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インタビュー

パラ卓球・岩渕幸洋(後編):パラリンピックの素晴らしさとは

2021年8月20日 09:54配信
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近年、日本が飛躍的に力をつけ、世界一の座にも手が届きつつある卓球。

試合では、スピード、回転、コースの変化を組み合わせ、戦術を練り、その勝敗には、メンタル面も大きく影響する。選手たちは、わずか直径40mm、重さ2.7gのボールに人生をかけ、それぞれの物語を紡いでいる。

この連載コラムでは、さまざまな選手たちにインタビューし、そのプレーや人間性の魅力に迫る。

今回は、「金メダル以上」を目標に掲げ、2大会連続のパラリンピックに臨む岩渕幸洋選手。(インタビューは7月14日・8月9日実施)

(聞き手・文=山﨑雄樹)



<後編:パラリンピックの素晴らしさとは>

―「金メダル以上」を今回の東京パラリンピックでの目標に掲げ、「パラリンピックの素晴らしさを伝えたい」と常々、お話されていますが、岩渕選手が感じた魅力とはどういったものですか。

「中継の画面を観ると、どの選手も障害を感じさせないようなプレーをしています。それだけを観てもすごいことなのですが、その選手のオフの時間と言うか、会場に入って卓球台に着くまでの歩いている姿から観ていただきたいです。画面だけを観ると、本当にスーパーマンみたいな選手なのですが、そういった選手にも障害はあるわけですし、障害を乗り越えたというわけではなくて、障害とともに生きていています。いろんな人がいて、ひとりの人間として生きているということからプレーを観ると、より感動することができます。より、すごいなと思えるんです。僕が発信したいことは、画面だけではなくて、実際に会場に来ていただいて、入場のシーンで歩いているところから観ていただくと、より魅力が伝わるのではないかということです。ただ、こういう御時世なので、声を大にして言えないことがもどかしいです」


―もちろん有観客、無観客の問題がありますので、中継画面でも入場シーンからしっかり観ていただきたいですね。私はパラスポーツの試合の実況やイベントの司会をさせていただくことも多いのですが、「健常者ができることを障害者ができない」ということではなく、「健常者ができないことを障害者ができる」というように、パラアスリートを超人のように感じていて、プレーばかりに目を奪われてしまいます。

「例えば、画面で(障害のない)上半身しか映らなければ、健常者と変わりません。全身が映るなど、視点を変えることで見えてくることがありますし、パラの選手たちはパフォーマンスがすごいので試合の一瞬は超人的な選手ばかりですが、車いすに乗っている選手などいろいろな選手がいて、試合を離れたところでは助け合っています。段差を越えられなければ『押してあげるよ』とか、目が見えない選手は目が見える選手と一緒に選手村に入ってきて、食事のときも『こんな料理があるよ』と教えてあげて、助け合っています。そういった姿が本当に素敵だと思っていて、競技とは違う視点で観ていただけると、よりパラリンピックを楽しんでいただけるのではないかと思います」


―それは、本当に社会のあり方そのものにつながることですね。ところで、前回のリオ大会とは違って、実業団の名門チーム協和キリンの選手として臨みますが、違いはありますか。

「協和キリンには大学を卒業した2017年春に入社しました。勝ちを積み上げてきた選手たちのスタンダードに触れることができていることが一番大きな環境の変化です。自分がびっくりしたのは、選手全員が試合の流れをすべて記憶していることでした。『何対何で、こうしてこうだったよね』と、直前の試合だけでなく、過去の試合まで時をさかのぼって、話題に出てきて、そういう風な視点で観ているんだと感銘を受けました。ですので、自分もそう考えられるようにと、試合ひとつに対する考え方や向き合い方が変わりました。また、佐藤真二監督からは、今の卓球のスタイルをまっさらにして、新しいスタイルを作っていくときが来ると、言われました。入社して2年後にラバーを変えて、用具をガラッと変えました。以前は、表ソフトでもスポンジが薄くて粒が小さい、全然飛ばないものを使っていました。そのときは、その表ソフトで返して粘って粘って、というラバー頼みのプレーでした。でも、今は、スポンジが厚く、しっかり打って距離が出る種類の表ソフトに変えたことで、自分でしっかりラリーを作れたり、攻撃できたりするようになりました。大きな変化だと思います。それが一度、行き過ぎて、今年の2月ぐらいに両面裏ソフトにしようかというところまで行きましたが、今は落ち着きました(笑)」


―私は愛好家レベルのプレーヤーで、一緒にするのは失礼かもしれませんが、片面のペンホルダーの表ソフトですので、何本かかけて相手を崩し切って決定打というプレーが必要になります。「裏ソフトだったらガツッと回転をかけて手っ取り早く点が取れるのに」と思うこともあります…

