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【ミヤッキー’s eye】日本を「居心地のいい場所」にさせるな!世界第3位を倒すための24日アイルランド代表戦第2戦見どころ

2017年6月22日 16:36配信

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三宅敬氏

 22-50。6月17日に行われたアイルランド代表との第1戦。日本代表は静岡県エコパスタジアムに集まった27,000人を超えるファンに勝利を届けることができなかった。今週24日(土)に同じ相手との第2戦が東京・味の素スタジアムで行われる。今回は第2戦の見所を解説していく。

1.三宅敬氏の経歴について

 三宅敬氏は現役時代にはセンター/ウイング/フルバックとして活躍した元トップリーガー。5歳上の兄の影響で小学1年からラグビーを始め、高校は名門の京都・伏見工高で活躍。その後、関東学院大に進学し大学日本一を経験した。社会人としては2003年に三洋電機(現パナソニック・ワイルドナイツ)に加入し12年間プレー。2012年10月には、近鉄ライナーズ戦でトップリーグ100試合出場を達成し、2015年に現役を引退。現在はセコムラガッツのスペシャリティコーチとして活躍する傍ら、NPO法人「ワイルドナイツスポーツプロモーション」の代表理事に就任。地域と連携しながらラグビーの普及活動に力を入れている。

2.開いた点差。アイルランド代表との違いはなんだったのか

 大きく点差が開いた第1戦を踏まえてアイルランド代表との差は何だったのだろうか。私には「分析」と「姿勢」という2つのキーワードが気になった。

 まずは、アイルランド代表が日本代表をよく「分析」していたことに注目したい。日本代表は出足の鋭いディフェンスが特徴である。それに対して、アイルランド代表はセットプレーを基軸にアタックしてきていた。フィールドにディフェンスが少なくなるセットプレーからのアタックでは日本代表が出足鋭く飛び出してディフェンスがしづらいからだ。また、アイルランドのセットプレーは前記事で書いた通り、世界1位のニュージーランド代表や世界2位のイングランドから勝利をあげる原動力になるなど世界最高峰のレベルだ。日本代表はそこで常に圧力を受けた上でのディフェンスを強いられていた。そのためにセットプレーからのアタック、特にラインアウトからのサインプレーが非常に効果的に働いたのだ。アイルランド代表の特徴は強力なセットプレーを中心に無骨なまでにシンプルな攻撃を徹底してやり抜くスタイルだ。日本代表もそれは過去の対戦からも十分に理解して対策をしていたはずだ。しかし、それ以上にアイルランド代表は日本代表を分析し、このアタックなら優位に立てる、というものを用意して緻密な戦略を描いていたのだろう。そして成功率の高いアタックをやり続けた。日本代表は得意とは言えないディフェンスでそれ以上の価値を出せなかった。それが結果として表れたと言える。

 さらに「姿勢」の差もあったのではないだろうか。アイルランド代表はブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズに主力11名を送っていた。いわば今回のアイルランド代表は1.5軍だったのだ。そんな中でチャンスをもらった若手中心の選手達が80分間、アピールすべく最大限のチャレンジをやり続けていた。全員がミスなく、与えられた戦略における自らの役割を全うしたのだ。日本代表もホームで世界3位(17日対戦時は4位)に挑む気持ちに不備はなかったのだろうが、ハイボールやルーズボールへの処理を見るとアイルランド代表の気迫が上回ったのだろう。ここは第2戦へ向け大きな改善が期待される部分だ。

3.弱点のない世界第3位に対して日本はどう戦うのか!?

 第2戦、日本代表はどのように戦っていくべきなのだろうか。前述の通りアイルランド代表は強いセットプレーを基軸としたシンプルなアタックと、世界1、2位を粉砕した硬いディフェンスが強みだ。第1戦でも、日本代表のチャンスをことごとく粉砕したディフェンスには目を見張るものがあった。完成度の高いプレーと、知将ジョー・スミット監督の戦略によりミスも少ない。これといった弱点が存在しない世界3位のアイルランド代表に対して日本代表はディフェンス、アタック両面での戦い方を整理しなければならないだろう。

