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【日本最小ラガーマンが語る豆の眼力】日本代表の戦略は不評!?気になる本当のところはどうなのか語る。

2017年6月20日 17:09配信

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首藤甲子郎氏

1.見どころだったキック戦の評価

Ellisの見どころ記事が伝えた通り、アイルランド戦のキーポイントの1つはキックの争奪戦だった。では、その評価はどうだっただろうか。22-50というスコアも手伝ってか、巷では戦略のミスなどという声が多い。エディー・ジョーンズ前監督とは打って変わって、キックでボールを相手に渡してポゼッション(保持率)を下げることが体格で劣り、ディフェンスではどうしても不利になる日本代表には向いていないのではないか、という声が多いようだ。エディー・ジョーンズ前監督も同内容について同じように答えたこともあった。そういったことも相まってか現代表の戦略には批判が集まっている。

2.元7人制日本代表から見た戦略の評価とは!?

では、その実はどうだろうか。私には苦戦の元凶がキック戦略には見えなかった。日本のキーマンであるSH田中選手(背番号9番)とSO田村選手(背番号10番)は正確無比なキックを多用し、世界ランク4位のアイルランド代表のペースを乱すところまできていたのでないだろうか。実際、前半27分、ハーフラインあたりからの田中のハイパンからの松島が競り勝ってキャッチしたシーン。この後のプレー継続がうまくできずチャンスは取りきれなかったが、相手のディフェンス組織をうまく崩して狙った通りのアンストラクチャー状態を作れていた。他にも、後半8分30秒の左サイドからの田村のハイパンに福岡があわせてナイスタックルを見舞ったシーンなどは大きなチャンスを日本代表にもたらしていた。では、なぜそれがスコアに結びつかなかったのか。

3.ナイスキックがスコアに結びつかなかった2つの原因

その原因は2つだ。1つ目は、日本代表のディシプリン(規律)だ。チャンスになる種が見えたところで基礎スキルや判断ミスにより、反則を繰り返してしまった。相手にキックでプレッシャーを与えた後、落ち着いてディシプリンを守ることができていれば、前半の展開は大きく変わったものになったはずだ。

 2つ目は、アイルランド代表の完成度だろう。強敵、アイルランド代表は試合を通じて落ち着いたゲーム運びで主導権を握りゲームをコントロールし続けた。ピンチには落ち着いて粘り強いディフェンスでその芽を摘み、訪れたチャンスはシンプルで強いアタックで日本から得点をもぎ取っていった。

本当の敗因はポゼッションを相手に渡してしまうキック戦略だったのだろうか。むしろ私には逆に見えた。日本代表は前半にトライこそならなかったが、アイルランドディフェンスの裏を取る田中選手と田村選手の正確なキックで徐々にアイルランドの足を止め、少しずつアイルランドディフェンスの意識を外に向けることに成功していたのだ。

4.キック戦術がもたらした次戦に繋がる2つのトライ

先述の田中選手と田村選手が前半に幾度となく繰り出したこのキックはじわりじわりとアイルランド代表の体力を奪い、相手バックスプレーヤーには戦略的キックに対するプレッシャーを与え、その意識を植えつけていたのだ。もちろん、フォワードの頑張りなどその他の要因は多くあるが、小さな積み重ねが後半のトライに繋がったのではないかと考える。

 本稿はあくまでキックに主眼を置き、トライシーンの詳細解説は次の記事で特に印象的だった後半20分のFB野口選手、後半37分のWTB福岡選手のトライを取り上げて解説いきたいと思う。

5.今週も行われるリベンジマッチでのキック戦略

 次戦、今週24日にはまたアイルランドとの2戦目が待っている。見どころはまた23日ごろにEllisでもアップするが、このキック戦略は大きな注目を集めるだろう。確実にプレッシャーと相手への疲労を与えて日本の得点を引き出したキックは、ジェイミー・ジョセフ監督、トニー・ブラウンコーチの元でこの1週間の間でも更に磨きがかけられ、次戦では大輪を咲かせるのではないか。元バックスリー(背番号11、14、15番)の私はそんな風に想いを馳せている。

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