「裏ソフトは便利ですよね(笑)。以前の自分のスタイルは異質をいかして勝ち上がって、勝ち上がった後は、オールフォアで動いていました。自分の障害とは矛盾していました(笑)。協和キリンに入ったことで、試行錯誤しながらスタイルも見直せましたし、アドバイスももらえます。そして、いろいろな方が僕のプレーを楽しみにして下さっていて、本当に恵まれた環境でやらせていただいています。また、社会人としての振る舞いなども教わることが多いので、競技以外の部分で気配りも大切にしないといけないということを感じました」


―それから、去年11月には「IWBUCHI OPEN」というパラ卓球観戦イベントを開催されましたね。

「パラスポーツを観て面白いというものにしていきたいと思っていて、(パラ卓球アンバサダーの吉村)真晴さんや(チームメイトの松平)賢二さんにも手伝ってもらって、どういう風にパラ卓球を観たらいいのか、一緒に発信できたらいいなという思いがありました。実際に試合をさせていただいて、会場にいらっしゃったお客さんから『すごく良かった』という声をいただくことができました。本来であればイベントが終わった後、すぐに会場で挨拶ができて、そこで感想をいただけたらいいなと思っていたのですが、コロナ禍でなかなかそういったことができないなか、メールで感想を下さって、やってよかったなと思いました。ただ、パラリンピックのためだけの『IWBUCHI OPEN』にはしたくなくて、毎年恒例のものにしていきたいので、今年も企画を考えているところです」


―オリンピックが閉幕し、いよいよパラリンピック開幕が近づいていますが、オリンピックを御覧になって、どのようなことを感じましたか。

「開会式から、練習時間以外は、オリンピック以外観ていないというぐらい観ていました。こういった状況でも大会ができることを感じました。試合の合間には感染対策を手伝って下さるボランティアの方の様子も映されて、いろいろな方の協力をいただいて、大会が成り立っていることをすごく感じましたし、選手たちも普段と変わらない、あるいはそれ以上のパフォーマンスができていることを感じました。自分がプレーする実感もわきましたし、良いイメージが作れると思います」


―卓球も水谷隼選手と伊藤美誠選手が混合ダブルスで金メダルに輝き、伊藤選手がシングルスで銅メダル、団体でも男女揃ってメダルを獲得するなど大活躍でしたね。

「最初に混合ダブルスの金メダルから始まって、本当にすごかったです。その一言に尽きます。そこに照準を合わせてくる準備の仕方がさすがだと思いました。ドイツペアとの準々決勝で逆転したことや、中国ペアとの決勝戦では最終ゲームで8対0とリードしたことなどは、神がかっていると思いました。同時に、何が起こるかわからないのもオリンピックで、誰にでもチャンスがあると、あらためて感じました。海外の選手では、シングルスで銅メダルを獲得したドイツのオフチャロフ選手の試合を参考にしたいです。一方的に攻められても、戦術を転換して粘って勝ったところや気合いの入り方を見習いたいです」


―最後に読者の皆さんに、一言、お願いします。

「パラスポーツを観て楽しんでいただきたいです。選手たちが頑張っている姿をより深い視点で観ていただけると、選手たちの素晴らしいところがより観えてくると思います。卓球に限らず、パラリンピックに注目していただきたいと思います。どんなきっかけでもいいので観ていただきたいです」


【プロフィール】

岩渕 幸洋(いわぶち こうよう)

1994年12月14日生まれ。東京都練馬区出身。中学1年生のときに部活動で卓球を始め、高校3年生からパラ卓球の国際大会に出場。出身校は早稲田実業学校、早稲田大学。パラリンピックには、2016年のリオデジャネイロ大会に初出場。2018年の世界選手権では3位に輝く。日本リーグの協和キリンでプレー。自身のYouTube公式チャンネルでも卓球やパラスポーツの魅力を伝えている。戦型は右シェークハンド裏ソフトと表ソフトの前陣速攻型。得意なプレーはサーブ。先天性の両下肢機能障害で「クラス9」、世界ランキングは4位。


【著者プロフィール】

山﨑 雄樹(やまさき ゆうき)

1975年生まれ、三重県鈴鹿市出身。小学生、中学生と懸命に卓球に打ち込んだが、最高成績は県4位、あと一歩で個人戦の全国大会出場はならず。立命館大学産業社会学部を卒業後、20年間の局アナ生活を経て、現在は、フリーアナウンサー(圭三プロダクション所属)として、Tリーグ(dTVチャンネル・ひかりTV・AmazonPrimeVideoなど)や日本リーグ(LaboLive)、全日本選手権(スポーツブル)など卓球の実況をつとめる。東京2020オリンピック・パラリンピックではNHKEテレのナレーションを担当。

また、愛好家として、40歳のときにプレーを再開し、全日本選手権(マスターズの部・ラージボールの部)に出場した。

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