4.50失点してはどの相手でも勝てない。まずはディフェンスから

 どのような相手でも、ナショナルクラスで50失点してしまうとほとんど勝利のチャンスはない。まずは失点を減らすためのディフェンス面から解説していきたい。先ほども述べたように、アイルランド代表は強力なセットプレーを中心にシンプルに強い攻撃をしていくスタイルだ。逆に考えれば、日本代表がセットプレーからのアタックを遮断できれば、失点を減らせる可能性がある。セットプレー絡みでなければ相手の攻撃はシンプルだ。守ることが難しいわけではない。日本代表が得意とする外側のディフェンスが駆け上がり相手攻撃陣を内側へ追い込む型が機能する。こうして内側へ、内側へとアタックを封じ込めてディフェンスの網に囲み続けることで更に相手の攻撃が単調になり、結果的に相手のボールを奪うチャンスが増えてくるのだ。また、これは同時にアイルランド代表の決定力のあるバックスリー(WTB/FB)にボールを持たせることを防ぐ意味もある。ディフェンス陣は反則をしないよう、スペースを与えず外側からプレッシャーをかけ続けていきたい。

5.硬い規律を持つディフェンスを打ち破る日本のアタックは賛否両論のキックが有効か?

 日本代表が得点するイメージはどうだろうか。硬いディフェンス規律をもつアイルランド代表に対してはズバリ、「グラウンドを立体的に使う」攻撃が有効だと考えられる。日本代表が目指すランニング、パス以外に様々なキックを多用してスペースにボールを運びながら攻める戦術がそのまま当てはまる。第1戦でもキックを多用する攻撃の姿勢は見られた。先日第1戦の解説記事にもある通り、日本のキックアタックは一定の効果が見られてアイルランド代表を追い込んだ。(詳細解説はこちら)しかし同時に、いくつかの不用意なキックで相手にボールを渡して劣勢に追い込まれる場面も目立っていた。キックのメリットは簡単にボールを前に運べたり、「カオス」を作り出すことで得点チャンスを増やしたりできることなのだが、相手にボールを渡してしまうというリスクも必ず伴う。今回はそのリスクをカバーし、キックの精度はもちろん、キャッチのスキルアップを期待したい。そのためには、1つ1つのキックの意図をより明確に共有しなければならない。キッカーと(キックをする人)とチェイサー(キックされたボールを追う人)が連動性を持って、キックによって巻き起こしたい結果を鮮明にイメージしなければならない。これも、ジェイミー・ジョセフ監督の言う「同じ絵を見る」という部分に繋がるのだろう。

 また、キックを活かすためにもアタックのオプションを複数持っておくことは重要だろう。第1戦の後半に奪った3トライを振り返って見ると、いずれも果敢にボールをつなぎ、アイルランド代表のディフェンスを受け身にした賜物だった。これは前半にキックを使った攻撃を多用したからこそ、相手がそれに対応しなればならないという意識の裏をついたトライだったと考えられる。(詳細解説はこちら)逆に言えば、キックを活かすにもボールをつなぐアタックが有効だと言うことだ。このように、様々なアタックのオプションから駆け引きができるようになれば、硬いディフェンスを持つアイルランド代表から日本代表が得点するイメージもより濃くなるだろう。

6.課題の姿勢、プレーに大きな援軍。合流する頼もしい選手たち

 今週月曜日の練習から日本代表に加わった頼もしい選手たちがいる。まずは近鉄ライナーズのロック、トンプソン・ルークだ。彼は献身的なプレーだけでなく、精神的にも非常に頼りになる存在だ。チームの士気も上がることが期待できる。第1戦で遅れをとった、気持ちや姿勢の部分でも大きく改善できるはずだ。

 更に戦列を離れていた不動の12番立川キャプテン、昨季世界最高峰のスーパーラグビーで出場試合あたりのトライランキングでトップだった世界クラスのフィニッシャー山田章仁も戦列に復帰する。山田章仁はトライだけでなく、外側からプレッシャーをかけるディフェンスも得意とする。次戦ではこれらのキープレイヤーが揃い踏みし、リベンジに燃えるプレーを見せてくれるはずだ。

 2019年のW杯。今回は同じ予選プールで戦うアイルランド代表との前哨戦と位置付けられる。絶対にアイルランド代表にとって日本を「居心地のいい場所」にさせてはいけない。24日の一戦は見逃せない試合になりそうだ。

撮影協力:延原ユウキ

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