桜花賞組から。表4の項で述べた通り、桜花賞で1~5番人気および1~3着に合致すると好走率が高い。今年の登録馬で両方を満たすのは、3番人気で2着だったウォーターナビレラのみ。しかし、表4でチェックしたもうひとつのデータである4角通過順を見ると、同馬は4角を2番手で回っている。すでに延べたように桜花賞で4角1、2番手だった馬のオークス好走は過去10年なく、上位進出のためには展開の助けが必要になってくるかもしれない。その点、スターズオンアースは4角9番手から差し切り勝ち。こちらも桜花賞6番人気以下は苦戦というデータを覆す必要はあるが、脚質的にはオークスに対応しやすいタイプではある。
桜花賞4着以下からの巻き返し条件は、その前走で重賞を勝っていること。特に、オークスと相性のいいチューリップ賞で1着のナミュール、クイーンCで1着のプレサージュリフトの2頭は見逃せないところで、桜花賞で4角12番手のナミュールをより重視したい。なお、この条件に当てはまる馬にはライラックもいるのだが、オークスと直結しないフェアリーSで1着という点が気にかかるところである。そのほか、桜花賞の前走が重賞勝ちという条件からは外れるのだが、オークスで好走率の高い阪神JF1着馬かつ桜花賞2番人気馬のサークルオブライフもマークはしておきたい。
前走フローラS組は、そこで1、2着に入っていることと、上がり1、2位を記録していることが重要だった。しかし、今年1着のエリカヴィータは上がり3位タイ、2着のパーソナルハイは上がり13位にとどまる。そこで、フローラS3着以下から巻き返した例がある上がり1位馬に目をつけると、5着のルージュエヴァイユの名前を挙げておきたい。
オークスで好走率の高い前走忘れな草賞組ではアートハウス。忘れな草賞で1番人気に推され、上がり1位を記録し、3馬身差で1着というのは19年のオークス馬ラヴズオンリーユーと同じで、これは注目の1頭になりそうだ。
これら3つ以外の前走を使うとなかなか好走できないのがオークスというレースだが、触れておくとすればスタニングローズか。フラワーC1着馬のオークス成績はひと息ながら、祖母ローズバドがオークス2着馬、3代母ロゼカラーがオークス4着馬。オークスに限らず、有名な「薔薇一族」に初のクラシック制覇をもたらしたいところだろう。
ライタープロフィール
出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。
掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
関連記事
注意事項
結果・成績・オッズなどのデータは、必ず主催者発行のものと照合し確認してください。
本サイトのページ上に掲載されている情報の内容に関しては万全を期しておりますが、その内容の正確性および安全性を保証するものではありません。
当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても、株式会社NTTドコモおよび情報提供者は一切の責任を負いかねます。